見出し画像

ア式蹴球部×社会

寮の部屋に戻ったのは午後2時17分だった。早めに3限の授業が終わったのだ。ラッキーだ。走ったら、ギリ間に合うか。よし、行こう!asicsの服に早着替えをして、東伏見保育園に向かって走った。雲ひとつない空。風が冷たいが、どこか心地いい。良い天気だ。今日は、定期的に行なっている訪問サッカー教室の日だ。

今日は、いわゆる〇〇納めというやつだった。年内最後のサッカー教室だったからだ。社会貢献活動納めとでも言おうか。

サンタさんになりきった春日くん(春日崇暢・東北学院)は4年生、今日が最後の活動になる。

そのことを子どもたちは知っていたのだろうか。あげる側であるはずのサンタさんが子どもたちから手作りプレゼントをもらってしまったようだ。みんな、優しいな。サンタさん、喜んでたぞ!本当はサンタさんらしく、みんなにチョコレートを用意してたんだ。でも、先生にアレルギーの子がいるからって気持ちだけ受け取られちゃったんだ。許してあげてね。クリスマス当日、良い子にしてたら、春日サンタさんからプレゼントがあるかも??

毎回、子どもたちの笑顔に癒される。みんな、どうして、あんなに元気なんだ!転んでもすぐに立ち上がる。泣きながらでもボールを追いかける。すぐ喧嘩するくせに、点決めたらめっちゃハイタッチするじゃん。めっちゃ可愛いな、お前たち。来年も、また遊びに来てもいいかな?って今日の最後に聞いてみた。ダメーーー!って言われないの分かってたけどさ。いーーーよーーー!!!ってみんなに言ってもらえておじさんやっぱり最高に嬉しかったです。いつも、本当にありがとう。ありがとう。


さて、楽しい楽しい社会貢献活動納めを終え、春日サンタさんも一息つく中、僕はア式蹴球部の社会貢献活動担当の一員として、主に7つの活動をピックアップして、2018シーズンの活動を簡単に振り返ります。写真やその時々の感想を交えながら、なるべく退屈させないように。でも、また長くなっちゃうかも。いや、長くならないとおかしいか。やってきたもんな。去年より良くしよう!って。

伝えたいことをありのままに綴る、ただそれだけのこと。



まずは、毎度大好評のワセチャレワセトレ。これは、僕たちが普段トレーニングをしている東伏見のグラウンドに地域の子どもたちを招いて行なうサッカー教室のこと。ワセチャレは主に小さな子どもたちを対象に“サッカーを楽しむ”をテーマに。ワセトレは、大学生のお兄さんにも負けないぞ!っていう向上心溢れる子どもたちのトレーニングのこと。人数が少なくても、雨が降っても、暑い夏の日でも、元気に来てくれたみんな、本当にありがとう!無邪気にボールを追いかけるみんなを見ていると、サッカーを心から楽しめていない自分に気がつくことができたよ。サッカーは楽しまなくちゃね!どんな状況でも。たとえ、試合に出られない大阪の地でチーム付きになったとしても、その状況を楽しめないとね。間違っていた自分に気づかせてくれたみんな、本当にありがとう。来年も一緒にサッカーしような!


突然ではありますが、皆さんは、電動車椅子サッカーをご存知ですか?僕は、ア式蹴球部に入るまで耳にしたことのないスポーツでした。文字通り、電動車椅子でボールを巧みに操り、ゴールに迫ります。競技者の皆さんは、さまざまな理由から身体を自由に動かせなくなってしまいました。電動車椅子は彼らがサッカーをする唯一の手段であり、可能性であり、自由になれる瞬間でもあります。わずかに動く指先でコントローラーを操り、電動車椅子の方向を変えます。

このスポーツは、想像をはるかに超えて激しいです。車椅子同士が激しくドン!!と音を立ててぶつかり合います。見ていて、非常にスリリングで面白かったです。

僕たち学生は、第10回電動車椅子サッカー東京都大会の運営ボランティアとして、参加させていただきました。本部にてアナウンスと第4審判、試合の写真撮影、控え室から会場への誘導などのお手伝いをさせていただきました。また来年も参加させていただきたいと心から思っております。そして、この素晴らしいスポーツを知らない部員たちを新たに連れて、皆さんにお会いしにいけたらと思っております。今後ともよろしくお願い致します!!!


今年度より新たに活動の幅を広げ、知的障がい児童とのスポーツ交流を開始しました。初の試みということもあり、当初は不安も多かったですが、回数を重ねるごとに少しずつ意思の疎通が取れるようになりました。コミュニケーションを取ることってこんなに楽しかったっけ?伝わるって素敵なことだな!と感じました。こういった活動をすると、普段当たり前であることを考えることができます。大袈裟だと言われそうですが、「いま、生きてるな」と感じるのです。

子どもたちがボールを使ったり、身体を動かしながら楽しむことができたら、彼らにとって普段とは違った刺激というか体験というか、そういったものを僕たちが与えられるのかなと思い、学生一同話し合いを重ねて、真摯に障がいを持つ子どもたちと向き合って参りました。

先生方も子どもたちの新たな一面を目にし、驚かれていました。今年度、最もやり甲斐を感じた活動でもありました。来年度も、どうぞ、よろしくお願い致します。


そして、こちらも新たな取り組み。
ICC(異文化交流センター)交流サッカー教室!!
これは、早稲田大学ICCの全面協力のもと、留学生とア式蹴球部員合同でのミニゲーム大会のことです。この日は、多国籍な留学生26人とア式蹴球部員約35名が共にボールを追いかけました。

そこには留学生、部員といった垣根は存在せずボールを追うそれぞれが主役になり、非常に盛り上がる光景がありました。

今回のこの企画は、森岡くん(森岡和磨・岡山学芸館)によるものでした。企画に至るまでの背景として、”早稲田”ならではの特色があったと彼は次のように語っています。

「まず一つは、早稲田大学は日本の大学で留学生数ダントツ一番を誇るという事です。
5000名を超える留学生が早稲田には在籍をしており、それは2位以下の大学を1000名以上引き離しています。

そして、二つ目は早稲田大学ICCの存在。
ICCとは異文化交流センターの略称であり、早稲田に在籍している留学生が日本文化に触れる橋渡し役として、主体的に活動が行われています。
ICCの方々が私達の要望を快く聞き入れて下さり、留学生への呼びかけ、当日の運営を含めて全面的なサポートをして下さりました。

大学の体育会というのは一見すれば非常に閉鎖的とも言える環境ですが、そこに内在している価値をオープンな資源として活用する姿勢があれば、深みと幅を持った貴重な存在へとなり得る可能性を秘めているのです!!」

いつの日か、ア式に留学生プレーヤーが!!なんて日も近いのかもしれません。ア式が広がっていく感覚。自分たちの活動にワクワクしました。これからも継続していきます。



“所沢サッカー教室”は毎年12月に行われます。特に参加人数の多い所沢サッカー教室は活気に溢れ、大変盛り上がります!!今年は、スペシャルゲストとして、ア式蹴球部OBでJリーグで活躍される新井先輩(新井純平さん、左)と奥山先輩(奥山政幸さん、右)にも参加していただきました。

Jリーガーと一緒にサッカーできるのは、子どもたちにとっては夢のような体験になったことでしょう。子どもたちは、寒さを全く感じさせず、元気にボールを追いかけていました!!

景品を手にしただけでなく、大切な何かきっかけとなるものを見つけてくれたのなら、僕たちの活動は大きな意味を持ちます。そして、子どもたちの憧れとなれるように、早稲田に入りたいと思ってもらえるだけの取り組みを日々積み重ねていこうと思える貴重な時間でした。
ありがとうございました!!


ア式蹴球部は西東京市東伏見に拠点を置いて、活動させていただいております。地域住民の方々の多大なる御支援・御理解のもとで、早朝から大きな声が飛び交い、夕方から夜にかけてナイターを使用しながらのトレーニングが成り立っています。この場をお借りして、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございます。

僕たち2年生は月に2回、学年全員で地域清掃を行なっています。練習の70分前から50分前までの20分間、東伏見周辺の清掃活動を行なっています。清掃活動中にすれ違う方々にあいさつをして回り、日頃の感謝を込めてゴミを拾います。本当に温かい方が多く、清掃活動そっちのけで思わず話が弾んでしまうこともしばしばあります。そのたびに、応援していただいていることを実感し、より多くの地域住民の方々に応援される存在になれるように頑張ろうと思えます。非常に意味のある清掃活動であり、今後も続けていきますので、部員を見かけましたら、御気軽にお声かけいただけたらなと思います!!


ア式蹴球部の社会貢献活動において、早稲田カップin気仙沼は、実に沢山の方々の御協力のもとで成り立っており、最大規模かつ非常に重要な活動です。今年で7回目の被災地復興支援ボランティアは、ア式蹴球部OBである加藤久さんによって立ち上げられたプロジェクトです。

僕は、生まれて初めて気仙沼を訪れました。車中泊から目覚めると、窓の外に朝日とともに大谷海岸を捉えました。高く頑丈に設けられた防波堤、そして、閑散とした空き地が7年経った今、あの時の未曾有の出来事を思い出させました。

このグラウンドは、昨年まで仮設住宅が建っていたそうです。

僕自身、被災したこともなければ、グラウンドが使えなかったこともありません。正直、震災当時、小学生6年生だった私には3月11日が他人事で、すべてを理解することは難しかったです。しかし、現地で実際に目にした光景や【すがとよ酒店】の店主さんに震災当時から現在に至るまでの苦悩や葛藤を語っていただいて、実際に自分が震災について触れ、考えられたことは僕の人生において大きな意味を持ちます。

そして、これから先、何かが起きた時。他人事ではなくなった時。誰よりも率先して行動を起こしていける人間になりたいと心から思いました。

大会は、子どもたちの笑顔と活気で溢れ、非常に楽しい2日間でした。また、8名のア式蹴球部OBの方々にも御参加いただきました。現地の気仙沼有志成人チームvs早稲田大学ア式蹴球部OB・現役部員混合チームの試合は、現地の子どもたちの前で激闘を繰り広げました。

大会初日の夜に行われた懇親会では、沢山のOBの方々や気仙沼の皆さんから関東リーグ制覇のお祝いのお言葉をいただきました。本当に沢山の方々に応援していただいていることを実感し、感謝とともに来シーズンに向けて身が引き締まる思いになりました。

早稲田カップ2018に携わっていただいたasics ジャパン様、気仙沼市サッカー協会並びに気仙沼市体育協会、気仙沼市教育委員会、現地の皆様、OBの皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
また来年、お会いできることを心より楽しみにしています。


----------------------------------------------

活動を振り返る中で、印象的なのは、やはり、子どもたちの笑顔でした。

社会に貢献しよう!と口で言うのは簡単です。ふと、本当に社会に貢献できているのか。自己満足になっていないか。そもそも、なぜボランティアをするのか。不安やジレンマに襲われます。

しかし、活動するからこそ見えてくる課題、知らなかった世界、新たな人々に出会うことができます。活動ありきで何かを“知る”ことができるのです。

正解なんてないのかもしれない。でも、やるからには、活動の全てに正解(意味)を生み出したい。いや、生み出すべきだし、一線を越えていかないと何も得られないまま終わってしまうに違いない。

2019シーズンは、より活動の幅を広げて、知らなかった世界にどんどん入り込んでいこう。

サッカーを介して、より多くの人々に出会おう。

「ア式は、こんなこともやってるんだ!」って関心を持ってもらえたら嬉しい。

「オレたちもやってみようかな」って思ってもらえたら最高だ。もし、行動に移せたら、それはきっと、発信すべきだ。外池さんがコメントをつけてリツイートしてくれるはずだ。

なぜ、発信するのか。

社会を知るため?接合していくため?

理由は何でもいいし、何でもない。

僕たちだってイマイチわからないこともある。

でも、やってみて初めて反応がある。周りからの反応はもちろん、自分自身でも感じる反応がきっとある。気づいて、知って、突き動かされる。やってみなければ、何も始まらないのだ。

シーズンオフはチャンス。時間がある。余裕も。色々なことを考えられるし、行動を起こせる。

チャレンジしまくろう。知らなかったことを知ろう。見たことのないものを見に行こう。
そしたら、またnoteに綴ろう。

みんなに、社会に。
そして、自分自身に問い続けていこう。


早稲田大学ア式蹴球部 工藤泰平


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?