【演劇教育ゼミ】ゼミの進め方がおもしろかった

授業がはじまってから2カ月以上経った。演劇学と教育学、それから演劇教育学の小難しい理論をもとにあれこれと議論する授業が多かったけれど、抽象的でかなり複雑なので説明できる自信がない。とりわけFAU(Friedrich-Alexander Universität)の演劇教育学コースは理論中心らしく、テクニックを習う授業は一つもなくて、理論をもとに身体的・精神的経験を交えながら、実践への洞察を深めるものが多かった。

授業の内容もさることながら、授業の進め方も面白かった。よくあるゼミだと、担当者がレジュメを作って発表するのだが、演劇教育学のゼミでは発表はないか、あってもグループ発表だった。グループ発表と言っても、担当のグループが一方的に情報を発表するのではなく、半分ファシリテーターで、学生自身が、どうすれば効果的な議論ができるのか、ゼミの進行の仕方を考える。

例えば、今日、「Publikum(観客)」というテーマを扱うゼミでグループ発表があった。このゼミでは、毎回のテーマとそのためのテクストがあらかじめ教授によって用意されていた。今回は「Claque(サクラ)」についてであり、僕も担当グループの一人だった。メンバーは10人ほどで、資料は英語やフランス語、それから古いドイツ語のものもあった。これらの資料を用いて、グループでどうゼミを進行させるのか考えないといけない。

僕らのグループはSNS上で次のように話し合った。まず誰がどの資料を読むのか担当を決め、それから「Claque(サクラ)」というテーマについてどんな問いが可能かアイデアを集めた。結果、サクラがどのように発展したのか、どのような組織/体制のもと行われたのか、どのくらいの力・効果があったのか、サクラに対して当時の人たちはどのように反応したか、などの問いが集まった。

ゼミ当日は、司会者役がいて、まず誰がどんな資料を読んだのかを確認し、それから前日までに集めた問いを順番に問いかけていった。資料を読んだ学生は、自分の資料をもとにその問いに対する情報を与え、場合によっては自分の意見を述べた。

このやり方はおもしろいし、効率的だと思った。すべての学生がすべての資料を読んでいなくとも、問いをもとにして資料の内容が共有される。ゼミに参加している学生は、次々と積み重なる情報をもとに、更なる問いを投げかけたり、意見を述べたりすればいい。

普通のゼミより気持ちが楽だったように感じたが、それは集中する情報が限定されているからだと思う。普段のゼミだと、前提として読んでくるテクストの量が多いが、今回のグループ発表では、資料全体の量は多いけれど、一つひとつはそれほど多くない。ゼミでの議論の展開を追いつつ、自分の資料の内容を確認していればいい。分からない部分は、ほかの資料に書いてあると思うと、責任が分断されているようにも感じる。

このやり方は一つの本を読む場合には使えないが、一つのテーマをもとに多くの情報を集める場合にはかなり使えると思う。

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