レキシントンと蚤の幽霊

 かつて二度読んだ小説を、いま三度目として読む。二度の読みで筋は把握し、そこから三度目に至るまでのある一定の時間において、かつて二度読んだ小説とは断絶したものごとについて知る。また、かつて二度読んだ小説と、少なからず絡みつきあってゆきそうな、ひっかかりのある、気配のあるものごとがやってくる。
 階下への通路の暗がりの向こう、静かに引き下がっていったもの。酒と夢と、特有の気配をもったものごととの交錯。
 かつて二度読んだ小説を、三度目に読むまでの間に発見するであろう、ある「気配」については、それが収まるべき架空の暴力的な書架が存在しているのらしいし、その「気配」がありうべき場所には、私の署名の刻まれた代本板が置かれているはずだ。

 湿った図書館をくまなく歩き、すべての代本板を見てまわりたい。私の名前は今、どの書架に収まっているだろうか?

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