関係資本のこと

人の相談に乗りながら話したことをメモしておく。

スタートアップが潰れたところで社会は大して困らない。社会の現状を維持するのに必要な機能は、既存の企業や行政組織や非営利組織などが担っているからだ。

それなのにまだ社会に何も還元できていないフェーズにあるスタートアップが生きていけるのは、多くの人に手伝ってもらっているからだ(もちろん本人たちの頑張りもあるけれども)。出資してもらったり、会社に入ってもらったり、もしくは色んな出会いを紹介してもらったりと。そうやって、起業家は、特に初期においては人にたくさんの借りをつくることになる。

こういった貸し借りは、会社および個人の帳簿には載らないけれども、僕たちの人間関係台帳(そんなものは物理的には存在していないけれども)には間違いなく存在している。これを仮に関係資本とよぶことにする。関係資本がゼロになる状態というのは、誰も助けてくれない状態になること。

関係資本に無自覚な人が会社を経営していると、今みたいにマーケットが大荒れになっているときや、自社が窮地に追い込まれたときにとても痛い目にあう。誰にも助けてもらえないからだ。ゲーテも「忘恩はつねに一種の弱点である。わたしは有意な人たちが恩知らずであった例を知らない」と言っていたが、それは至言だなと思う。

この関係資本、積み上げるのにはとても時間がかかるのに、一瞬でなくなってしまう。創業初期は常にゼロに近づきがちだ。それをゼロにしない方法はいくつかあると思っている。

ひとつは、お礼をきちんとすること。これすらできず、誰かに助けてもらっていることを当たり前と思っている人が多いかもしれない。

つぎに、コミュニケーションをこまめにとること。助けてくれた人は「そういえば彼は最近どうしているかな」ということをなんだかんだ気にしている。こまめに状況を伝えることで、関係資本はまた戻っていく。

最後に、他人を助けること。自分を助けてくれた人に直接恩返しがすぐにできないとしても、周りに大変そうな人がいて、自分に手伝えることがあるのなら手伝うこと。手伝われた当人から何かが返ってこないかもしれないけれども、その人の善い行いを見ている人は必ずどこかにいる。


当たり前のことすぎて書くのをためらうくらいなのだけれども、どうやら上記が当たり前でない人もいるみたいなので、記録しておく次第だ。

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