見出し画像

記憶スイッチ

平日の業務が落ち着いて、朝10時ごろまでダラダラした土曜日
冷凍庫のホットケーキを食べゲームをして、13時過ぎになった所でさあ昼ごはん食べに行くかと意気込む。
ランチタイムの時間に滑り込めるか支度を急ぎながら外の景色を見ると雨がサーッと降っている。

仕方なくGoogleマップを開き、徒歩圏内の飲食店を探すとびっくりドンキーの存在に気づいた。
机上にあらかじめ立てかけられた扉型のメニューに並ぶハンバーグ。これが記憶を呼び起こすスイッチになるとは思わなかった。

過去

狭いながらも人間関係は充実していた浪人時代に一度行ったきりだ。フォルダをひたすらスクロールし、初めて行った時に物珍しさから撮った写真を見返す。いつぶりか、5年も経つのか。

自由な学風で知られる大学の模試を受けに神戸へ高速バスで行った夜。同乗していた同級生と別れ、東横インへチェックイン後晩飯処で入ったのがびっくりドンキーだった。
(画像はそのすぐそばにあったうどん店。その当時の自分は、地元にないものを見ると写真を撮っていた。いろんな写真が残っているのは、フォルダを整理しないズボラさと、思い出を見返したい名残惜しさに拠る。)

夕食後ホテルで裸眼視力が0.05の私は焦った。
受験当日用のコンタクトを忘れたのだ!近くの眼科は閉まってるし、親に送ってもらっても明日の朝には間に合わない。

もう、視界がぼやける状態で机に突っ伏すようにして問題を解くしかない。
腹をくくり、眼鏡代わりにカメラ機能駆使して受験会場へ到着。
試験中に黒板に掲示された軽微な問題文修正も、試験官の話を聞き取り難なくクリア。問題文に目を凝らし解答用紙を提出し終え、「ふぅ」と一息つき受験会場である青カラーの大手予備校校舎を出た。
自分の実力は出せたと思う。

問題は帰路だった。新幹線と特急を乗り継ぎ、寮の最寄駅に着いたまでは良かったがチャリで帰らなければならない。

夜22時近くでもう既に街灯の明かりを頼りにするほかない。側を通り過ぎる車に最大限の注意を払いながら寮へたどり着いたものの、寮の玄関は閉ざされている。24時間滞在する管理人へ電話をかけても繋がらない。

このままだと視界が定まらないまま移動し満喫で過ごすか、最悪野宿だ。

中にいる友人にLINEをしたり、ドアを何回もノックしたりして待ったが誰も出てこない。
これらの作戦に諦めを覚え始めた所、ようやく管理人が出てきて無事自分の部屋へ転がり込んだ。寮へ着いてから30分が立っていた。共同風呂の湯船が身に沁みた。


現在

2度目のびっくりドンキーへ足を運ぶ今はどうか。

コンタクトの予備は部屋にあり、視界は定まっている。だが、締め切りの業務が終わる見通しは見えず、テレワークで休日に作業するサビ残コース。パソコン漬けの日々で、視力は悪くなっている。

仕事からの帰路はぼやける視界でふらふらになりながら自転車を漕いでいる。

自分では完璧だと思い用意した文面は、何かが抜けていて再提出に苦労する日々。

自分の本質というか性格は、あの頃から何も変わっていないのではないか。能力と釣り合わず評価されない分野へ行き無駄に苦労してるのではないか。
無能のレッテルは剥がせないのではないか。

いや。

いや、いや絶対そんなことはない。
この5年を経て得てきた教訓や身に付けたスキル、生き方がある。
能力が足りないからといって諦めるのは早い、向上させるor不足分をカバーできる時間を取るのも一つの手だ。(生きるのが目的なので本当に無駄な苦労はしなくていいと思う。)
たとえある環境で無能であっても他の場所では違うかもしれない。転勤も頻繁にあるし。

画像1

記憶のスイッチから浮かんでくる肉汁のようなもの。自己成長していないのではないかという諦念を振り払い、今日もハンバーグを食べた。


駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
お腹も精神衛生も満たされたので寝ます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?