コント「入れ替わり」台本



コント「入れ替わり」



衣装:私服



二人板付き

明転

(二人倒れている)

関町「いてててて…。一体何が起きたんだ…?…えーと確か…、俺がバイトに遅刻しそうで走ってて…、そしたら前から関町が走ってきて、避けきれずに…、あぁそうだ…、そのままぶつかったんだ…。……ん!?何で俺が倒れているんだ!?ん!?何だこれ!?なんで俺眼鏡掛けてんだよ!?おいおいちょっと待て…!身体が関町になっちまってる!…これってまさか…、ぶつかった衝撃で二人が…。」
田所「いつつつつ…。」
関町「おい…、お前、関町だよな!?落ち着いて聞け!俺は田所だ!」
田所「え…?」
関町「どうやらぶつかった衝撃で入れ替わったらしい。」
田所「……いや…、俺も田所だけど…。」
関町「………え…?」
田所「いや、だから、俺田所だって。」
関町「…え。こんなパターンあんの…?」
田所「え?お前関町でしょ?」
関町「いや、違うんだよ。ぶつかって田所になったんだけど…。え、倍に増える事あんの?」
田所「何訳わかんねぇ事言ってんだよ。お前頭強く打って混乱してんじゃねぇの?」
関町「お前今日ノーパンだろ?」
田所「何てこった。俺が倍になっちまったって事か。」
関町「あぁそうなんだ。」
田所「状況を整理しよう。ぶつかって、俺は俺のままで…。」
関町「で、なぜか倍になって俺は関町の身体に入って…。関町どこ行ったんだ!!!」
田所「そうだ!関町どこ行ったんだよ!!え、うそ!俺が強すぎてぶつかった時にギュッと押し出された訳!?」
関町「この辺漂ってるんじゃねぇの!?」
田所「マジかよ、さすがにヤバいだろそれは!俺が二人いるのもイヤだしよ!…なぁ、こういう時ってどうやって戻すもんなの?」
関町「映画とかドラマとかじゃ、もう一回ぶつかって、そしたら元に戻るんだよ。」
田所「まぁ確かにそれしか知らねぇわな…。とりあえず試してみるしかねぇ!」
関町「そうだな!」
田所「よし、いくぞ!」

(二人ぶつかる)

田所「いてて…。俺は田所だ!お前は!?」
関町「俺も田所だ。」
田所「ん、まぁそうなるわな。ちなみに俺、さっきそっちにいた田所だからな。」
関町「あぁ、俺、そっちにいた田所だから。」
田所「ここが入れ替わっただけだな…。」
関町「…くそ、どうすりゃいんだ…。」
田所「とりあえず、バイト行ってくるわ…。」
関町「えー、うそうそうそ。え、何で行っちゃうの?」
田所「いや、俺もう戻ったから…。」
関町「いや、俺だってさっきそれ言いたかったよ、ホントは。でも我慢したんだからさ。」
田所「まぁ、そうか。」
関町「そういうとこあるよな、俺って…。」
田所「とにかく何とかしよう!多分今二人とも俺が満タンに入っちゃってるから関町も戻って来れないんだ!」
関町「なるほど。」
田所「だから、一旦俺を全部こっちに入れて、そっちを空っぽにしよう!」
関町「じゃあ俺だけぶつかればいいんだな!」
田所「けど、今度は慎重にいこう!少しずつこっちに移して!」
関町「よし!」

(関町、コツコツとぶつけていく)

田所「あ、いいよ!腕入ってきた!」
関町「よし、逆の腕も入れよう!」
田所「まずは上半身からな!頭は最後で!」
関町「オッケ!入った!下半身いくぞ!」
田所「お、おう!」
関町「よし、いいぞ、入りそう!」
田所「あんま、そういう事言わないで…。」
関町「よし、入ってきたぞ!」
田所「あんま…、外だから…。」
関町「どうだ!入ったか!?」
田所「うるせぇな!!(田所タックル。田所抜け殻の様に座り込む)」
関町「ったく!気持ち悪いんだよ!…あれ!?あ、こっちに全部入っちゃったよ!あ、でも、これで俺がぶつかれば…!」

(関町、田所にぶつかる)

関町「オラァ!」

(二人、座り込む)

田所「うはぁ!!!あぶねぇ!この辺まで飛んでっちゃってたよ!でもこれで上手く行ったぞ!」
関町「…うぅ……。」
田所「良かった!関町!お前、俺たちがぶつかった衝撃でこの辺飛んじゃってたんだぞ!!」
関町「(中国語)。」
田所「誰だテメェー!!!」

暗転


[解説]

人前でコントの作り方を教えるという仕事がごくたまにありまして、そういった時に『コント作りのコツ』を聞かれる事がよくあります。

僕は決まって「とにかく毎日ダラダラ漫画読んだり映画観たりしてればいいですよ。」と答えるのですが、大抵の場合、講義を和ませる為のボケだと思われて少しスベった感じになります。

毎回慌てて言葉を足すわけですが、つまりは「誰もが一度は観た事がある王道のシーンを沢山ストックしておく」という意味。

その王道のシーンの展開を少しズラすだけで意外と簡単にコントは作れる事が多いというのが僕の考えです。(勿論違うパターンの作り方も沢山あります)

このコントも、誰もが何かしらで観た事があるシーンから始まり、展開を無理矢理ひん曲げてみる事で設定は完成。

あとは「じゃあ、もしそういう展開になったら話は当然こう進むよね」と想像し、オチまで組み立て、最後に演者の愛嬌を足して出来上がり、という感じです。

ちなみにこのネタを作った時はまだ「君の名は」が上映されるだいぶ前だったので、入れ替わりの王道が「転校生」のように物理的な衝撃によるイメージでした。

今作るとなったらまた違ったシチュエーションになるのかも知れません。

観る側にとって新たな王道が世に生まれる度に、コントにも新たなアイデアが生まれていくと思うので、エンタメ作品には今後とも頑張って頂きたいものです。








ご無理はなさらず。 いただけるのであれば有難く創作意欲と飯の種にさせて頂きます。