寄付で運営されているNPOの役割
最近インタビューなどに答えながらこのテーマについて話すことが増えたので、いま自分が考えていることをまとめておこうと思う。事業収入でやっているNPOではなく、寄付がメインとなっているNPOの役割についてです。
収入の大部分が寄付であるNPOの社会的な役割は、政府のための研究開発ということに尽きると思う。
寄付でないと回らない物事は、基本的に政府が税金で行うべき仕事であると僕は信じている。事業ベースでは回らないものがあるから、僕たちは税金を払っている。社会的養護などはこの典型で、子どもの養育を事業ベースで成立するように作るなんてのは基本的にありえない。
でも政府は完全ではないので、税金を正しい方面や正しい方法で使えない場合がある。なぜそうなるかというと、規模が大きすぎて実験的に何かをやってみるということに向いておらず、どうしても物事の進め方が前例踏襲になってしまい、社会情勢の変化に対応できない場合があるからだ。それは悪いことでもなんでもなく、組織の性質がそうだというだけのことだ。
寄付で事業を回しているNPOは、その事業の意義を理解してくれる人々の支援を受けて、政府が本来的にやるべき事業をとりあえずやってみる、その問題についての社会的認知を高める、ということを行うのが役割だ。事業モデルをつくる、社会的な意識喚起をするといったことを通じて、税金が正しい分野に正しく使われることを促進するわけだ。見方を変えると、寄付で運営されているNPOは政府の研究開発機関に他ならない。
だから、取り組んでいる事業が社会的に認知され、物事が正しい方向に進み始めるのが見えてきたら、潔くその分野からは少しずつ後ずさりしていって、次の社会課題を発見してそれに取り組むべきなのだと思う。そういった社会課題が見つけられないのであれば解散すればよい。政権運営能力がないのに革命に貢献しただけの理由で要職に就くのが醜悪なことのように、課題が解決されたのにそこに「第一人者」として居座るのは微妙だと思う。
こんなことを書くと、「いや、課題が完全に解決されていないのだから、この分野から離れるわけにはいかない」と言う人がいるかもしれない。確かにそうかもしれないけど、僕はいつも自分の命の一部であり最も大切な資産である自分の時間は、可能な限り投下時間に対して社会が変化する割合の高いものに費やしたいと思っている。
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