オアシスへの凱旋

 砂漠をゆく僕らの、風にまぎれて高みへ浮かび上がり月面を共鳴させるであろう凱歌は一体どこに向けて歌われるべきか? 嫡出されつづける括弧つきの運命とはすなわち、いずれの両性から発生したまぼろしなのか? 

 即席のにぎやかさによって折檻されてしまうものたちが、夜ごと東京の空にわだかまり、西日本上空からなだれ込んできた冷気と混ざり合って局所的な積乱雲となる。それは厳冬にうずくまる僕らの頭上にもある。

 すべからくたなびくべき僕らの凱歌とはつまり、昔日の林道に隠蔽してきたものたちへの捧げものであるだろうし、俎上の供物に対する惜しみない求婚でもあるのだ。

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