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他人の心情が分からなくて狂いそうになった話



子供の頃同じ学年に一人障害を持って生まれた子が居た。足が悪いとかそういうのじゃなくて情緒不安定でとにかく周りに手を出してにやにやしている、そんな嫌われてるやつ。

そいつと何らかの形で接触すると「お前アイツに関わったの!? きもっ!」とか男女の隔てなく言われるような奴だ。

まあ、俺はソイツとあまり深い関係があるわけじゃ無かった。通学路でたまに姿を見る程度で会話した事も無かった。家はそう遠く無かったので地域の周回でも姿を見たことはあったが、その程度の人間だった。

好いていたわけじゃあない。本当にどうでもよかった。俺はそいつに迷惑をかけられたことも殆ど無かったし、こっちから近づくようなリスクを冒す理由も無かった。

けど、基本的に学年の奴らの中にはそいつに泣かされたりした奴もいて、皆そいつの事を嫌っているものとばかり思っていた。


そいつが死んだ。


何時の事かは忘れたが、実は心臓にも障害を持っていて、その発作で死んだらしい。

まあともかく、人間が死ぬと葬式が行われるわけで、クラスが同じだった人間は一応お呼ばれする訳で、俺は一応そこへ行った。

クラスの皆も来ていた。皆一様に涙ぐんでいた。

意味が分からなかった。お前らアイツの事嫌いだったんじゃあないのか? と。そんな奴が死んで喜ぶでもなく泣くのは何故だ? と。

本気で分からなかった。俺は葬式の帰りに友人にこれからウチでゲームしようぜと言ったが、流石に今日はいかんだろ、と言われた。

その時、俺は周りがおかしいのではなく、自分がずれてる事にようやく気付いて、折れた。

他人が死んで悲しまない俺はちょっとまずいんじゃあないかと。


まあ、それからしばらく悩んで、人間の行動指針は把握出来てもその心情については解釈する事しか出来ないという結論にたどり着いた。自分が悲しめない問題はまだ放り投げたままだ。

とりあえず身内が死ぬまでは保留だ。爺さん婆さんも歳食ってきたし、その内答えは出るだろう。


2022/11/17 やっぱつらかった。少し安心した。馬鹿め。

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