蓮舫さんの心の痛み

こういうのを書くのもなんか火に油を注いでいる感じがして嫌なのだけど。

蓮舫さんのことについて、色んな人が色んなことを言っているけど、もし僕が日本国籍を取得したときに、朝鮮籍離脱の手続きを役所の人が教えてくれたらまだしも、何も言ってくれなかったら「日本は二重国籍認めてないんだから」くらいの理由で、放ったらかしておくと思う。だから、僕は彼女の説明にはとても納得がいく。そして、そんなことをもって「資質が」とか言う人達の相手をしないといけない政治家は大変だなあと思っていた。(追記2016年9月16日9時47分:回答が二転三転するような人が政治という高度に不可逆的な判断をする仕事に就くべきなのかというのは、まあそうだと思います。だからこそ、政治家って大変だなと書いた次第です)

ちなみに、台湾を国として認めていないのは他ならぬ日本政府であり、台湾が侵略者であった日本に対して親日に見えるのは、間近にある中国との関係上そうするのが都合が良かったからに他ならない。台湾の人々は「中華人民共和国が中国における唯一の合法政府」と言っている日本政府に対して怒るのが筋だと思う。

もう一つ。

遠くから日本のTwitterとかを眺めながら思ったのは、多数派しか経験したことがない人が知らず知らずに振りかざしている暴力についてだ。したり顔をして詰め寄る人たちを見ながら、どうしてもこういう人たちにはあまり近づきたくないな、と感じてしまう。

こう書いても、たぶんずっと多数派だった人や、自分のマイノリティ体験を肯定的に捉えられていない人、もしく他者の痛みに対する想像力がない人には、全くピンとこないと思う。多感な時期に、自分にはどうしようもないことが理由で「なんで自分だけ」という経験をしないと理解できないんじゃないかな。それは、痛みを知らない人に痛みが何かを知ってもらうことと同じようなもので、僕は若干諦めている。

彼女が名前を維持していることからしても、自分のルーツに対する思い入れはあるんだと思う。だけど、僕より一回り以上年上の人たちは、就職するにも何をするにも、本当に難しい時代を生きていた。この国で生きていこうという決意とともに彼女は色んなことを考えたんだと思う。

そういう時の心の痛みとか喪失感て、なんとも言えないと思うんだ。生まれたときに何も悪いことをしていないのに、それが理由で差別されることの不条理が想像できない人は、「肌が白ければ徹底的に差別をされる社会」があったとして、そこで自分が生まれたときの肌の色を手術して変えることを想像してみたらいい。「肌の色を変えてその人の本質が変わるわけじゃない」という人は沢山いる。確かにそうだろうけど、なんでこんな苦しいプロセスを強要されないといけないのか。

しかも、見ての通り日本国籍を取得してもいつまでも外国人扱いされ、本国からは「国を捨てた裏切り者」と罵られる。蓮舫さんが引き受けたのはそういう人生を歩くことで、それは結構苦しいことだ。孫正義さんでさえ未だにその痛みを抱えているように僕には見えるし、その悲しみが彼のものすごいエネルギーの源の一つになっていると僕は思う。

蓮舫さんに限らず、多数派の人々のこういった暴力にさらされて苦しい思いをしている人は少なくないと思う。国籍だけじゃなくて、障がいとか、経済状況とか、色んなもので。僕はそういう世の中は嫌なので、生まれた時の境遇によって嫌な思いをする人を一人でも減らしていきたいと思います。

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