スタートアップの循環参照の解き方

エクセルの本を書いたときに、とても強い思いを込めて書いたセクションがある。それは循環参照の解き方。財務モデルにおいて生じる循環参照のほぼ100%(今のところ例外に出くわしたことはない)は、連立方程式を立てて解を求めることで無くすことができる。そうやって反復計算による収束を避けることで、財務モデルがとても軽くなる。

実際の世界においても同じようなことが言えるのかをすこし考えていた。

特にスタートアップは循環参照的な問題に苦しむことが多い。具体的には、「資金があれば事業規模を大きくできるが、今の事業規模は大きくないので資金がつかず、よって事業規模が大きくできない」
とか
「十分な財務体力があれば良い人が採用できて、良い人が採用できれば会社の生産性が改善しさらに財務余力が増すが、いまは財務余力がないので良い人を採用できない」
というようなものだ。

こういう悪循環的な課題を解決する方法も、やっぱり二通りあるのだと最近は思うようになった。

一つめの方法は、課題をもうすこし要素分解して、連立方程式を解くのと同じような解を見いだせるか考えること。先に例をあげた「事業規模が小さいと資金調達ができない」というのはとても粗い課題認識であって、資金調達ができない理由はもう少し分解して考えることができるはずだ。調達のフェーズ毎に異なるが、チームの質や、プロダクトのエコノミクス、資金投下後の売上増大の蓋然性の高さ、など様々な理由があるはずで、それらは資金を得る前に解決できたりする。

(似たようなものとして、チームが大きくないとor広告宣伝費を使わないと売上が伸びないというのも恐らく誤りだ。チームや広告宣伝費が大きくないと売上が立たない事業は、事業設計に何かしらの問題がある)

とにかく考えること。


二つめの方法は、エクセルの反復計算と同じく、社長をはじめとした全員が「とにかく頑張る」こと。これは馬鹿にされるかもしれないが、例えばイーロン・マスクとかを見ていると、実際にこの頑張りに頼っている側面がかなりあるように思う。

事業や課題の性質によっては、考えても完璧な答えを見いだせない場合がある。現実世界は財務モデルほどに整然としていないので、循環参照を完全に解ききれない。

そういうときは、社長が頑張るしかない。ひたすら懸命に働く。そうすれば、周りにも同じように頑張ってくれる人がいて、なんだかんだ活路は見つかることがほとんどだ。僕と同様に、アントニオ猪木さんの「元気があればなんでもできる」を座右の銘にしている起業家が多いのはそういうことなんだと思う。



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