自己規律のもたらす力

多忙なビル・ゲイツがハマったと言っていたNetflixのCrownがどんなものなのかが気になり、とりあえずシーズン2までは観終えた。すでにマイクロソフトから離れた彼は、国政に直接は関わることができない女王に自分を重ね合わせているのかもしれないな、と思った。

僕としては、違うところに関心がいった。それは、エリザベス女王の極めて強い自己規律と自制心だ。Crownで描かれているエリザベス女王は、特段に賢いわけでも、何らかの専門性を持っているわけでも、美貌に優れているわけでもない。それでも、この作品中では、衰えつつあるとはいえ極めて強い権威と権力を有している王室の中にありながら、彼女だけが極めて強い自制心を維持し続けている。同じ例はいくつもある。西郷隆盛、ガンジー、マービンバウワーなどだ。

原理原則に対する忠実さをもって偉大な事業を成し遂げた人は、往々にして才気煥発や眉目秀麗ではない。逆に、僕は愚直に原理原則に忠実である人で、目から鼻へ抜けるような人を見たことがほとんどない。この類の人々は、愚鈍に映る人ばかりだ。その理由がどこにあるのかは、もう少し考えたいと思っているけれど、思考速度の遅さというのは、その深さにもなりやすくて、それが原則的に生きることにつながっているのではないか、と思っている。

陽明学に影響を受けていた二宮尊徳や西郷隆盛は似たようなことを言っていた。それは、自分に打ち克てば、天下はその徳に従う、ということだ。ここでの克己とはは、わかり易い困難を乗り越えるようなことばかりでなく、自分の立場が強くなっても我意を通さないこと、私心を持たないこと、素直であること、などを指している。

大勢の人を長時間騙すことはできない。事業やミッションに対する忠実さはその人の生活を見ていれば一目瞭然になる。そして、そこに嘘偽りがない人は大勢の人の心を動かすことができるし、そういう人だけが大事を世界から任されて大きな仕事をできる。僕は世界の命運を誰かに託すとしたら、賢い人よりは、どんなときも何が正しいことなのかを考え、それを愚直に実行できる人に任せたい。大勢の人も同じように考えると思う。それに、そういう人の周りには、大勢の賢い人が集まっているはずだ。


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