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IMR, FFR, CFR: 冠動脈血行動態の評価指標の関係性

冠動脈血行動態の評価において、3つの主要な指標が用いられます: 指数微小抵抗 (IMR)分画流儲蓄 (FFR)、および冠流儲蓄 (CFR)。これらの指標は、冠動脈疾患(CAD)の診断や治療において重要な役割を果たしています。本記事では、これら3つの指標の関係性について説明します。

IMR (指数微小抵抗)

IMRは、冠動脈の微小循環抵抗を測定する指標であり、微小血管の状態を評価します。IMRは、冠動脈の内部での圧力と流量の比率に基づいて計算されます。IMRが高いほど、微小血管の抵抗が高いことを意味します。

FFR (分画流儲蓄)

FFRは、冠動脈の狭窄(狭窄)の程度を評価する指標です。FFRは、心臓の拍動の間における最大血流を比較することで計算されます。具体的には、狭窄部位の上流と下流での圧力比率がFFRとなります。FFRが0.8以下の場合、狭窄が重篤であり、治療が必要であるとされています。

CFR (冠流儲蓄)

CFRは、冠動脈の最大血流能力を評価する指標です。CFRは、基準状態と最大血流状態での血流速度の比率によって計算されます。正常なCFR値は2.0以上であり、CFRが低いほど、冠動脈の血流が制限されていることを示します。

IMR, FFR, CFRの関係性

IMR, FFR, CFRは、それぞれ異なる側面の冠動脈血行動態を評価する指標であり、一部の重なりがありますが、それぞれ異なる情報を提供します。

  • IMRは、微小血管の抵抗を評価し、血管の健康状態に関する情報を提供します。

  • FFRは、冠動脈の狭窄の程度を評価し、冠動脈病変の重要性を判断するのに役立ちます。

  • CFRは、冠動脈の最大血流能力を評価し、冠動脈全体の機能を反映します。

これらの指標の関係性は、冠動脈疾患の診断や治療戦略の決定において重要な意味を持ちます。例えば、FFRが低い場合、狭窄が重篤であるため、冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術が検討されます。しかし、同時にIMRが高い場合、微小血管の状態が悪いことが示されるため、狭窄部位の治療だけでは症状の改善が十分に得られない可能性があります。

また、CFRが低い場合、冠動脈の血流が制限されていることが示されますが、この制限が狭窄によるものか、微小血管の機能障害によるものかを区別するために、FFRとIMRの結果を併せて解釈する必要があります。

総じて、IMR、FFR、CFRの関係性を理解し、それぞれの指標が提供する情報を適切に組み合わせることで、冠動脈疾患の診断や治療戦略の決定に役立てることができます。これらの指標は、症状や検査結果と併せて患者個々の状況に応じた最適な治療アプローチを選択する上で重要な役割を果たします。

狭心症由来の胸痛症状の原因にはあらゆるメカニズムが存在

狭心症由来の胸痛症状の原因にはあらゆるメカニズムが存在します
血管造影検査だけでは全ては見えず 
心外膜血管のみの評価に限定されてしまう
心筋への血流供給の大部分を担う
微小血管に対する評価が網羅できない問題点があります

従来の血管造影検査は、心筋への血流供給を評価する際に限定的な情報

狭心症に起因する胸痛症状は、さまざまなメカニズムによって引き起こされます。これには、冠動脈の狭窄や閉塞、冠動脈の血流量の低下、冠動脈血管の拡張機能の低下、心筋の酸素需要の増加などが含まれます。これらのメカニズムは、心筋への血流供給が不十分になり、酸素不足や虚血を引き起こすことがあります。

従来の血管造影検査は、心筋への血流供給を評価する際に限定的な情報しか提供できません。特に、この検査では心外膜血管のみを評価し、心筋への血流供給の大部分を担う微小血管の評価ができません。微小血管障害は、狭心症の胸痛症状の原因となることがあり、血管造影検査だけでは見逃される可能性があります。

この問題を解決するために、より包括的な冠動脈血行動態評価が求められます。IMR(微小循環抵抗指数)、FFR(分画流量予備)、およびCFR(冠流量予備)などの指標は、冠動脈および微小血管の機能をより正確に評価するために開発されました。これらの指標を使用することで、狭心症の胸痛症状の原因を正確に特定し、適切な治療戦略を立てることができます。

心外膜血管の狭窄と冠微小循環障害

心外膜血管の狭窄と冠微小循環障害は、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の原因となることがあります。これらの問題は、冠動脈血管と微小血管のさまざまな分布に影響を与えることがあります。

心外膜血管の狭窄

心外膜血管は、心筋に酸素と栄養を供給する大きな血管です。狭窄は、プラークの堆積や血管の硬化によって引き起こされることが一般的で、血流の低下や虚血を引き起こすことがあります。心外膜血管の狭窄は、冠動脈の主要な分岐や分枝部位に見られることが多く、狭窄の程度や位置によって血流への影響が異なります。

冠微小循環障害

冠微小循環障害は、心筋への血流供給の大部分を担う微小血管の機能障害を指します。これは、血管の内皮機能の低下、炎症、酸素遊離障害、血管収縮や拡張機能の低下などによって引き起こされることがあります。冠微小循環障害は、冠動脈血管のさまざまな部位に影響を与えることがあり、局所的な虚血や心筋機能の低下を引き起こす可能性があります。

心外膜血管の狭窄と冠微小循環障害は、患者の症状やリスク要因に応じて異なる分布を示すことがあります。診断や治療戦略を立てる際には、これらの問題の分布と相互作用を考慮することが重要です。IMR、FFR、およびCFRなどの冠動脈血行動態指標を使用することで、これらの問題の正確な評価と適切な治療計画が可能となります。


1.限局性冠動脈狭窄を含むびまん性冠動脈

限局性冠動脈狭窄とびまん性冠動脈疾患は、心臓への血流を制限する異なる形態の冠動脈疾患です。これらの病態を理解することは、冠動脈疾患の診断と治療において重要です。

  1. 限局性冠動脈狭窄: 限局性冠動脈狭窄は、冠動脈の特定の部分において血管の内径が狭くなる病態です。通常、アテローム性プラークの形成によって引き起こされ、プラークが破裂すると血栓が形成され、さらに狭窄を引き起こすことがあります。限局性狭窄は、心筋虚血や狭心症、心筋梗塞の原因となります。診断には冠動脈造影や心エコー、心臓CT、心臓MRIなどの画像診断が用いられます。治療法には、冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術が含まれます。

  2. びまん性冠動脈疾患: びまん性冠動脈疾患は、冠動脈全体にわたって狭窄や硬化が広範囲に生じる病態であり、微小血管の機能障害も関与していることが多いです。びまん性冠動脈疾患の原因には、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満、遺伝的要因などがあります。診断には、ストレス心エコーや心臓核医学検査、心臓CT、心臓MRIなどが用いられます。

びまん性冠動脈疾患の治療は、限局性冠動脈狭窄の治療よりも複雑です。びまん性冠動脈疾患に対する治療の主な目的は、症状の緩和、心筋虚血の予防、冠動脈疾患の進行抑制です。治療法には、薬物療法(抗血栓薬、抗狭心症薬、抗高血圧薬、脂質降下薬など)、生活習慣の改善(喫煙の禁煙、適切な食事、運動、体重管理)、冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術が含まれます。ただし、びまん性冠動脈疾患の場合、血管の病変が広範囲にわたるため、血管形成術やバイパス手術が困難な場合があります。

限局性冠動脈狭窄を含む びまん性冠動脈疾患 FFR CFR IMRの値は?


FFR 冠動脈の狭窄の程度↓
CFR 冠動脈の最大血流能力↓
IMR  微小血管の抵抗↑

びまん性冠動脈疾患は、冠動脈全体にわたって広範囲の狭窄や血流異常が見られる病態です。この状況では、冠動脈の狭窄の程度を評価するFFR(分画流儀指数)、冠動脈の最大血流能力を評価するCFR(冠流儀予約)、および微小血管の抵抗を評価するIMR(指数微小血管抵抗)の値が変化します。

  1. FFR(分画流儀指数): びまん性冠動脈疾患では、FFR値は通常低下します。これは、広範囲の狭窄が血流を制限し、心筋の酸素需要と供給のバランスが崩れることを示します。

  2. CFR(冠流儀予約): びまん性冠動脈疾患においても、CFR値は低下することが一般的です。これは、冠動脈の最大血流能力が低下し、心筋への血流が不十分になることを示しています。

  3. IMR(指数微小血管抵抗): びまん性冠動脈疾患では、IMR値が上昇することがあります。これは、微小血管の抵抗が増加し、血流が制限されることを意味します。微小血管の抵抗の増加は、炎症、血管内皮機能の低下、酸素遊離障害などの要因によるものです。

びまん性冠動脈疾患の診断と治療において、FFR、CFR、およびIMRの値を考慮することが重要です。これらの指標は、狭窄の程度や冠動脈の血流能力、微小血管の抵抗など、冠動脈疾患のさまざまな要素を評価するのに役立ちます。これらの指標を組み合わせて使用することで、より正確な診断や適切な
治療戦略が立てられます。


2.微小血管機能が保たれた限局性冠動脈狭窄

限局性冠動脈狭窄は、冠動脈の特定の部位において狭窄が見られる状況です。この病態では、微小血管機能が保たれている場合、心筋への血流供給は比較的維持されることがあります。以下に、この状況でのFFR、CFR、およびIMRの変化を説明します。

FFR↓ 
CFR↑
IMR↓

  1. FFR(分画流儀指数): 限局性冠動脈狭窄の場合、FFR値は低下することがあります。狭窄部位において血流が制限されるため、心筋の酸素需要と供給のバランスが崩れる可能性があります。

  2. CFR(冠流儀予約): 微小血管機能が保たれている限局性冠動脈狭窄では、CFR値は上がります。 この状況では、主要な冠動脈に限局性狭窄が存在する一方で、微小血管の機能が正常であるため、心筋への血流は適切に維持されます。その結果、冠動脈の最大血流能力は低下しません。しかし、狭窄が重度である場合や、心筋の酸素需要が高い状況下では、CFR値が低下する可能性があります。そのため、限局性冠動脈狭窄で微小血管機能が保たれている場合でも、CFR値は個々の患者や狭窄の程度によって異なります。 これに対して、冠微小循環障害が存在する場合、CFR値は低下します。この状況では、心筋への血流が微小血管の機能障害によって制限され、冠動脈の最大血流能力が低下します。このような症例では、狭心症の症状や心筋虚血のリスクが高まる可能性があります。

  3. IMR(指数微小血管抵抗): 微小血管機能が保たれた限局性冠動脈狭窄の場合、IMR値は下がります。


3.独立した冠微小循環障害

独立した冠微小循環障害(Independent Coronary Microvascular Dysfunction; ICMVD)は、冠動脈の狭窄や閉塞が原因ではなく、心筋への血流を制限する微小血管の機能障害が独立して起こる状態です。この状況では、主要な冠動脈には明らかな狭窄や閉塞が見られないにもかかわらず、患者は胸痛や虚血の症状を経験することがあります。以下に、ICMVDの場合のFFR、CFR、およびIMRの変化を説明します。

  1. FFR(分画流儀指数): 独立した冠微小循環障害の場合、FFR値は上がります。

  2. CFR(冠流儀予約): ICMVDでは、CFR値が低下します。微小血管の機能障害により、冠動脈の最大血流能力が低下し、心筋への血流が制限されることが原因です。

  3. IMR(指数微小血管抵抗): 独立した冠微小循環障害の場合、IMR値はかなり上昇します。これは、微小血管の抵抗が増加し、心筋への血流が制限されることを示しています。

4.びまん性冠動脈狭窄と冠微小循環障害の併発

びまん性冠動脈狭窄と冠微小循環障害が併発する場合、以下のような指標の変化が観察されます。

  1. FFR(分画流量予約): びまん性冠動脈狭窄の場合、冠動脈全体に狭窄が分布しているため、FFR値は通常上昇します。これは、心筋への血流が冠動脈狭窄のために制限されていることを示しています。

  2. CFR(冠流儀予約): 冠微小循環障害が存在する場合、心筋への血流が微小血管の抵抗によって制限されるため、CFR値は低下します。これは、心筋の最大血流能力が低下していることを示しています。

  3. IMR(指数微小血管抵抗): 冠微小循環障害がある場合、微小血管の抵抗が増加し、IMR値は上昇します。これは、冠微小循環の抵抗が高まり、心筋への血流がさらに制限されていることを示しています。

びまん性冠動脈狭窄と冠微小循環障害の併発は、患者の症状や心筋虚血のリスクが高まる可能性があります。これらの指標を用いて、患者の状態を評価し、適切な治療戦略を立てることが重要です。




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