社会解決ビジネスと非営利事業の境目
社会課題の性質の一つは、「解決したときに生じる便益の外部性が大きい」ということだ。これはたとえば、課題解決をしたときに生じた正のインパクトが100だとしたら、そのうちの多くが自分以外の人によって享受される、ということだ。自社に裨益する率というのは場合によっては50%だったり5%だったりして、いわゆる公益性が高くなればなるほど、自社への裨益率は低くなりがちだ。
一方で、課題解決に取り組むには人々の労力が必要で、それにはコストがかかる。またビジネスであれば資本コストなどもかかるだろう。
なので、社会課題をビジネスで解決できる条件式は次のようになる。
最近社会課題を解決するスタートアップが増えてきたのは、技術進歩や事業モデルの洗練化、事業者の努力などにより、コストに対してもたらすことができるインパクトが大きくなってきたおかげだ。これからも、時間が経つうちに社会課題を解決するスタートアップの数は増えていくだろう。
しかし、非営利法人も運営している人間として強く言いたいのだけれども、何でもかんでもスタートアップが解決できる社会は当分やってこない。先に書いたように、公益性がとても高く、課題解決をした組織に裨益する割合が極めて少ない事業(福祉領域の多くはこれにあたる)は、引き続き政府か非営利組織が税金・寄付を財源に取り組む必要がある。
なので、個人的に願っていることは二つある。
まず、政府がインパクトスタートアップ(五常・アンド・カンパニーも協会の幹事社になっている)を後押しするのはとてもありがたいことだと思うのだけれども、それが理由で、これまで行われてきた非営利組織向けの財源が減ったりしないこと。
次に、起業家側も、それがビジネスとして成立するのか、非営利組織のほうが望ましいのかをよくよく考えること。非営利組織であるべきスタートアップを時々見かけるのだけど、それは起業家・投資家双方にとって不幸なことになる。
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