本日休演,『MOOD』について

2/11

 MVの曲は大したことなかったんだよ。でもダメだ。『ロンリネス』と『アレルギー』を聴いて途方に暮れてしまった。音楽に打ちのめされる経験というのはそうあるものではない。この前、みんなが騒いでいた七色(?)の爪のジャケのアレとかは、本当につまらないものだったし、こんなものが日本のロックバンドの質を底上げするだとかそんなわけはないだろうと思っていたところだった。第一、クオリティという発想ほどくだらないものはない。本日休演のこれはそういうものではない。クオリティなんて、そんな生温いものに応答しているものではない。ここにあるのは強度と質感だ。ひたすら微細で、しかし整っていることとも無関係であり、ある種の粗さも内包しながらも、ある完全性をそのアルファとオメガのあいだで形作るもの。強度、質感。
 『ロンリネス』を二回聴いて、しばらくして今度MVを撮影する予定だった曲を聴いた。もう録音自体は終わっていて、あとはミックスの細かい部分を残すばかりというところまできていた。色々思うところはあったが、それでも良いものができていると思っていた。ここ最近はこの曲につきっきりになってひたすらミックスや細かい録音を重ねていた。でもこれではダメだというのがはっきりした。はっきりしてしまったからにはこのまま続けることはできない。
 ガイドのトラックを作り直して須永に送りつける。「死ぬ気で練習して」という言葉も添える。白岩さんにも連絡をして、MVの撮影の予定を一旦中止にしてもらった。マイキングのことや、ドラムのセッティングをまずは勉強し直さないといけない。それにギターの録音も考え直さないと。アルバムが完成するのがまた遠のいてしまった。一体いつ作り終えることができるのだろうか。結局今日は怖くて『MOOD』を通しで聞くことはできなかった。明日、バイトから帰ってきたら必ずちゃんと聴かないといけない。
 じっとりとした徒労感。茫然自失というには、やらないといけないことがあまりにはっきりしている。それを少しずつタスクわけしてこなしていくしかないのか。

2/12

バイト疲れた。炊飯器のセットをしていざ視聴。まだアルバム単位で聴くの怖い。

『ウソの旅』
これは坂本慎太郎感。でもなんか違うんだよな。フォーク成分が多い。良い曲。ファズギターもいい。名作の予感。

『アレルギー』
悶絶。ドラムの質感と、ギターの音ナニコレ。意味わからん。カッコ良すぎ。ボーカルも全然リバーブかけないでドロッとやっていて良い。ギターソロ1。ファズの何も弾かないでだすノイズから始まるのがかっこいい。シングルの時はラップとかもダサかったけど、こんくらいスカスカでやるとかっこいい。あと実はラップの時のバックのカッティングがかっこいい。スネアがなんか微妙に鉄の音するのなんなんだろう?と思ってたらギターソロ2!ギターもいいけどドラムもいい!最高!リバーブなしファズってかっけえな。
 コールドファンクとインダストリアル?でもなんかポストパンク感が意外となくて良いんだよな。ポストパンクをビンテージ機材でやった感じ?ビンテージ機材の音知らんけど。あーあかっけえ。

『何もない日』
このメロディでメロウにやられたら無理だけど、節制されたリバーブ。質感やべえ。

『Hey Baby Love』
ここら辺は、「はいはいまあ中村宗一郎だしね」という感じ。これは真顔で聴ける。いやむしろ嫌いかもしれない。なんのオリジナリティもない。なぜアルバムに入れたのか。でも他のアルバムはこの感じですよね。

『線路』
意外かもしれないけどぼくはこういうのは好き。昭和歌謡。この人の声はこういう曲合う。でも長いな。聴いてる途中で飽きる。

『全然、静かなまま』
全然好きじゃない。まあくるりの人とかが誉めてるバンドだしなそもそも。長えな。早く終われ。

『砂男のテーマ』
かっけえ。このつんのめったリズムはグループイネラネというバンドからきてるらしい。でもここにサーフっぽいアレンジがのるのやばい。全編通してそうだけどこの感じでコードのリバーブを抑えてるのが新しい気がする。でも意外と良くないかもな。リフが弱い。

『ロンリネス』
やっぱこれ!これ!やばい!ギターどうやって出してんだ。展開するときのアルペジオがフレーズ自体はジャジーなのにこの音だといやらしくない。あとコーラスも坂本慎太郎で良くあるやつなのに、この曲の感じだと新しい。そしてギターソロ!ギターソロ!そしてイカれたコーラス!エフェクトというよりもマイクの複数の質感だけで音を使い分けてるような感じ?わからんけど。最後のギタープレイ好きすぎる。なんかこの人のギター、バッキングがいいんだよな。カッティング然としてないというか。

『天使の沈黙』
ぼくは実はMGMT大好きマンなのでこれは好き。謎のバッキングも好き。でもなんでこれをMV曲にしたのだろうか。でも「そっち」のバンドなんだよなそもそも。

『夏の日』
チェンバロ?チェンバロだよね?悪くないけど好きではない。実はそれほどメロディセンスないのでは?ありそうだけどない。

 あれ?こんなもん?あれ?という気持ちはある。正直ね。なんだよぼくが昨日聴いた2曲が飛び抜けていかれてたんですね。他は全然好きでない。ぶっちゃけ、他の曲も全部『アレルギー』と『ロンリネス』レベルだったら録音した新曲全部ボツにしてたかもしれないからまあいいけど。でも2曲で十分日本の新しいサイケの可能性を切り開いている気がする。ほら、最近オーガとかもつまんないじゃん?キモはリバーブの節約と、ギターであれ、ドラムであれ、歪みや粗の再発明だろな。すごい刺激を受けた。とにかく『アレルギー』と『ロンリネス』に負けない強度のものを作るというのが次の作品の目標になるくらいには影響を受けたし、これからも受け続けるはず。
 ぼくらではとても真似できない部分もあるし、真似する必要もないだろうけど、参考になる部分はあるし、何よりも気合が入った。ロックバンドはまだやれる。聴けて良かった。ぜってえまけねえからな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?