彼女たちのコズミック・イラ Phase03:受精卵の提供

中々にセンシティブな内容ですが、たぶん全年齢でも大丈夫な内容だと思います。原作に比べればこのくらいどうということは(ry

ギル少年だけでなくアウラについても人物像が崩れていますが、そもそも前提となる原作キャラがとんでもない人物像なので、まだ良識のあるキャラとしています。

次回は計画の成果となる2人の赤子が登場します。


第2世代以降のコーディネイターの出生率低下。その問題を解決するべく、黄道連盟の創設者の一人、パトリック・ザラはメンデルで遺伝子工学を研究していたアウラ・マハ・ハイバルに対して、解決方法の立案を依頼していた。

アウラは受精卵に対して、遺伝子段階で調整を施して産まれてくる子供たちの相性を事前に確定させる方法を計画。秘密裏に計画への参加者を募り、自らもまた遺伝子、及び卵子の提供者として名を連ねていた。

「博士、今まで付き合ってきてくれて本当に感謝しているわ。だから、もう少しだけ……私に付き合ってくれないかしら。」
「アウラ……あなた。」

そして、プロジェクトの責任者であり参加者の一人であるアウラは自らの希望として、長い付き合いの友人であったクライン博士の参加を求めるのであった。

「確かに私は、研究費用をより多く確保するためにシーゲルへ近付いたわ。ただ、彼のことは本当に夫だと思ってて……」
「それなら大丈夫よ。あなたから提供される卵子はもちろん、あなたの夫との組み合わせにするから。」
「え、ええ……だったら、いいんだけど。」

不貞なことになるではないかと危惧したクライン博士であったが、当然アウラは博士がそうした懸念を示すことがないよう配慮をしていた。

「本当にいいの?これは私の勝手な……本当に自分勝手なお願いなのに。」
「アウラの頼みだったら、そんな無碍に断ることは出来ないわよ。私がどれだけ、傍であなたの苦労を見ていたと思っているの?」
「博士っ……!」

どのような労いの言葉よりも、クライン博士から掛けられるその言葉がアウラの心を満たしていた。そして博士はアウラに対して、さらに言葉を続ける。

「シーゲルには私が説明をするわ。きっと、彼もダメだとは言わないはず。」
「ええ、それは助かるわ。説得の手間が省けるから。」
「それからもう一つ。これは私からアウラへのお願いなんだけど、聞いてくれるかな。」
「お願い?何をすればいいの?」

クライン博士からアウラに切り出された一つの願い。それは、博士のささやかな望みであり、彼女がアウラにしか願うことが出来ない望みなのであった。

アウラの計画は遺伝子改造を施した受精卵を人工子宮で育成し、第2世代コーディネイター以降に見られる遺伝子の相性不一致、それに伴い出生率の低下を予防することを目的としていた。

原則人工子宮での出生が要求される計画。しかし、クライン博士の要求はその原則を覆すものであった。

「あなた自身が産むって……それは……!」
「お願いアウラ。私の子は、私が産みたいの。研究の実験体にしていて、都合が良いなんてことは分かってる。でも……せめて出産だけは私が子供のためにしてあげたいの……!」

受精卵を遺伝子段階で改造するため、母体の不確実性は留意する点から除外することも可能であった。しかし、自らの計画に特例を認めるべきかとアウラは迷う。そして何よりも、それ以上に

「本当にいいのかしら?産まれてくる子供は、確かにあなた母親よ。でも、それは産みの親であり、遺伝子上の繋がりだけ。この子たちはみんな……私たちの未来を作る礎となる運命。本当に、あなたはそれでも……」

アウラは危惧していた。クライン博士が生みの親となることを。その不確実性はいずれ計画に支障を来すかもしれない。しかし、それでもアウラは博士が参加をしてくれるために、その懸念に目を瞑ろうとしていた。

「アウラ、私の産んだ子供が計画に参加することは、あなたが望んでいることでしょ。私のことよりも、あなたにはもっと大切なことがある。違うの?」
「……っ!!」

博士の言葉を前に、アウラはそれ以上問うことが出来なくなった。自らの心の奥底を覗かれ、心臓を掴まれるような感覚。まるで心を通わせ、裸で抱き合うような心地よさ。真っ直ぐと見つめてくる博士から、顔を背けたくなる思いを抑えながら彼女は言葉を返す。

「そう……そうよね。私は……いいえ、私たちは人類の、世界の未来のために力を尽くさなきゃいけない。ありがとう―――」

そしてアウラは、感謝を述べてから彼女の名を呼ぶ。一人の研究者ではなく一人の友人として。アウラの覚悟は決して揺るがないものとなるのであった。

「あ、そういえばアウラ。一つ気になったことがあるんだけど。」
「ん?どうかしたの?」

互いに感傷に浸っていた最中、クライン博士は思い出したようにアウラに対して口を開く。

「あなたも計画には参加するということだけど、あなたのパートナー欄にもまだ名前が記載されていなかったわ。」
「……あ。」

母体であっても人工子宮であっても計画には受精卵、卵子だけではなく男性の遺伝子ある精子も必要となっていた。しかし、アウラにはクライン博士のようにパートナーはいないため、博士はそれを気掛かりとしていた。

「もしかして……全然決めてなかった?」
「い、いやっ……!そういうわけじゃないんだけ……ど。その、中々言い出しづらくて……」

柄にもなく博士の前でもじもじとした態度となってしまうアウラ。その様子を見た博士は、大体の察しがついてしまうのであった。

「というわけなんだ。それで、その……つまり、ギルにも協力をしてほしいと思ってて。」
「僕にも協力?いったいどんな風に?」

アウラは自らの計画を全てギルへと打ち明け、協力を求める。若年ながらも遺伝子工学の知識を蓄えている彼は、理想的な参加者なのであった。

「どんな風にって……そんなの、言わなくても分かるでしょ?」
「いや、協力と言われても……具体的な方法を言われないと。」

想像以上の鈍感さを見せるギルに、アウラの鬱憤は溜まる一方となる。そして痺れ切らした彼女はついに、ギルに対してはっきりと告げてしまう。

「だからっ、受精卵を作るための献体を提供してほしいといっているんだ!ギルっ、お前のその……せ、精子を……」
「えっ……せ、精子……あうぅっ!?」

アウラの言葉を聞き、僅かに遅れて理解したギルは咄嗟に自ら股間を抑えてしまう。そして、そのまま恥ずかしそうにアウラに対して問いかける。

「そ、それってつまり……僕のアレを……アウラの卵子と一緒に……?」
「そういうことになるわね。じゃないと、受精卵は出来ないから。」
「それってつまり、僕とアウラが……こ、子供を作るってことじゃ……」
「ち、違うっ!いや、違わないが違う!あくまでもこれは計画の一環なんだから!じ、実際にお前と私が子供を作るというわけでは……うぅぅぅぅ……!」

人工子宮については説明をしていたため、実際に『子を成す行為』はしないと説明をしておいたアウラ。しかし、それでもギルにとってはもちろん、彼にそうした表現をされたアウラはギル以上に顔を赤くしているのであった。

「一応聞いておくけど……ギル、お前はどうやって子供出来るのかは知っているんでしょ?」
「う、うん……い、一応は。」
「そ、それじゃあ……せ、精子の出し方……は?」
「も、もちろん知っている!アウラこそ……そういうの本当に知ってるの?」

逆に性知識を問いかけてくるギルに、アウラは顔を真っ赤にして言い返す。

「ば、バカにするな!私のことを何歳だと思っているんだ!?お前よりも一回り以上は年上なんだぞ!」

実年齢では一回り以上は離れていたものの、精神年齢という面では大差が見受けられないアウラとギル。メンデルからほとんど外に出たことがなかったという点は、両者の共通点でもあった。

「ギル、お前は私とそう言う関係になりたいと思ったことはあるのか?」
「いや、それはない。」
「お前っ……!くぅぅっ……全く期待はしてなかったが、そんな返し方をされるとそれはそれで何か悔しい……!」

自らがギルから性的な対象として見られていなかったことに、どういうわけか屈辱感を覚えるアウラ。それでも彼女は気を取り直して、彼に対して話しを続ける。

「まぁいい。近いうちにお前にも献体を提出してもらう。精……献体の排出方法はお前に任せる。」
「アウラ……そのことなんだけど。僕、その……」
「ん?どうしたんだギル?」

互いに冷静さを取り戻したはずのアウラとギル。しかしギルは再びアウラに対して何かを切り出そうとしていた。

「その……普段はいつも……は、博士のことを考えながら……」
「………」

ジト目となってギルを見つめるアウラ。そして彼の告白の後、2人の間には何とも言えない空気が流れるのであった。

「まぁ……その、あれね。若さゆえの過ちというやつかしら。」

アウラは呆れつつもギルの行いを認めていた。そして、彼の協力へ謝意を示すためにさらなる誠意を見せる

「分かった。お前の献体排出作業がより円滑に進められるように、こちらで可能な限りの資料を提供する。」
「アウラ……!」
「勘違いをしないでギル。これはあくまでも計画のため。そう……博士に突き付けられた条件に比べれば、安すぎるというものよ。」

最高の『資料』を提供するとギルに約束するアウラ。こうして、彼女の計画は着実に進んでいこうとしていた。

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