自分より経験値が高い人々に価値ある提案をする方法

PE時代にはよく色んな会社の事業方針に提案をしていたのだけど、たいてい撃沈してきた。そして、実際会社を経営する段になると逆に色んな提案を受けるわけだけど、「なんか違うんだよな」と思う提案も多い。また、今も僕は各国に行けば各国の経営陣に何らかの提案をし続けている。

そういう経験を通じて、その実務にずっと携わってきた経営者や実務家らに刺さる提案をするには、いくつかしか方法がないと思うようになった。それについて書いてみる。 

そもそも、良い提案とはなにか。良い提案は、提案を受けた人の蒙を啓くものだ。言い換えると、その提案を受ける人たちがもともと知っておらず、かつ価値がある情報を提供するということだ。

だから、提案者は、相手がアクセスできない情報を持ってくる必要がある。そういった情報には次のようなものがある。
A. 専門性の壁によって得られない情報
B. ネットワークの壁によって得られない情報
C. 言語の壁によって得られない情報
D. 立場の壁によって得られない情報

Aは、例えばもともとインテリジェンスの実務家だった人が、危機対応についてアドバイスをする、といった類のもの。何らかの専門家が、自分の専門性の見地から提案をするというものだ。

Bは関係性がないと得られない情報。若干MECEでなくて恐縮なのだけど、AとBは近いところにある。専門家は往々にして専門家コミュニティと関わりを持っており、そこにしか出回っていない情報も多い。

Cは特に説明は不要だと思う。日本の場合は英語で調べ物をしない人も多いので、日本語以外の言語でしか書かれていない情報すべてが対象となる。日本は相応に人口があるがゆえに、翻訳市場が発達しているわけだけど、それには一長一短があるように思う。

Dは例えば、社長に対して直言をしにくい社員の本当の気持ちなどがそれに該当する。

 

僕が何らかの実務者の間に混じって、何か意味のあることを言わないといけない場合には、上記のA〜Dのどれかから探してくる。僕にとってのAは財務や構造化思考だし、Bは色んな所属コミュニティから引っ張ってくる情報、Cは英語と朝鮮語で手に入る情報だ。さすがにもう仕事人を15年以上しているので、大抵のケースではA〜Cで何らかの比較優位を見出していくことができる。

A〜Cでも大したことができない場合は、Dで頑張ることになる。例えば、マイクロファイナンスの現地法人の社長は、もう地元では顔が知られてしまっているがゆえに、顧客の本当の声を聞くのが極めて難しい。であれば、顔を知られていない僕がフィールドで一定量のインタビューをしてくれば、いい提案をつくることができる。他にも、児童相談所に提案をするときも、僕は利害関係が無いからこそ関係者の声をよく聞くことができた。

Dは大学生であってもできるだけでなく、往々にして価値が高い提案になりやすい。ググってまとめた情報は往々にしてゴミになりやすいのだけど、足を使って集めたリアルな情報には、大抵の人が敬意を払う。

どうしても就職したい会社があるのであれば、例えば面接で、「御社の株主30人に話を聞いてみたのですが」とか「御社を退職された方30人に話を聞いてみたのですが」という感じの提案をしたらめちゃくちゃ刺さるんじゃないかな。仮に面接で受からなかったとしても、すごく感謝されると思う。

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