塔山忠臣のシンセサイザー講座《第1回》


強さとはなんだろう。

私たち男の子にとって単純に分かりやすいもので腕力というものがある。殴ったり蹴ったりすることで相手に勝つとか負けるとかの類のモノ。

これはある種わかりやすい、周りの目撃者や傍観者たちを味方や証人にする事が出来る。
ただごめんなさい、コレは私が今ここで
1番興味のない強さである。(女子って学生時代、男が知らないとこで殴り合いとかの喧嘩もしてるのかな???)

私は高校生になるまで身長低くてガリガリで性格が割と明るめなのでちょっかいこそ、かけられはしなかったが喧嘩は弱いほうだったと思う。楽しく振る舞ったり仲良くすることでそのへんは回避出来ていたのかも知れない。

ただ今までに何度か(男なら誰しも経験はあるだろう)印象的な絡まれ事件がある。中学の頃、私が絶賛ちびっこガリガリだった頃である。同じ年の不良グループに囲まれて『おい!なんかオモロいことやるらしいなぁ〜、今すぐやってみろ!!やらな全員でシバくぞ!!!』と詰め寄られた。不良独特のだんだん自分の言ってる事の語気で、自分自身に火がついてしまいマジの怒りになっていく手法で、いきなり。(酔っ払いにも多いパターン)

聞くにどうも、私の友人と同じクラスにいる不良の1人が私の友人を脅しからかって何か芸をやらした所それがなかなかに面白く、友人をさらに脅して『もっとやれ!』と追求したところ。そのネタの生みの親が私であること、彼ならもっと面白いコトが出来るだろうと、言わば告げ口したというのである。

それが不良グループ全体に知れ渡り、今の私への理不尽な絡まれにつながっているらしい。私は幼少の頃から何かを作り出したいというタイプのお子さんで、遊ぶモノもお金も無かったので常に何か自分が楽しめることを考えようとしていた。ただそのせいで『アレやって〜』とか『見せて〜!教えて〜!』的な要望は珍しくは無かったのだが、それはあくまでも “ 友達 ” からのお願いであり、

自分のテンションも決して媚びなどから来るものではなく〝コイツらを笑わせてやろう〟という誇り高きパフォーマーとしての血が騒いだことから来る行動であった。私の友人も不良に絡まれ必死だったのであろう、気持ちは分かる。今、この時。不良から自分が受けている恐怖を上手く回避するには???そうだ、このネタを伝授してくれた私のことに話をふれば良い。しかも教えてもらったことは本当だし。不良グループに絡まれながら私には友人のすまないという手を合わせた顔が浮かび上がった(実際その日の放課後には謝られた私、笑ってゆるす)

その間にも不良グループはどんどん詰めてくる!
5、6人で周りを囲みだんだんマジなテンションになってお互いがお互い、脅すという空気感に飲み込まれテンションの抑え方を失っている。今にも何発か脅しで私を殴らんとする勢い。とても良くない空気。
不良グループの遠巻きには普通の人々(学生)が傍観していて、自分は巻き込まれたくはないが、興味津々な視線で私が殴られるのか、どんなネタを披露するのかだけに注目が集まっていた。

結果、、、、、

私は、
やらなかった。

〝 断固として〟

怒号をあげて本意気で『シバくぞ!!!』と脅迫する連中に。ちびっこガリガリの私は、
『ごめん申し訳ないけど絶対に出来ないから悪いけどシバいてくれる???』と真剣に返答した。

こちらも命懸けだ、本気の真剣な表情で。

しばらくの間、不良グループの『お前マジしばくぞ!殺すぞ!!!やれや!』と

私の『ごめんどうしても出来へんねん、シバいて!』と訳の分からない怒号が飛び交った。

誰が支配してるのか訳の分からない不気味な空間だっただろう。たぶん普通に作戦でやってたら私はシバかれてたと思う。こちらは本気で覚悟を決めていた。媚びて見世物になり笑い者にされるぐらいなら、シバかれてでも心は男前でいたい。

私はそれを選んだ。誰にも邪魔されない、

自分の意思で。

カッコつけたくて記してるわけではない、人間本当に窮地に追い込まれた時に出る自分の行動に驚かされる時が必ずあると思う。人生いきていればいつか必ず。大切な選択の瞬間。私は意外だったのだ、自分のその判断に。体も小さく細く、男としての腕力の強さなど意識すらした事のない自分の中にあった、

意固地なまでの何か強い感覚に。

その後、不良グループたちは脅しても脅しても私の覚悟を決めたようなその態度に辟易したようにその場を去り、去り際に私のことをチクった友人の名前を出し、『◯◯はすぐやったぞ!』と言う訳の分からない捨てゼリフを吐いた。

それから数ヶ月たって不良グループの1人が私の入っていた部活に入部して来た。不良グループとも手を切ったようで私の入っていたのが野球部だった事もあって丸坊主にまでして来て。それから少しヤツと仲良くなって一緒に遊んだりもした。ヤツは周囲に言ってたらしい。あんな喧嘩弱そうな身体でグループに囲まれて反抗や犬死覚悟の逆上し暴れるでもなく、ただ単純に純粋に

『やらない。』

という意思だけをブツけてきた姿を見てコイツと友達になりたい、そう思ってくれたらしい。

それから時は経ち大人になり、私は東京へ来たりして疎遠になってからヤツの動向は知らなかった。
私が音楽を作ったりして創作を続ける中、

しばらくしてヤツの一報が耳に飛び込んで来た。

あれからヤツは家庭の問題などもあり、
不良道に舞い戻り突き進んだみたいで地元のプロの事務所などにも出入りしていたらしい。だが最後は薬物で錯乱し、若くして
しがない雑居ビルから飛び降りて亡くなったと聞いた。

強さとはなんだろう。

私には分からない。ただひとつ、
腕力ではなさそうだ。

あなたは自分が間違ってると思う事に対して
ひとりでも戦える?

私は

誰かを守るために生き続けられるのか?

もちろん強さとは、
ひとつではない。

私が年をとっていつか死んで

あの世でヤツと再会した時には、

今度は “ 友達 ” として

あの時、拒んだ最高に面白いネタを

全力で見せてやろうと思う。

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