海岸の火

さまよい続ける人の背に差す西陽を
軽やかな視線で振り払う君たちの
鮮やかで透き通るこころの奥に
うらびれた海岸の火が揺れる

大きな声で歌い続ける子どもたちの
決して果たされない約束の向こう
誰にも知られずに去っていった
さびしがり屋の風たちが吹く

比喩に飲まれて死んだあいつの亡霊
かたちも影もなく朝も夜もなく
遠い空から差す西陽だけがそれを
執拗に浮かび上がらせる

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