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NFT、次なるフェーズへ

本年01月からはじまった、デジタル資産「NFT」のムーブメント。一攫千金を狙った状況は一段落し、新たな使途に突入している。
暗号通貨市場の急落にも動じなかったNFT、その本質を解説。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 最近のはなし: 』

停止した世界は、再起動しはじめた。
日本では、20時の散会が定着したように見える。

という状況の中で、「Zoom会議」が爆発的に増えていないだろうか。正直、“リアル会議”が日に8本を過ぎると以降、1本追加ごとに最初の1本の記憶を失うレベルのわたしはビジネスマンには程遠い。

このままZoom会議が常態化すると、日に10本を超えてしまう。集中力に際限ないのはアーティストである利点だが、“興味”に正直な点は、社会的な問題がある。Zoom会議の間が短くなるほどに、プロジェクトの進行が遅くなっているような錯覚を感じている。

わたしにとって興味を持ち続けることはとても困難であり、中長期の計画、大人なペースのプロジェクトを避けはじめている。これは、加齢によるものなのだろうか。ご教示頂きたい。

ちなみに、飽きっぽいのは生まれながらであり社会のデジタル化とスマートホーム化を鋭意徹底導入しつつ、郵便で届く封書を開ける、という作業が日常でいちばん重く、しんどいと感じるタイプの人間である。

さて、はじめよう。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:コミックの歴史の一部がNFT化、10万ドルでコレクターのDavid Cho氏が落札

1998年に最も売れたコミックとなった故マイケル ターナーの作品「Fathom No.1」の表紙が、NFT化されてオークションに出品された。ここ数ヶ月の間に、NFTは漫画家やコレクターの間で爆発的な人気を博しており、ターナーは今でも愛されている人物。また、Aspen社のオークションは古典的な表紙のNFTを公式に発売した最初の出版社とされており、注目を集めていた。しかし、MakersPlaceでのオークションの数日前には、暗号通貨市場が急落し、NFTへの購買意欲がどれほどのものかが疑問視された。しかし結果的に、その心配は無用だったことが証明された。入札合戦を制したコレクターのCho氏が語る。「マイケル ターナーの代表的な作品のNFT版という信じられないほどの希少価値を手に入れる機会を、逃すことはできませんでした。この作品は、アートとコミックブックの歴史において特別な作品です。わたしの大きなスクリーンで『Fathom』を見ることを、楽しみにしています」と述べている。収益の一部は、2008年に癌で亡くなったターナー氏のお気に入りの慈善団体である、米国癌協会、メイク・ア・ウィッシュ、ロンリーホエール、オセアナに寄付された。また、今回のオークションは、Aspen Comics社の株式の50%を所有するMythos Studios社が、数年後にターナー氏の作品をベースにしたシェアード ユニバースのアニメーション映画を発表する準備をしていることを受けたも。Mythos Studios社のCEOであるDavid Maisel氏は、「今後の展開を盛り上げるために、今回のNFTは最適な方法だった」と述べている。NFTの販売には、表紙の他に、ターナーの鉛筆画、落札者のCho氏や彼が選んだ人が、今後発売されるFathom社のコミックに登場するチャンス、Aspen社やMythos社の幹部と一緒に今後のプロジェクトのの舞台裏を見ることができるチャンスも含まれている。 - MAY 24, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

古典コミックの「表紙」がNFT化されてCho氏に落札された。出品者は開発中企画のニュース化に成功、落札者はその他に別素材を獲得し、以降の“コミック出演権”と舞台裏見学件を獲得した、という記事。

連日発生している“NFTニュース”のうち、少額の地味な記事である。しかしながらそこには、注目すべき要素が多い。

『 編集後記:THE Hollywood REPORTER記事の注目点』

 ① 出品者が明確
 ② 国際メジャー誌から出品者への直接取材
 ③ NFTというデジタル資産を活用した新企画プロモーション
 ④ NFTに付随するリアル特典

本年1月に爆発したNFTブームがいよいよ、具体的な使用方法を確立し始めている、という事実だ。それぞれを簡単に解説してみよう。

『 編集後記:解説①:出品者が明確 』

投資と投機、それぞれの思惑が混在するコレクター市場に置いて、“オークションの落札者”というのは自ら名乗り出ない限り、素性が知られることは無い。時に巨額が動く環境にプライバシーを遵守することは、当然とされてきたためだ。しかし、「NFT」では事情が違う。デジタル帳簿に売買経緯と素性が記録され、スクリーンネーム等を経て誰からも確認が可能な状況において、オークション定石は通用しない。落札者本人はまた、「落札の実力者」として自身を主張することが可能になっている。

『 編集後記:解説②:国際メジャー誌から出品者への直接取材 』

落札者の素性が明確であることからメディアは、直接の取材を申し込むことが可能になっている。また、間に紹介者を介さないことから“一次情報の裏取り”が必要なく、迅速で正確な情報を発信できる好機である。メディアはまた、落札者を介して“出品者(企業)”からの情報を引き出すことが可能になっている。SNSを巡回してのネタ探しが日常化したメディアにとってNFTは、新たな情報を紐解く、大きな機会となっている。

『 編集後記:解説③:NFTというデジタル資産を活用した新企画プロモーション 』

国際メジャーのメディアまでもが注目している状況から、“出品者(企業)”はまた、「プロモーションとしてのNFT」という活用方法を得た。これは、“クラウドファンディング”と同じ仕組みだ。情報リテラシー高いここの読者には、クラウドファンディングを“資金集めの場”などと信じている人はいないだろう。クラウドファンディングの正しい使途は、「宣伝マーケティング」「受注事前予約窓口」そして、「ファン獲得の会費回収」である。同様に、NFTの活用目的の主軸は“ラッキー収益”から、「プロモーションツール」へと移行し始めている。NFT出品者は宣伝マーケティングとして、「メディアのニュース化」という利を得る。出品商品が1,000万円で売れたのは付随するラッキーであり見込み収益ではないことから、本記事どおり、「チャリティーへの貢献」という使途で、プロモーションに“攻撃からの保護”という保険を講ずることができている。なお、倫理や道徳的な反意もおありのことと推察するが、ここ「アーティスト業界情報局」はリアルを知るための具体情報ツールであることを、理解頂きたい。

『 編集後記:解説④:NFTに付随するリアル特典 』

今回のNFT出品はつまるところ、価値あるコミックの「表紙画像」である。そのもの自体には「限定」と「公式」以外の価値は無い。ゆえに、出品者側が追加補填した“リターン”である。このことからも、出品者が“クラウドファンディング”を意識していることが証明されている。個人的には、「限定」「公式」だけで十分な価値の創出に成功しており、出品作の論点をぼやかしてしまう愚策だと感じている。出品社の臆病さが生んだ、不勉強さだ。

集英社のワンピースNFTなど出版社など、後続も止まらないムーブメントは、収益バブルの先にある、NFTの正しい進化形だと言える。

新も旧もない今をみつめて未来を描く、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記