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Functional independence measure (FIM) とStroke Impairment Assessment Set (SIAS)について

Functional independence measure (FIM)

機能的自立度評価法(FIM)は、
リハビリテーション医学の分野で広く用いられている評価法で、
基本的なセルフケアや移動のタスクにおける患者さんの自立度を評価するものです。
FIMは18項目からなり、それぞれが機能的能力の異なる側面を測定する。以下は、各項目の簡単な説明になります。

セルフケア


(1)食事 Eating
食べること。食べ物を切ったり、調理器具を扱ったりすることを含む、自力で食事をする能力。
FIMにおける食事の評価範囲は、食事が適切に用意された状態で
①適切な食器・道具を使って、
②食べ物を口に運ぶ動作から、
③咀嚼し、嚥下するまで
の3つの工程を評価していきます。


(2)整容 Grooming
身だしなみ 歯磨きや髪をとかすなどの基本的な衛生作業を行う能力。
整容の評価は、①口腔ケア、②整髪、③手洗い、④洗顔、⑤髭剃り、または化粧の5つの項目を評価していきます。
整容は、あくまで上記の5つの項目で評価します。
爪切りや着替え、清拭、入浴などの項目は整容に含めないように注意しましょう!

髭剃りと化粧が必要ない場合は、その他の4項目で評価する。


(3)清拭 Bathing
清拭(入浴):
お風呂やシャワーで体を洗う、洗い流す、乾かすなどの動作ができること

清拭の評価は、身体を
①胸部、②右上肢、③左上肢、④腹部、⑤右大腿部、⑥左大腿部、⑦右下腿部、⑧左下腿部、⑨陰部、⑩お尻
の10箇所に別けて、身体を洗う、すすぐ、乾かす(拭く)で評価します。


(4)更衣上半身
(5)更衣下半身
 Dressing—Upper  Dressing—Lower
更衣の評価は、「上半身」と「下半身」の2つに分けて着脱を評価します。

着替え。ボタン、ファスナー、スナップの取り付けを含む衣服の着脱ができること。

更衣の評価範囲
FIMにおける更衣の評価範囲は、衣類を「脱ぐ」「着る」を評価します。

更衣の採点ポイント

  1. 上半身は、衣服を「かぶる」「片袖を通す」「もう一方の袖を通す」「衣服を引きおろす」の4つの動作のうちどれくらい自分でできるか評価する。

  2. 下半身は、衣類が「ズボン」「下着」「靴下(ストッキング)」「靴」に変えて採点する。

  3. 上肢・下肢装具の着脱も更衣の評価対象となる。
    例)ジッパー、ブラジャーの金具、弾性ストッキングも装具と同様に判断

  4. 装具は、主な更衣動作ではないので介助で装着しても5点までしか下がらない。※入浴前後の更衣は、特殊な状態なので評価対象外となります!


(6)トイレ動作 Toileting

トイレ。トイレを使用する能力(乗降、清拭を含む)。
「トイレ動作」の評価について解説します。
トイレ動作の評価範囲

FIMにおける更衣の評価範囲は、「衣類の着脱」「陰部を清潔にする」までを評価します。トイレを使用せず、尿器を使用してベッド上でトイレを済ませている場合は、ベッド上での動作を評価します。

トイレ動作の採点ポイント

  1. トイレ動作は、「服を下げる」「服をあげる」「お尻などを拭く」の3つの動作のうちどれくらい自分でできるか評価する。

  2. 生理用品の取り扱いも評価対象となる。


排泄コントロール


(7)排尿管理
膀胱の管理。膀胱管理:便器、カテーテル、便器などの排尿をコントロールする能力。
(8)排便管理
腸の管理。便器、カテーテル、またはトイレの使用を含む、排便をコントロールする能力。

排泄コントロールの採点ポイント

  1. 「失敗する頻度」と「介助量」の両方を採点し、低い方の点数をつける。

  2. 日中と夜間で点数が異なる場合は、低い方の点数をつける。


移乗

FIMにおける移乗の評価範囲は、
ベッド・トイレ・浴槽(シャワー)の
それぞれの「座面から立ち上がる」「方向転換」「座る」までの
乗り移ることを評価していきます。
例えば、トイレの場合であればトイレに近づく、離れる、
ドアを開ける、ズボンを下ろす、お尻を拭くなどは
評価対象外となるため注意して採点してください。

移乗の採点ポイント
往復で点数が異なる場合は、低い方で採点する。
立って移乗する場合は、立ち上がり動作も評価対象とする。
ベッドからの起き上がり動作も比重は少ないが評価対象とする。

(9)ベッド・椅子・車椅子移乗
移乗。ベッドから椅子や車椅子へなど、
ある場所から別の場所へ移動する能力。
(10)トイレ移乗
移動。歩行、車輪、這い這いなど、環境内を移動する能力。
(11)浴槽・シャワー移乗
階段昇降。階段の昇り降りを含む、階段を上る能力。

移動


(12)歩行・車椅子
移動の評価範囲
FIMにおける移動の評価範囲は
「歩行」または「車椅子」で評価していきます

移動の採点ポイント
移動手段として歩行または車椅子のどちらかで最も頻繁に行う方で採点する。FIMで評価する移動距離は「50m」と「15m」で採点する。
※FIM評価は、米国が発祥のため1街区(50m)と家屋内移動(15m)の距離としている。入院時と退院時の移動手段は統一する。

(13)階段
基本的にFIMの評価は「しているADL」で採点を行いますが、
階段は、病院や施設に階段がない場合や
評価の対象者が日常的に階段昇降をしない場合があります。
このような場合は、評価を行う時だけの「できるADL」で
採点しても構わないとされています。

認知項目(5項目)

コミュニケーション
理解」「表出」の採点方法を解説します。
理解の評価範囲
理解の評価範囲は、相手の指示や会話が「①どのくらい分かっているか」「②どのくらい介助(配慮)が必要か」で評価します。
理解の介助(配慮)とは、ゆっくり話す、繰り返す、分かりやすい言葉を選ぶ、特定の語句を強調する、間を置く、視覚またはジェスチャーによる手がかりを利用すること。

表出の評価範囲
表出の評価範囲は、自分の欲求や考えを相手に「①どのくら伝わっているか」「②聞き取るためにどのくらい配慮が必要か」で評価します。
表出の介助(配慮)とは、ゆっくり話させる、繰り返させる、わかりやすく言い直させる、間を置かせる、視覚またはジェスチャーなどを利用すること。

(14)理解
コミュニケーション。
話す、書く、身振りをするなど、
ニーズを表現したり、
質問に答えたりする能力。

(15)表出
問題解決力。小銭を数える、小切手帳の残高を確認するなど、考え、推論し、決断する能力。


社会的認知

(16)社会的交流
【社会的交流の評価範囲】
社会的交流では、家族やスタッフ、他の患者様と適切に交流しているか、集団へ参加しているかを評価します。
【社会的交流の採点ポイント】
他者と適切に関わっているかを評価する
周囲がどの程度の配慮(介助)が必要かを評価する
7〜5点は不慣れな環境で評価、4〜1点は慣れた環境での交流を評価する
1つの交流場面だけでなく、全体像を評価することが重要

(17)問題解決
【問題解決の評価範囲】
FIMの問題解決では、日常生活上の金銭的、社会的、個人的な問題を解決できるかを評価します。
【問題解決の採点ポイント】
問題を解決できるかは点数に影響せず、問題を認識して決断を下し、行動することができるかを評価する
減点対象は、問題に対して「的外れな行動」「危険な行動をとる」「行動しない」場合
7〜5点は複雑な問題に対して、5〜1点は日常の問題に対して採点する
問題解決では、1つの場面だけでなく全体像を評価することが大切となる

(18)記憶
記憶力。過去の出来事や最近の経験を思い出す能力。
予約や電話番号の記憶など。
【記憶の評価範囲】
記憶では、「頻繁に出会う人」「毎日の日課」「他人からの依頼」の3つの課題を覚えているかを評価します。


【記憶の採点ポイント】
3つの課題が1/3ずつの比重を占めていると考え、採点する
3つの課題での記憶・再生している割合を平均して採点する
記憶の介助には助言、道具の使用(手帳・タイマーなど)依頼を繰り返すなどがある


FIMまとめ


FIMのスコアは18(完全な依存)から126(完全な自立)まであり、
スコアが高いほど自立度が高いことを示す。
FIMは、リハビリテーションの現場で、患者さんの長期的な経過を追跡し、退院時の機能レベルを決定するためによく使用されます。

FIMの評価は、患者様の「しているADL」を把握するために病院などで使用されていますが、未だリハビリスタッフが中心に採点している現状です。

近年、2016年度の診療報酬改定で、
回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)の
アウトカム評価として「FIM評価」が導入されました。
これは、質の高いリハビリテーションの提供や
患者様の早期回復・早期退院を目的として、
回復期リハ病棟の各患者に対し、
しているADLの評価であるFIMをアウトカムとして数値化し、
成果を出している回復期リハ病棟を評価するために設けられています。

Stroke Impairment Assessment Set (SIAS)


SIAS は信頼性および妥当性の検証がなされた脳卒中後の
機能障害に関する総合評価指標 1‒3)であり
脳卒中治療ガイドラインにおいてもその使用が推奨されています 4)

1) 道免和久: 脳卒中片麻痺患者の機能評価法Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)の信頼性および妥当性の検討(1):麻痺側運動機能,筋緊張,腱反射,健側機能.リハビリテーション医学.1995; 32: 113–122.
2) Tsuji T, Liu M, et al.: The stroke impairment assessment set: its internal consistency and predictive validity. Arch Phys Med Rehabil. 2000; 81: 863–868.
3) Liu M, Chino N, et al.: Psychometric properties of the Stroke Impairment Assessment Set (SIAS). Neurorehabil Neural Repair. 2002; 16: 339–351.
4) 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会(編):脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画,東京,2015,pp. 270–318.

治療の効果判定を行ううえでは
SIAS の改善に よりその判定が可能であることが望ましいですが
SIAS の 効果判定ツールとしての問題点は

脳卒中治療に伴い反応・改善する指標であるかが不明なこと
また,SIAS の点数が改善することに臨床的意義を伴うかが
不明なことであるとされています!

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/advpub/0/advpub_11049/_pdf/-char/ja


SIAS

SIASは 脳卒中の機能障害を定量化するための総合評価セットですが

9種類の機能障害に分類される22項目からなり
各項目とも3あるいは5点満点で評価します

●多面的な脳卒中機能障害の評価項目として必要かつ最小限の項目を含む。

●検者一人で簡単に短時間で評価できる。

●各項目が単一のテストによって評価できる。

●非麻痺側機能を含んだ総合評価セットである。

脳卒中の機能障害は、運動麻痺にかぎらず、
感覚障害、痙性、拘縮、体幹障害、高次機能障害など多岐にわたります

従来の脳卒中の機能評価では、
運動機能ばかりに重点がおかれておいることが多かった

これは、運動麻痺が脳卒中患者のADLに
直接的に影響する障害であることを反映したもの

しかし機能障害の”多面性”を忘れては、
脳卒中患者を評価したことにはならないですし、
脳卒中のリハビリテーションを本当に理解することはできないそうです

脳卒中機能評価法(SIAS)は、
多面的な機能障害を見落としなく評価できるように作成されております

これまでのようにそれぞれの機能障害の評価法を
資料から選んで組み合わせる必要がなく、
あとで振り返ったとき、
検者によって評価項目や評価法がまちまちであるという危険性がないです

臨床面では患者の機能障害についての共通言語を持つ
ということになるし、研究面からみれば、
常に必要なデータがカルテに蓄積され続けるという意味で、
実に強力な武器を得ることにつながるわけです

SIASは機能障害の変化をとらえやすいように
工夫されたテスト群から構成されており、
脳卒中患者をみるとき、どの機能障害が改善したか、
あるいは悪化したかという点が把握しやすい評価法といえます

また、SIASは”簡便”であり、外来、ベッドサイドあるいは訓練室など、
どこでも施行できるようなテストから構成されています

施行時間は10分弱であり、慣れてくると5分程度で可能となる
しかも、打腱器と握力計、そしてメジャー以外、
特別な道具はまったく必要としません
したがって、忙しい臨床の合間でも、心がけひとつで繰り返し評価することが可能です

SIASのもうひとつの特徴は、
Brunnstrom Stageなどのような多項目評価(multi-task assessment)ではなく、単一項目評価(single-task assessment)を採用しているという点です

多項目評価の場合、たった1つの機能をいろいろな角度から眺めているにすぎず、得られた結果の中に、単一項目評価より多くの情報を含んでいるとは考えられないです

それだけのものに時間をかけるよりはむしろ、感覚機能、関節可動域などの機能障害に目を向けた方が有益であるというのがSIASの立場です

さらに、SIASのユニークな点は、非麻痺側機能評価を含むことです

脳卒中の”非麻痺側”は、健側とはいえないという事実や、ADLや歩行能力に非麻痺側機能が重要であるというこれまでの知見を生かして、評価の中に上下肢の非麻痺側機能項目が含まれております

以上のような背景で現在のSIASが開発されました

SIASを用いることにより、
脳卒中の機能障害を正しく把握できるだけでなく、
その分析を重ねることにより、
機能障害の構造、疾患自体との関係、能力低下との関係など、
さまざまな事実が明らかになっていくものと思われます


最後に自分メモ


関連の研究でFimとSIASのつながりを考え中

その1
 FIM SELF-CARE Eating
 FIM 
(1)食事 Eating
 
 SIAS、垂直性テスト 垂直性テスト0~3 点
 SIAS、垂直性テスト 患者が座位を維持できない場合は0点となる。
 座位姿勢を維持しようとすると、常に側方に傾き、
 指示しても垂直位に修正することができない場合が1点である
 2点は指示すれば垂直位に座れる場合をさす
 正常に座位をとれる場合が3点である
 
 食事と垂直性 関係性がありそう


その2
   SPHINCTER CONTROL  Bladder
  FIM 
(7)排尿管理
  膀胱の管理。膀胱管理:便器、カテーテル、便器などの排尿をコントロール 
  する能力。

  SIAS、L/E DTR  9)下肢反射 L/E DTR(PTR or ATR)
 下肢では膝蓋腱反射とアキレス腱反射を評価する
  0点は2つの腱反射がどちらも著明に亢進しているか
  手指の屈筋クローヌスあるいは足関節クローヌスが誘発される場合をさす
  腱反射が軽度亢進していれば2点となり
  1点は腱反射が中等度に亢進している(1A)
  あるいは消失している(1B)場合を意味する
  3点は正常あるいは非麻痺側と比較して対称的である場合をさす


その3
 FIM (8)排便管理
 SIAS、KE
 下肢近位テスト(Knee-Extension Test)
 
座位にて膝関節を90°屈曲位から十分(-10°程度まで)
 伸展させるという課題で評価する
 非麻痺側と同様に力強く繰り返し遂行できる場合5点と評価する
 膝関節を重力に抗して十分伸展できるが、
 中等度あるいは著明なぎこちなさをともなう場合は3点である
 膝関節の伸展筋に収縮があり、
 足部は床より離れるが、十分に膝関節を伸展できない場合は、
 2点評価とする
 0点は大腿四頭筋の収縮をまったく認めない場合をさす
 この項目も、必要ならば座位保持のための介助をして構わない

その4
 FIM (14)理解 コミュニケーション

 SIAS、疼痛
 脳卒中後に出現する肩関節、手指などの関節痛に加え、
 視床痛などの中枢性疼痛を含む
 変形性関節症や腎結石のような脳卒中に直接関連がない疼痛は除外する
 0点は睡眠を妨げるほどの著しい疼痛をさす
 中等度の疼痛で、睡眠を妨げるほどではない場合は1点である
 3点は疼痛の問題がない場合である。

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