現地でものを教えながら感じること

五常の仕事で各国に来ると何らかのトレーニングを提供するようになってもう2年くらいになる。スタイルはとにかく手を動かして覚えてもらうこと。数時間講義をしたら、自分で練習してもらって課題を出すか、試験をするスタイル。スプレッドシートやプレゼン資料の作成スキルや、基本的なフレームワークや論理的思考能力があってこそ、本社社員たちの生産性はあがるし、そうやって既存の仕事をやっつけて残った時間をより重要な課題に充てることもできる。トレーニングをして、大きな課題もしくは試験のテーマを教え、ひたすら練習してもらう。

プレゼンテーションのフォントを統一したり、幅をきちんと均一にしたりすることを教えるために僕の時間を割くのだったらステークホルダーへの背任甚だしいともいえるのだが(先日はコネクタをどうやって使うのかだけで1.5時間を費やし、さすがにしびれた)、これは現場社員とのコミュニケーションとして非常に大切にしている。

まず、教えながら僕たちが何を目指しているのかを伝えることができる。試験があるプレッシャーのため、皆とても真剣かつ素直に話を聞いてくれる。教えるということを通じて、価値観を伝えることができる。

次に、ものを教えるとその人の知的素養や性格があぶり出されて、将来のリーダーが誰なのかが見えてくる。例えば、Excelのモデルの作り方をささっと教えて、それでも3日後の試験に向けて食らいついてこれるのかどうかを観察すると、単にその人の理解力の早さだけでなく知的体力や地道さが明らかになる。学校の先生が生徒のことを結構よく見ているのと同様に、僕も各国の本社社員の能力や性格は結構よく理解できていると思う。


実際にトレーニングを提供しながらいつも関心するのが、現場の皆の学ぼうとする姿勢だ。必死になって試験準備をしてくるし、試験でFailしたら泣き出してしまうような子まで出てくる。当然ながら眠る人なんていない。これは教師冥利に尽きる。世界を実際に前進させるために必要な技能をこうやって貪欲に学び続けている社員たちを見ていると、この国の未来は明るいなと思う。


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