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おのぼりの坂〜東京見聞記


一年ぶりに東京へ行って感じたことは、どこもかしこも工事の多いこと多いこと。

特に超高層ビルの建築工事の景は圧巻です。

タワークレーンが林立しているのを見ると、よくまあ、倒れないものだと感心します。

そのほか、大小の道路改修工事にもよく遭遇します。また、久々に超満員電車を経験し、人の多さも他の都市(大阪)を寄せ付けぬものがあるなと思いました。←誇れる?笑


ところがですね、某中目黒駅に降り立って、駅前の幹線道路からそれて住宅街の細い道に入りますと、景色が一変します。


目黒区にはとんと縁はありません。中目黒駅に降り立つのも初めてでした。

ただ今日はこの先に目的地があるので、ぶらぶら歩いて行きます。細い道なので一方通行のようですが、車はあまり通っていません。


こんな分かれ道にも出合いました。


そして気付いたことがあります。どこまでも坂道です。またまっすぐなところもありますが、全体に変に曲がっております。変というより、自然の曲がり具合です。


それほどきつい坂ではありませんが、上り一方で下ることはありません。


目黒区は品川区に隣接し、海に近い印象があったので、実際こうして歩いてみて、微妙に高台であることを実感し、ちょっと驚きました。ああそうなんや、という新知識を得た歓びですね。


さて、駅から10数分歩いて来ましたら、こんな案内板がありました。

「小川坂
かつて、この一帯を『小川』といい、坂下に広がっていた田んぼを『小川田んぼ』と呼んだ。この辺りの旧家小川家が地名の由来といわれる。また、この坂のある道は、鎌倉へ通じる道として中世の頃開かれた鎌倉道であった。目黒区教育委員会」


鎌倉道? そういうことだったのですね。細く曲がった自然な道、ゆるい坂の数々。そのわけは「小川坂」にあった道理…道だけに、道理だ。


さて、ここからは自宅に帰ってきてからの話になります。


小川坂が古くからの坂道だということはわかりましたが、そのほかは不明です。で、「目黒の小川坂」をキーワードにしてネットで調べてみました。やっと見つけた地図が下図です。これは「yeddo-aruki」の「江戸・東京の坂道 中目黒駅周辺」から拝借しました。


下図の中央付近の赤線が「小川坂」です。上真ん中から右下へ流れるのが目黒川です。等高線を読むと、図の左から右に向かって舌状台地がのびています。この台地は目黒台と呼ばれているようです。

ちなみに上掲「小川坂」案内板あたりの標高は26メートルぐらいです。


グーグルアースを重ねた図も掲載されていました。まっすぐな道路(近代道路)を取り払うと、なんとなく古い地形と古道がまぶたに浮かびます。


心眼を磨けば、坂道や微妙に曲がる道、またふいに現れる道ばたの庚申塔などに、関東ローム層のように積み重ねられた歴史を垣間見ることもできるでしょう。


こうした台地のある東京の地形は、目黒区だけでなく、例えば上野台、本郷台、豊島台、淀橋台、荏原台などがあるようです。おおむねJR山手線に囲まれた範囲です。

当たり前のことですが、あらためて、東京って、普通に昔は田舎だったのですね。その田舎の歴史の上にタワービルが建てられ、地下に電車が走り、大東京が息づいているのだなあと感慨いたしました。

まぶたに浮かんだのは東京の昔ですが、実は、こうした風景は全国どこにでもあったのだと思います。

おしまい