フィンランドの教育改革

オッリペッカ・ヘイノネン―「学力世界一」がもたらすもの (NHK未来への提言) 単行本 – 2007/7、オッリペッカ ヘイノネン (著), 佐藤 学 (著), Olli‐Pekka Heinonen (原著)

今年27冊目書評。少し前にあるメディアでの対談企画でこのオッリペッカ・ヘイノネン氏の話を聞き、関心を持っていたので購入。29歳でフィンランドの文部大臣になった彼がいかにして改革をしたのかについてのHNKのドキュメンタリーを本にしたもの。

彼が文部大臣となった当時、フィンランドは隣国であるソ連の崩壊を受けて経済が大きく落ち込んだ時期。教育改革が奏功し、フィンランドではその後も新しい産業が育ち続けている。ノキアは残念なことになったが、今やネットベンチャーが最も多く育っている国の一つだ。PISAテストでも毎年成績上位だ。

まず若さに目がいくが、実は若かったのは彼だけではなく、当時の首相であるEsko Ahoが就任したのも36歳の頃。日本だと小泉進次郎さんに首相をしてもらうようなものな訳だが、人口が500万人の国だから出来るということだろうか。確かに人口500万人の都道府県で30歳半ばの知事は誕生しうる気がする。

彼らの教育改革は大きくまとめると3つのこと。
・教師の質を高めること。具体的には教師が人気職業をして狭き門にした。収入が特別高いわけでもないのにフィンランドは最も人気の高い職業であり、10%の採用率。教師の要件は修士以上という厳しさ。

・現場に裁量を持たせたこと。これは質の高い教師がいてこそ成り立つことだけど、中央による教育への口出しを減らし、目指す教育の品質のみを伝える。そして現場が創意工夫をしてそれを成し遂げる。

・必要な分野にお金を割くこと。フィンランドの教育関連支出は確かに高いし、学校設備も新しくした。例えば、全ての学校にPCを置くなど。

これは教育改革だけでなく、人間が価値の主要源泉となる全ての組織にも通じる改革の基本なだろう。ただし、人口500万人の国であればドラスティックなことはできるが、日本で同じことをするのは容易ではない。だとしたらどうしたら良いのか、ということに関する答は自分たちで見つける他ない。

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