インターネットの基礎

角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎 情報革命を支えるインフラストラクチャー

今年20冊目。

合本版が一時期とんでもない値段で売られていたので、そのタイミングで購入、ゆっくりとお風呂の時間に読んでいる(携帯oriPadをジップロックに入れて読む)。

インターネット概説というべき第一巻は、うやむやに理解していたインターネットのことをうまく理解させてくれた。インターネットガバナンスについてレポートを書く前にこれを読んでいたらどんなに楽だったことか。

インターネットはコンピューター(サーバー)を回線でつないだものであり、それをうまく機能させているのはパケット交換方式で「データを小分けにして最善の努力で送り続ける」仕組みのお蔭だというのがこれで分かった一番大切なこと。インターネットの通信がパケット交換でなく回線交換方式(電話がこれ。だから一緒に2人と電話できない)だったら、現在のような進化は決して訪れなかっただろう。この仕組みを作った人々こそノーベル賞に値するように思った。

若干テクニカルな内容については、実際にその仕事に触れる際に勉強すれば良いと思うので、その時に読み返そう。なお、本書の白眉はヴィント・サーフの慶応大学での講演で、これだけを読めばインターネットの基本精神が平易に理解できるように思う。それをいくつか引用しよう。

インターネットは、パケットをある場所から、別の場所に運ぶことだけを想定して設計されています。A地点からB地点まで、ゼロよりも大きな確率でパケットを運ぶこと。パケットの搬送を100パーセント保証するようには求めず、ゼロよりもいくらか大きな確率で届くことだけを前提とし、2点間の搬送に失敗した場合には、再送をすることにしました。
(略)
オープン性という側面でもうひとつとても重要なのは、ボブ・カーンも私も意図的にあえてTCP/IPプロトコルの設計仕様の特許を申請しなかったことです。私たちは設計を全世界に無償で公開しました。これにはきちんとした理由があります。私たちは非独占的な標準であることが、全てのコンピューターメーカーが相互接続できるようにするうえで最重要だと考えたのです。
(略)
クラウドコンピューティング環境は実質的にドーピングしたタイムシェアリング型の計算環境に過ぎないということです。(略)文字通り数十万台のコンピューターがデータセンターに用意され、ある演算処理のために連携動作をしたかと思うと、終わったら他の処理ができるように資源プールに戻されて待機します。とてもダイナミックなシステムです。
(略)
私はいま、いろいろなアプリケーションが生み出す様々なデータについて、とても心配しています。なぜなら、そのアプリケーションが手に入らなくなってしまったら、保存したデータすべてが無意味になってしまうからです。この問題を、私は「ビット腐れ(bit-rot)」と呼んでいます。(略)この問題を解決しないと、西暦2100年の人々でも、あなたや私が何をして暮らしていたのか、分からなくなってしまうでしょう。私たちが生きていた時代を記録したデジタルファイルが読めないために、私たちのことを一切知ることができなくなってしまいます。

インターネットは固定化された仕組みではなく、まだまだ発展の余地が大いにある。単にお金稼ぎをしたい人がその発展に取り組むようには思えないけれども、それは人類にとってとても意味がある事業だ。最後に紹介されていた、セルゲイ・ブリンの全く新しいインターネットの設計案(というか質問)を読みながら改めてそう思った。


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