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田草川幸伸の1日

田草川幸伸は未婚30代。
地方の4万を切る格安アパート一人暮らしだ。
手取りは、残業していなければ20万は切っているだろう。
一応、貯金は100万ちょっとはあるが、
一生暮らしていける金ではない。
将来に対してぼんやり不安である。

「このままではマズいかも」と思いつつ、
と、思うだけで何をしたらいいかもわからず、
と思ったらどんどん仕事の海に飲み込まれていく。
だからぼんやりとしか考えられないのだろう。

でもきっと、
これだけ毎月のやりくりに苦労しているのだから、
いつかはラッキーが訪れてもいいだろうと考えている。

いや、
決して不満のカタマリではないんだ、
決して不満のカタマリではないんだ、
最近の政治家や芸能人のスキャンダルを見てると、
平穏無事で何よりだと感じる。

そう「何もない」のだ。

もっと言えば「何者にもなっていない」のだ。

朝の支度をしながらテレビを見ていると
いつもそう思う。

さて、メシでも食うか。

いつも朝6時には起きて支度をすることにしている。
会社は8時始業だ。

地方は車がないと生活できない。
この冬の時期にはフロントガラスは凍っているから、
一回外に出てエンジンをかけて暖機しなければならない。

せめて、食事は温かいものを食べたい。

とは言っても限られた時間でできるのは
ご飯とレトルトカレーをレンジで温めるだけだ。
これがまた美味いから憎い。

おっと深く味わっているヒマもそんなにない。
7時を過ぎたので出勤しなければ。

満員電車には乗らないが、
地方でも出勤時は渋滞する。

少しずつでも通学の小学生のため、
道幅も広くなったり
バイパスができたりしているが、
それでも渋滞はする。

普段なら15分のところ、
30~40分はかかる。
これはこれでストレスだ。

そうして会社に着くと、
いつも耳にするのが
「パチンコがどうだった」
「上司が何々で~」
という会話だった。

これには田草川は混じらず、
机に座ると始業時間までスマホを眺める。

・・・そんな田草川幸伸が「1つだけ」ハマっているものがある。

・・・それは「FX」だ。

・・・彼はチャートを眺めていた。

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