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日中にたくさん思ったことがあったはずなのに、夜になるとすっかり忘れてしまう。嫌われたくないなあと思って、生きていることは、ほとほと無駄なことだなあ、と頭ではわかっているのに、どうしても嫌われないように過ごしてしまう。嫌われないように生きようとすると、なにが大変かって、人はひとり違うから、相手に合わせて、自分をぐにゃぐにゃ変形させなくてはいけないということなのです。あの人は、コーヒーにシュガーがふたつミルクはいらない。あちらは、ブラックが苦手だから、ミルクと、おまけに砂糖もみっつ。なんて、まるで先輩の飲み物の好みを完璧に覚えている新入社員みたいな、そんな感覚を、ずっと発揮して過ごしていかなくてはいけない。


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