身体知・経験知産業におけるスパルタ教育

前に飛行機に乗ったときに、Whiplashという映画を見た。アメリカ随一の音楽学校のトップバンドにたまたま入ることになったドラマーの主人公が、そこでスパルタ教育を受けながら成長していく姿を描いた映画。まず演奏がとても上手なので聞いていて楽しいだけでなく、映画の構成も最初から最後までとてもよくできている(一部スポ根すぎる感もあるけど)。

さて、この映画で、とても印象深いシーンがあった。それは、このトップバンドの指揮者をしている音楽学校の教師が、「人間の成長を止める最悪の言葉は”よくできました”だ」という言葉。彼はめったに人を褒めず、ひたすらに生徒をけなし、どやし、脅し、殴り続けながら、生徒を引き上げようとする。

いまの学校教育でこんなことをするべきでないのは分かるし、この教授法が万人向きでないことは論をまたないところだ。だけど一方で、最近主流となっている「褒めて伸ばす」が、すべての分野において通用するのかというと、それはどうなのだろうと思ってしまう。

僕自身の経験で言っても、僕が仕事を早くできるようになったのは、モルスタ時代の上司にしごかれたからであって、彼が「遅い」とか「お前本当にセンスないな」とか「数字が合ってないじゃねえか」とかを言い続けなかったら、ナニクソと思って一生懸命働いて自分の能力を高めなかった気がする。負けず嫌いの性格の僕にとっては、確かに褒められるよりも多少けなされたほうが成長につながったのだろうと思う(ただし、自分が認めない人にけなされてもあまりやる気にならないのだけど)。

人間の学習というのは、その人の既存の限界を拡げるところにあって、それを実現するためには外部からの刺激や追い込みが必要不可欠である場合もある。すべての人にそのモデルが合っているとは思わないけど、負けず嫌いで向上心のある人に対しては、今もスパルタ&適度な思いやりが最高の訓練なのではないだろうか。


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