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マニフェスト(ドラフト)

世界はそもそも不平等だ。これまでもそうだったし、おそらくこれからもそのままだ。草木だって大きなもの・小さなもの、長命なもの・短命なものに分かれるのと同じように、生まれた時から僕たちに与えられている親、名前、国籍、容姿、才能、お金は人それぞれ異なっている。

僕がつくりたい世界は決して不平等が完全になくなる世界ではない。そんなことは不可能だからだ。共産主義がうまくいくとも思えない。

僕が欲しいのは、すべての人が生まれた時に持っていたものを否定することなく、自由に生きていける世界だ。国籍が理由で留学を諦める世界なんて馬鹿げているし、人種のせいで就職先が決まる世界だっておかしい。生まれた国が途上国の貧しい農村だとしても、それが理由で世界最高の大学を目指すのを諦めるべきじゃない。バックグラウンドが押し付けようとする宿命を全ての人が乗り越えられて、自由気ままに生きていける世の中に僕は住みたい。

そういった世の中を実現するために必要なことはたった三つだと僕は考えている。

第一は、親へのアクセスだ。自分が心の底から信頼することができる人が一人だけでもいると、その人には世界に生き続ける理由が生まれる。多くの場合は親が第一号になるわけだけど、別に肉親である必要はなく、親代わりの人がいればそれでいい。親によって帰ってくることができる精神的な拠り所が出来た人は、いくつかのキッカケを通じて、努力することや、他人とうまくやっていくことなどができるようになっていく。努力することも、他人との関係構築(それは往々にして忍耐強さを求められる)も大変なことで、それをやり抜くには心の拠り所が必要なのだ。

第二は、情報へのアクセスだ。世界で何が起きているのかが分かる権利が保障されていること。具体的には基本的な教育とインターネットやメディア等へのアクセスがこれを担保する。自分が小さい村に押し込められていて、その外を知ることができなかったら、その人は本当の意味で自由に生きているわけではない。先進国に住む人々が途上国の電波のとどかない村に住む人々を見て、「彼ら・彼女らは幸せに暮らしているのだから、放っておくのがよいのではないか」というのは欺瞞だと思う。それは、動物園の檻の中で生まれ育ったトラを見て「こいつらを野に放ったらかわいそうだ。どうしたらいいか分からなくなるだろう」と言うのと似ている。もちろん、外の世界を知って絶望する人や茫然自失とする人もいるかもしれない。それでも、僕は全ての人が地球の状態を知ることができる世の中が好きだし、それは権利だと信じている。

第三は金融へのアクセスだ。強い心を持ち、世界のあり方を知り、自立した生活を勝ち取るために第一歩を踏み出そうとする際には、往々にしてお金が必要になる。まとまったお金を作るためには、基本的に貯めるか借りないといけない。家に十分なお金がある人にはその心配がないが、そうでない人には金融サービスが必要とされている。金融アクセスも不幸な人を生み出す可能性を持っている。奨学金で大学に行ったものの失敗して借金が残る人だっているだろう。だけど、僕は目標実現をそもそも諦めないといけない世界よりは、リスクを負ってでもそれを追いかけられる世界に住みたい。


親へのアクセス、情報へのアクセス、金融へのアクセスの三つさえあれば、すべての人は、自分が生まれたときに抱えていたものを否定することなく、自分の好きな人生を望むことが可能になる。僕はそう信じているし、自分の人生を通じてそれを証明していこうと思っている。家にお金もなく、特段の特権もなく、パスポートもなく、若干複雑な家庭に育った僕は色んな嫌なことも経験してきたけど、この三つのアクセスには恵まれていた。そして今はここにいる。

三つのアクセスに救われたからこそ、これを世界中で保障するために、僕は自分の人生を費やしたいと思っている。そして今の仕事として金融アクセスを選んだ。金融は自分の専門でもあるし、金融アクセス提供はビジネスベースで成立させやすいため、アクセス権を世界中で保障するために必要な資金が相対的に小さいからだ(10兆円くらいあればなんとかなる)。実親と暮らすことが叶わない子どもへの支援は、いずれにせよライフワークとして一生続けていこうとしている。

金融アクセスを世界中に届けるための具体的な手法については別の場所で述べる。このビジョン実現のために最も大切なことは、このビジョン実現のために全力を尽くす仲間を増やしていくことだと僕は考えている。時間をコミットしてくれる仲間は社員になるし、お金をコミットしてくれる仲間は投資家になる。

僕自身の仕事は、ビジョンと価値観を定義し、それと完全に首尾一貫した生き方をすることなのだろう。それ以外のことは僕より優秀な人に任せたほうがいい。


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