病棟実習、どうふるまうべき?という手紙への答え

学生から「我々が忙しそうで、わからないことに対して質問する余裕がなさそう。質問時間などを設けることはできないか。また、医者になるにあたって必要な採血や画像など検査の解釈を学びたい。せっかく病棟実習をするだから、病棟でしか学べないことを学びたい。」との要望がありました。それに対するわたしなりの答えです。これが正しい答えかはわかりませんが、少なくとも我々のような「マンパワー不足で学生に割く時間がない中で学生はどうふるまうべきか」の糸口になればと思います。

なお、こちらに関してはあくまで上記の要望があった学生への回答ですので、そうでない(自分の時間を過ごしたい)学生はそのようにふるまうのが良いと思います。正解はありません。あくまで自分が今この時をどう過ごし、どんな未来を開きたいかによるのです。積極的になるということは研修医になってからでも、そのあとでも遅すぎるということはないのです。もちろん、生涯にかけて積極的になる必要すらありません。


お伝えした通り、少ない人数で病棟を運営しているので私たちは常に忙しいのです。
しかし、時間を有効活用していれば、逆に忙しくない時間などないのです。
お伝えした通り(研修医へのメモ~日々の姿勢~より)、世の中の出来事は「緊急度」と「重要度」で4つに分類できます。
緊急性も重要性も高い仕事(例えば外来や緊急入院など)は優先しなければなりませんが、2週間しかいない先生への教育もその次くらいには緊急性や重要性が高いと言えます。
つまり、先生は「忙しそうな雰囲気」に負けずに質問をしてくだされば、ほかの優先順位との折り合いで答えることが出来るのです。
これからの人生も、時間を有効活用している人ほど「忙しそうで自分に割いてくれる時間がなさそう」と思ってしまうと思います。
しかし、そのような人からこそ勉強する価値があるのです。
仮に無理である場合は「いつなら大丈夫か」を教えますから、どうぞ積極的に質問してください、これも「質問する練習」です。
しかし、やみくもに質問するのではなく、今までの先生のようにしっかり調べて、自分なりの考えを持って質問してみてください。


あるいは、国家試験の臨床問題を解いて答えを見ることも「臨床的な考え方を知る方法」の一つです。
特に指摘された「検査結果の解釈」ですが、実際には教科書のように典型的な例というものは少ないのです。(仮にそれが存在したら教えます)
実習期間中にその時回っている科の臨床問題を解き、わからないところを我々が解説するほうが皆さんの勉強にはなると思います。
(もちろん、理想はみなさんの患者さんのデータから教えられたらいいのですが、実臨床というものは単純な答えが出ないことが多いのです)
当然ながら「医者になる前に知らないといけない知識」とは、国家試験に合格できる程度の知識です。
よって、まずは国試の問題をクリアできるようにするのが良いと思います。

また、病棟実習でないと学べないことに関しては、我々が実際に働いている姿を直に見て、私たちがなにをしているのかを考えてほしいと思います。我々が病棟にいる間は(息抜きは必要ですので行いますが)無駄にしている時間はありません。医師だけでなく、コメディカルが何をしているか、あるいは患者さんが何を受けているかを観察してみてください。
繋がっている点滴、指示や確認、用意してある器具など一つとして無駄なものはありません。
こちらに関しても疑問に思うことがありましたら答えさせていただきます。
(国家試験にもこのような病棟にあるものが問われるとのことです。無理に覚える必要はありませんが、経験したことのないものはどんなに勉強してもわからないものです)
あくまで仕事優先ですので、回答が簡素だったり先送りになる可能性はありますが、迷惑と思うことはありません。皆さんは授業料を払っているのですから、むしろ堂々とその対価を受けとっていただければと思います。

回答は以上になります。期待に応えられない部分もあったかと思いますが、逆に要望がございましたら今回のように教えてください。
我々も、時間がある限りお相手いたします。
特に研修医は仕事量が私たちより少ないので(うちの病院では)、学生の相手をできる時間も多いと思います。
(1年生は4か月前まで学生でしたので、立場としても近いと思います)
みなさんにとって一番近い将来像ですので、ぜひ積極的にコミュニケーションをとっていただけたら、と思います。

りお拝

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