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他人を注意するとき

先日、マスクをするよう注意した男性が反撃され半身不随になるという事件がありました。その前にも京王線で注意をした男性が切りつけられるという事件が。こういう事件に対してのコメントは大体『犯人に厳罰を』とか『システムの不備』など『事件を決して無駄にしない』方向での話になりますが、私は別の角度から、この『他人に注意する危険』について考えたいと思います。

力が強くても警戒する


私は長年、今も格闘技をやっており、以前は薙刀という武道をやっていました。


体格もよく、暴力を振るわれるターゲットになりにくい見かけをしていますし、実際変な人が近づいてきたところで心理的な恐怖が一般女性よりも小さい。まず、相手の胸板が薄い時点で恐怖の対象にならない、というのがあります。そりゃ、毎週屈強な若者とスパーしていればそうなります。


薙刀も、形というより防具で戦う方を主にやってきましたから、おそらく長い棒があればかなり有利になるでしょう。でも、これでも思うのは『刃物を持っている相手には勝てない』ということ。首を絞めたり、関節を曲げるのは得意ですがそれは相手に接近できた時に限りますし、現場に都合よく長い棒がある確率の方が低いのです。
力が強いことを生かしたいものの、自分から向かっていって敵う相手かどうかは見極める必要があるんです。日頃の練習では攻撃力だけではなく防御力もついていますから、自分の身の危険を察知する力も育っていると思うのです。

言葉だけでは無防備


無礼な人、間違っていると思われる人に注意できるというのは勇敢なことです。


知らない人に対してなら尚更、勇気がある行動と言えます。ただ、やはりそれは相手を見た方がいいと思います。言葉が通じない相手もいます。高齢の男性だったら、若者に注意したところで力で反撃される可能性があることを頭に入れておかなければなりません。そして、力で反撃された時、自分はそのステージでは敵わないかもしれないと予測した方がいいです。自分が正論だろうが異論だろうが、相手が力を使ってきたら敵わないと思った方がいいんです。


正しい、正しくないに関わらず、自分より強いか弱いか見た方がいい。私は自分の力を発揮する時は、危害を加えられた時だと考えています。もしくは、実際に危害を加えているところを見た時。人を助ける時です。そういう危機的状況だったら、おそらく自分の命も危ないと思うのでせめて相討ちをしたいですね。やられっぱなしは嫌なので。


事件を振り返ってみるとこの『マスクをしろ』という注意は、しなくてもよかったのでは?と思います。してない人は普通にいますし、適宜外したり、今こんなに感染が落ち着いている状況でわざわざ取り締まる必要はなかったと思うんです。また、マスクしてない人が危険だと思うなら単純に離れたらいい。そこから離れる、逃げる、スルーするという選択肢もあると思うんです。


そこをあえて言葉で正そうとする。これは言葉が通じる相手にしか通じない技です。市役所などへ行くと役所の方が怒号を受けているシーンに出くわすことがあります。これは、相手が反撃してこないことを無意識に自覚しているからできること。通常、人に対して怒号浴びせたら反撃されるのは目に見えています。


その反撃を受けることを想定しているなら注意しても問題ないかと思います。


現に、もともと顔が怖かったりガタイが良ければ口頭で注意しても反撃されない可能性が高いわけです。そもそも武器を持って相手に立ち向かっていることになりますから大丈夫なんですけど、そうでもなければあまりに無防備だと思います。ただ、ここで勘違いしてはいけないのが『だから弱そうな相手に注意をしよう』ということではありません。弱そうな相手を選んで攻撃しようものなら、私のようにイザという時のために力を溜めている強い者が近くにいる可能性がありますから。そこから反撃される可能性があることを忘れないように。

逃げることも必要

こういう危険予測的な話は、動物の世界がお手本になります。

動物はあえて無意味な戦いはしません。どんなに強い動物でも自分より弱い生き物をわざわざ攻撃し続けていたらいずれ自分たちの食料がなくなってしまいます。アフリカのサバンナでは、お腹いっぱいのヒョウの近くで鹿が普通に歩いていたりして、必要がなければ攻撃しないのです。しかも動物の世界では体が小さいと不利ではありますが、そういうのに限って毒を持っていたり、数で勝負してくるなど攻撃する準備もできているんですね。


他人に注意できるほどの勇気があったらぜひ防御力もあげていただきたい。そんなところで大怪我して人生が変わってしまうなんて悔しい話です。注意する価値のあることなのか?価値のある相手か?見極める必要があります。結局、その後に犯人に厳罰がくだろうが、システムが構築されて回避できる可能性が高くなっても、当人は受けた傷がなくなるわけではないですからね。銃が身近にあるアメリカでは、まず『相手を不快な気持ちにさせない』ことが大切だそうです。そりゃそうです、みんな一撃で相手を殺せてしまう武器を持っているのですから。



物騒な事件が多いです。ぜひ自分の、家族の、友人の身を一番に考えて、無駄な戦いはしないに限る、を頭の片隅に入れておきたいものです。

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