研修医へのメモ~トラブル対策~

注意!これはわたしが研修医を指導していたときに渡していたメモです。

実際の診療は上級医とともにしてください。

ラボデータチェック時

貧血が進んでいる

まずはバイタルと症状を確認。どちらかがまずかったら緊急事態です。
そうでなくても6を下回ったら(心疾患がある人は10を下回ったら)輸血を考慮しましょう。
しかし原因がはっきりしていて、これ以上進行しないと分かっている場合はその限りではありません(若年者だったらあまり輸血したくありませんね)
逆に緊急事態の場合輸血が肝心!すぐクロスマッチ、輸血部call(在庫の兼ね合いもあるため)

緊急事態の場合は無理せず人を呼びましょう。外液をたくさん入れること!
(デコることに躊躇しない。デコはなおせるがショックは死ぬ)
原因が明らかなら該当科のオンコール、分からなければ原因検索(ジギタール、胃液確認、CTは可能なら造影)
ちなみに下部消化管の場合、よほどのことでなければ突然大量出血ということはありません。

急ぎではない貧血進行
まずは鉄・フェリチン・TIBCを確認。
ありがちなのが「外液をたくさん入れたせいで薄まった」
ヘマトクリットも大きく下がっているはずです。
また、鉄欠乏も良くある話。閉経前なら生理で貧血も多い。
腎臓が悪い人は腎性貧血の可能性もあります。エリスロポエチン確認。
ビタミンB12/葉酸不足も割りといる。大球性にならないこともある。
溶血も考えられるなら、ハプトや脾臓も確認しましょう。

見逃してはいけないのは「慢性的に、しかし明らかに貧血が進んでいる」
この場合癌の可能性もあり、精査が必要です。上下部内視鏡はしましょう。
それ以上の精査は本人と相談して。

どうしても貧血の正体がつかめない場合は、血内に相談してマルクも考慮。

白血球がたかい
分画確認。個数×パーセンテージで絶対値をそれぞれ確認しましょう。
喫煙やステロイドで上がっている人は多い。ストレスで高めな人も・・
Eosinoが高すぎると臓器障害が出現するため注意。
わけの分からない上がりようは速攻で血液内科相談。

白血球が低い
やはり個数を確認しましょう。500を下回ったらクリーン対応を。
FN(発熱性好中球減少症)を起こしていないか?各種培養ののちにMEPM+VCM+怪しいなら真菌カバー(必要に応じて要アレンジ)。
原因は?重症感染症、薬剤性、腫瘍性・・
他系統も減少していないか?HemoPhago(血球貪食)の可能性も。

血小板が高い
血小板も遅れてやってくる炎症反応です。病歴確認。

血小板が低い
ありがちなのが検査上の偽性低値。検査科に確認してください。
基礎疾患によってはDICの可能性も。即座に凝固の検査をしてください。
ヘパリン起因性(HIT)はヘパロックでも起こりうるため薬剤確認を。
肝機能障害はありませんか?PT,コリンエステラーゼなど確認を。
他系統も減っていないか確認してください。

肝逸脱酵素が高い→もともとどのように推移していた?
新規薬剤がないかを確認(薬剤性が最も多い、この場合やめるとすぐなおる)
鬱血肝、感染症など原病に伴うものではないか?
いつも高いひとはお酒や脂肪肝のせいかも?
どうしてもわからなければエコーを見てみる。
肝機能はどうですか?

腎機能が悪い→腎前?腎性?腎後?尿を確認。
腎機能悪化に寄与する薬剤はないか?
食事はしっかり食べているか?(水分量は十分か)
エコーで形態や血流の確認をしてもいいかもしれません。

ミネラルについて:基本は経口補正です。腎臓が正常なら体内で補正されるため、過補正のリスクが少ない。
逆に、原因解明にも尿の所見が有用です。

Naが低い→急性か慢性かで変わる。以前の値を確認。
ありがちなのがintake不足やSIADH、薬剤性。
尿を確認しよう。
急性でなければ急速な補正は不要。基本は経口補正。
SIADHなら水制限だけで治るが、現疾患の特定をすること。
急ぐ時(症状があるなど)は点滴で補正。30分ー1時間毎に推移の確認と速度変更を!(高くても低くても過補正は脳がとける)

Naが高い→上記と同様に確認を。補正はやはり頻回に確認を。

Kが低い→尿をみて、腎臓から出ているかどうかをチェック。
inが足りないか、outが多いか。
アシドーシスを伴う場合も多いので補正はKCl(ケーサプライ。ただし大きいため飲めないひともいる)で。
どうしても無理ならグルコン酸カリウム、アスパラカリウムで。
点滴で補正は最終手段。速度と濃度に注意!

なお、Mgが低くてもKに影響が出るので、一緒に見てもいい。

Kが高い→心電図確認。やばい波形が出てたら緊急事態。
6を越えると緊急事態と思ってください。
カルチコール(グルコン酸カルシウム)1Aワンショットの上、30分でGI開始。(ボトルでもシリンジでもいい)
ボトルの例:5%glu 500ml+50%glu 40cc(2A)+ヒューマリンR 7単位を30分で落とす
経口摂取可能ならアーガメートやカリメート投与
そして原因検索:腎機能は?薬剤は?in-outは?

Caが高い→薬剤性(投与しすぎ)?あるいは癌性の可能性も。
担がん患者の意識障害の原因として有名。
その場合はゾメタを使う。(顎骨壊死に注意。可能なら歯科受診を)

Pが低い→一番気をつけるべきはre-feeding。下手すると死にます。
急に栄養を入れるときはチェックし、リン酸カリウムを入れましょう。
経口はホスリボン。

Caが低い、Pが高い→腎機能はどうですか?低い場合は腎内に相談の上カルタンなどで補正が必要です。副甲状腺機能はどうですか?内分泌科に相談しましょう。

Mgが高い→ありがちなのが、腎機能の悪い人や高齢者に盛られた酸化マグネシウム。(やめましょうね)


患者の訴え
痛い
「他人の痛みは一生痛くない」という言葉を覚えてください。
痛みはコントロールするものです。
まずは疼痛の性状・原因を調べます。
一般的な疼痛はアセトアミノフェン(弱い!)でだめなら禁忌(腎不全はもちろん肝不全も)や副作用(胃潰瘍)に注意しながらNSAIDsを。(適宜PPI併用)
それでもだめならトラマールを使いましょう。
オピオイドではないですが、それに準ずるものです。
レスキューとしてトラマール、持続でワントラムという除放剤もあります。
副作用もオピオイド同様嘔気や便秘があります。嘔気は自然に良くなる人も多いです。便秘は適宜対処を。オピオイド性便秘にはスインプロイクという便秘薬もあります。(普通の薬でなんとかなるならそっちのほうが安い)

便秘
便秘の原因を検索しましょう。(癌などの疾患,IBS,薬剤性の可能性も。)
「便をやわらかくする」「排便の刺激を与える」「便を輸送する」
それぞれ違う作用があります。
排便刺激の薬(センノシド、ピコスルファート、レシカルボンなど)は耐性を生じやすく、長期間使用ではどんどん量が増えていきます。
やわらかくする薬は酸化マグネシウム(カマ、サンカマ、マグミット)が有名ですが、腎機能が悪い人は排泄遅延が起こり高Mg血症になるため注意。
輸送に関しては最近登場した胆汁酸トランスポーター系が該当します。
アミティーザ、リンゼス、グーフィスなどで、既存の薬で対応できなくなった人に良いです。ただし高い。
その他ラクツロース(小児便秘・肝性脳症のみ保険適応)、ふすまなども効果的

下痢
とりあえず止める場合はロペミン、フェロベリン。
ただ、感染性の場合は止めちゃだめ。
まずは便の性状を確認。(脂肪便?血便?)
原因がわからない場合は感染性の除外(アメーバなども)、脂肪便の確認、画像的評価、内視鏡(炎症性を疑うなら生検も。こまったらとりあえずやる)

かゆい
まずは冷やす、かかない。
内科的疾患がないか確認(肝臓、腎臓など)
皮膚科に診てもらいましょう。たいしたことなさそうならレスタミンクリーム。

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