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昨季の各国の国内選手権はどんな会場で行われたのか?〜アリーナアイスでの日本選手権を迎えるにあたり

日本では2024年の日本選手権が横浜BUNTAIで開催されることが発表されました。カーリング専用施設じゃない場所で行われるのは久しぶりで、首都圏のアリーナ施設での開催は初めてのようです。

では、世界各国の国内選手権は、どの程度アリーナ施設で行われているのでしょうか?

例えば、今週末に始まる2024年韓国選手権は、2025年女子世界選手権が行われるウイジョンブ市で行われますが、世界選手権会場の「ウィジョンブ アイスリンク」ではなく、その目の前にある韓国最大級のカーリング専用施設「ウィジョンブ カーリングスタジアムで行われます。こういう話を聞くと、アリーナ施設で国内選手権を行うのは、簡単なことではないのかと思わされます。

ただ、この時期に国内選手権を行うのは、韓国含め一部の国だけなので、他の国の事例を取り上げられません。そこで、昨季に当たる2023-24シーズンの各国の国内選手権がどんな施設で開催されたのかをおさらいしてみたいと思います。


代表選考会でもある国内選手権

国内選手権と言っても、その規模や意味合いには違いがあります。今回は代表選考会を兼ねているかどうかで、2つに分けて整理してみます。

🇨🇦カナダ:アリーナアイス(男女別)

専用施設を使わずに、いわゆる“アリーナアイス”で国内選手権を行う国の筆頭といえば、カナダでしょう。カナダは男女別で国内選手権を行いますが、今年は男子がレジャイナ(サスカチュワン州)のThe Brandt Centre、女子がカルガリー(アルバータ州)のWinSport Event Centreで行われました。

🇰🇷韓国:昨年はアリーナアイス(平昌五輪のカーリング競技会場)

今年の韓国選手権はカーリング専用施設で行われますが、昨年は平昌五輪の会場でもあったカンヌン市のカンヌンカーリングセンターで行われていました(この投稿のトップ画像は2023世界MDの時のもの)。他の競技では使われませんが、空間の広さや観客席の数を考えれば、“アリーナアイス”の部類に入るでしょう。五輪レガシーの活用という意味では合理的な選択だと思いますが、毎回この会場を使うのも、女子のカンヌン市役所(チーム キム ウンジョン)や男子の江原道庁(チーム パク ジョンドク)にとって有利になりそうですし、そうはできないのでしょう。

🇯🇵日本:専用施設(どうぎんカーリングスタジアム)

日本も日本選手権が世界選手権の代表選考会となります。まだ記憶に新しいと思いますが、昨季は札幌のどうぎんカーリングスタジアムでの開催でした。

🇺🇸アメリカ:ショッピングモール内スケートリンク(アリーナアイス寄り)

少し変わった施設で開かれたのが、昨季の全米選手権でした。その施設というのが、ニューヨークから車で20分ほどのところにあるAmerican Dreamという大型ショッピングモールの中にあるスケートリンク The Rink。プロアイスホッケーの試合もできるサイズで、空間の広さやアイスの変化しやすさを考えると、アリーナアイスに近い状態の施設だと言えそうです。

🇳🇿ニュージーランド:専用施設

ニュージーランドは南部ネイズビーにあるManiototo Curling International 屋内カーリングリンクで国内選手権を行いました。オーストラリアもこの施設を昨季・今季と使っています。

代表選考に直結しない国内選手権

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿スコットランド:アリーナアイス

昨季のスコットランド選手権は、南部ダンフリースのDumfries Ice Bowlで行われました。アイスホッケーなどにも使われる施設で、常設の座席もある会場です。写真を見ると、そこまで大きな施設という感じもしませんが、アリーナアイスの部類に入ると思われます。世界選手権代表は、大会後に協会が独自の評価方法で選考し、男女の優勝チームはどちらも世界選手権代表には選ばれませんでした

🇨🇭スイス:専用施設

昨季のスイス選手権は、ジュネーブにある専用施設で行われました。6シートのうち、片側の1シートを使って客席を増設していました。男女ともに、大会前に決定していた世界選手権代表が優勝しました。

🇸🇪スウェーデン:専用施設

昨季のスウェーデン選手権は、ヨンショーピンにある専用施設で行われました。世界選手権代表はすでに決まった状態での大会で、男子のチーム🇸🇪エディンは出場が免除されていました。

🇳🇴ノルウェー:専用施設

昨季のノルウェー選手権は、オスロ近郊のスナロヤにある専用施設で行われました。こちらも代表はすでに決まった状態でしたが、世界選手権代表は男女とも優勝できませんでした。

🇮🇹イタリア:専用施設

昨季のイタリア選手権は、トリノ県ピネローロで行われました。ピネローロには、トリノ五輪のカーリング競技で使われた Stadio Olimpico del Ghiaccio Pineroloというアリーナ施設がありますが、写真を見る限りだと、併設されているカーリング専用施設の方で大会が行われたようです。世界選手権代表が決まったタイミングはわかりませんが、世界選手権代表が優勝したのは男子の方だけでした。

アリーナアイスで代表選考会を行うか、グランドスラム出場チームを代表に選ぶか

こうして改めて主要国の国内選手権の開催状況を見てみると…

  • 国内選手権で代表選考を行う国(PCCC参加国)は、アリーナアイスで国内選手権を行った国が多かった。

  • 国内選手権が代表選考に直結しない国(欧州選手権参加国)は、専用施設を使った国が多かった。

という傾向は見て取れそうです。そして、思い出したいのは、代表選考に直結しない国内選手権を行った🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿スコットランド、🇨🇭スイス、🇸🇪スウェーデン、🇳🇴ノルウェー、🇮🇹イタリアがどういうチームを世界選手権代表に選んだのかです。

男子は🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿󠁴󠁿󠁴󠁿モウアット、🇨🇭シュヴァラー、🇸🇪エディン、🇳🇴ラムスフィエル、🇮🇹レトルナス。女子は🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿モリソン、🇨🇭ティリンツォーニ、🇸🇪ハッセルボリ、🇳🇴ルルヴィク、🇮🇹コンスタンティーニ。すべて昨季のグランドスラムに1大会以上参加しているチームです。国によって、選考においてグランドスラム出場をどの程度評価するのかに差はありますが、結果的にはグランドスラムでアリーナアイスを経験しているチームが世界選手権に出場しました。

もし、アリーナアイスでの大会成績を基準に4人制の代表チームを選ぶとすると、国内でアリーナアイスの大会を開くか、アリーナアイスでの大会(グランドスラム)での成績を参考にすることになりますが、実は世界にはその選考環境を実現できている国がすでに多いのかもしれません。そういう中で、日本が日本選手権で代表選考を行い、その日本代表に活躍してもらいたいと思うなら、アリーナアイスでの日本選手権開催は避けられない道なのかもしれないですね。

とはいえ、横浜のあの立地の施設で日本選手権を開催すること自体は、大きな挑戦だと思います。それを決断した方、そのために尽力されている方の想いが成就してほしいです。数年後には女子世界選手権の誘致も検討されているようですが、横浜での日本選手権開催が1つの前向きな転換点になればいいですね。

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