スタートアップの創業社長の給料について(加筆修正して再掲)

先日でた日経新聞の記事は、10年来の知り合いの記者さんが書いてくれたものだ。「悪いようにはしないから!」と言われ、新聞記事でもあるので当然こちらが事前に見ることもなく記事になったのだけど、自分の収入と生活実態が明るみになってしまった。

そこで、2017年8月20日に書いた自分の報酬についての考え方に若干加筆修正したものをアップする次第です。ちなみに、この記事を書いてた時点では、今より更に給与が低かったです。

なお、Twitterでも書いたけど、現時点における弊社のメンバーの報酬の中央値は月額7000ドル以上で、それに僅かながらボーナスとSOもついています。あの記事を見て応募をためらう人がいるのではと危惧しているので再度書く次第です。

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(ここから前回の記事のほぼコピペ)

会社の株を沢山持っている創業社長兼起業家の給与について思うことを書いておきたい。あくまでも、創業社長の話です。

最近ようやく起業と独立の違いが自分なりに見えてきたのだけど、僕自身にとっての起業家とは「事業を通じて世界のあり方を変えたい人たち」のことだ。これが、独立した人と起業家を分けている。世界を変えることに成功するとお金はついてくるけど、それは多くの起業家にとっては世界を更に変えるための軍資金みたいなものでしかない。僕も、民間の世界銀行を作ったあとも、自分の願う社会づくり向けて、自分の持っているものを全ベットし続けたいと思っている。

2008年はもう10年前だけどPeter Thielはこんなことを言った。

The lower the CEO salary, the more likely it is to succeed.
The CEO’s salary sets a cap for everyone else. If it is set at a high level, you end up burning a whole lot more money. It aligns his interest with the equity holders. But [beyond that], it goes to whether the mission of the company is to build something new or just collect paychecks.
(訳)
CEOの給与が低いほど(スタートアップは)成功しやすい。
CEOの給与は他のメンバーの給与に対してある種のキャップを設定する。これがもし高いレベルで設定されると多くのお金が費やされてしまう。また低い給与のCEOはその利害関係を株主と一致させやすい。もっというと、これは会社のミッションが何か新しいものを作り出すのか給与のためなのかの問題でもあるんだ。


そして実際問題として、シリコンバレーのスタートアップを中心にCEOの給与はだいたい預金取崩をせざるを得ない水準で設定されていて、ある程度調達が完了したあともそのままだ(ソース)。

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Peter Thielと理屈は違うのだけど、僕も創業社長の給与はそんなに高くないほうがいいのじゃないかと思っている。本当に世界を変えるのを第一の目的として仕事をしている創業者だったら、自分の生活水準が会社員時代より大幅に落ちても気にならないからだ(家族がいる人はその最低水準が高かったりするだろう)。

そういった意味で、高すぎない給与水準は、創業社長に対して自分の事業に対する確信とか喜びの存在があるか否かを問い続けてくれる。違う側面からいえば、給与は投資家にとっては会社の将来に対するCEOの確信度を示す指標になると僕は思っている。別にCEO給与が高い=起業家が成功を信じていない、と言っている訳ではないけど、僕が投資家だったらCEOが給与低くても楽しくやっている会社には優先的に投資をすると思う。

誰かのブログで給料が低すぎることによる「創業者の心が折れるリスク」が話されていたけど、そんなことで心が折れるような人間が世界を変えられるのかというと、まあ無理だと思う。そりゃ生活できない水準はやめたほうがいいけどさ。

また、「将来の資本政策のために給与を高くしておく」、みたいな言説もあるけど、すでに数億円調達した時点で会社のバリュエーションは数十億円とかになっているわけで、給料が数百万円変わってなんとかなる状態ではなくなっている。よってこれもあまり正しくないと思っている。どうしてもトランザクション実施上お金が必要ならば(例えば辞めた創業メンバーから簿価で株を買い戻すとか)、他の株主の同意を得て自分の保有している一部株式を譲渡してその取引を実施すればいい(もちろん現金を持っている場合に較べて柔軟性は下がるけど)。

更に、弊社の仕事の場合、僕を含めた全てのグループ従業員の給与は、厳しい暑さの中で必死に働いてお金を稼いでいるお客さんたちの稼ぎの一部を利息でもらうことで成り立っている。さらに僕たちは、お客さんの生活改善において一番大切なのは預金だと主張していて、一日の稼ぎが数百円にしかならない人たちにお金を貯めることの大切さを説いている。僕はそんな会社の創業社長であることをそこそこに自覚して生活している。


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