秋の日

  遠くの誰かに語りかけるような独り言はやめておこう。冷たくなった秋の日の風を共に吹かれた友に捧げるような野暮ったい詩は、書かずに捨てよう。

  それにしたって切ない夢を見る夕暮れもある。いくつもの分岐点を点検する夜もある。

  ここにいる自分の、素直な今の気持ちは、世界のどこかの網目に引っ掛けておかなければならないと感じることがある。それが今日だ。

  例に漏れず、僕にとってのみ有効なことばを使って書き記したいと思う。それが礼儀だ。君の知っていることばと僕の使うことばが似通っていても、それは単なる偶然だよ。読み飛ばしてほしい。それから、君と呼びかけているのは、あくまで便宜上の問題だ。あなたのことを指し示してはいないと思う。

  僕の感傷を本当に打ち砕いたのは君だけだ。ありがとう。そして、またね。

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