2点取ってチームを勝利に導いたぼくが罰として走らされた話。

2日つづけてサッカーの話題なんだけど、昨日の記事を書いてたらふと思い出したことに今でも腹が立つから書く。もう10年以上まえのことだけど、当時の怒りは冷凍保存されたまま。いつだってレンジでチンすれば怒ることができる。

試合で大活躍したぼくは、なぜキャプテンに走らされたのか。
今でも納得できないし、絶対ぼくは間違ってない。

ぼくが中学のときに所属していたサッカー部は強かった。
県大会で常にベスト4以上。トーナメント表では四隅のどこかにいるシード校。最高成績は準優勝で、全国大会には出れなかったが、県予選の決勝でも一点差だった。

そんな強豪校だったらぼくたちは、高校選択を迫られる。東西に分けられた進学校で学力的にいちばんは「東」。あまり差がなく「西」。その「東」「西」に行けない子たちは工業高校などにいくことが多い。

サッカー部にはありがちだが、中学校のチームメイトはヤンキーのヤツも多く、半分くらいが工業高校に流れた。

残った半分はさらに「東」と「西」に分かれ、ぼくは「東」を選んだ。
ちなみにサッカーの強さでも、わずかではあるが例年いつも「東」が上だった。「東」は負けちゃいけない。

高校に入学して半年ほど経ったタイミングで練習試合が組まれた。相手は「西」。高校3年生は引退し、新チームになって間もない時期。さらに同じ地区の東西対決は当然のことながら気合が入る。

ぼくら「東」のひとつ上の先輩たち、2年生は県内でも優秀なプレイヤーがそろっていた。3年がいたころから、レギュラーはほとんど2年。その影響もあり、例年僅差だった「東西対決」だが、今回の試合はやるまえから圧勝ムードが流れていた。

試合当日。
スターティングメンバーが発表される。


なぜか呼ばれるぼくの名前。

いつもはスタメンどころか途中出場すらほとんど無いのに。突然の抜擢。
県選抜のような2年の中に、鼻水を垂らした一年坊主が入る。


試合前に整列する。

向かい合った相手の中には中学時代のチームメイトがいた。
おなじ釜の飯を食い、頂点を目指した仲間が声をかけてくる。

「おまえ、東で先発なん?なんでなん?えぐいな」

「いや、なんか知らんけど今日は先発やった。まぁたのしくやろうや」


中学時代のチームメイトと、東西の高校に分かれて、今度はこうして対戦相手として戦うとかドラマみたいやなぁ。と感慨にふけっていたら



脳天が揺れた。

横に立ってたキャプテンに頭をグーで殴られたのだ。


「試合前の対戦相手となにを気軽にしゃべってんねん!!!!」

画像1

(お互いのキャラクターから関係性まで、まさにこんな感じ)


このキャプテンは「硬派」と「男気」を絵に描いたような人物で、真面目な堅物。県を代表するゴールキーパー。そのグローブは人を殴るためのものですか?

キャプテンの横に並んだことを激しく後悔しつつ、たしかに初先発に浮かれていたと反省し、試合がはじまる。

結果は、3−2で勝利。

ただ、本来の実力差からいえば3点差では勝ちたい。
チームの動きも出来もとにかく悪かった。

しかし、

ひとりだけ大活躍をした男がいた。



そう、ぼくである。

3点のうち、2点を入れた。
初先発の1年生が2点。
文句なしのMVP。明日のスポーツ誌の一面。
試合内容も結果も最悪で、みんな肩を落としていたが、絶好調だったぼくは内心ウッキウキだった。「お・い・らだけは絶好調〜♪2点を決めたスーパーエース〜♪」とシングルカットを録音するほどに。


試合後、反省会。自身も二失点を犯し、怒りがおさまらなかったキャプテンがみんなを集める。

「おい、おまえら!今日の試合は最悪やったぞ!」

自分たちがいかに情けないプレーに終始したか、油断があったんじゃないか、こんな試合をして県で優勝できるのか、触ったら火傷する熱量を込めた言葉が部員たちに降り注ぐ。

「じゃあ最後に聞くぞ。今日の試合、ほんまに100%でやったヤツおるか?おったら手をあげてくれ」



自信満々でただひとり右手をあげるぼくを、青ざめた顔で見つめる残りの全部員。


やってしまった。

と思ったのも束の間、命令が下される。


「おまえ試合前に殴られて、よう呑気に手ぇあげれたな!走ってこい!アホ!サーキット!」

サーキットという筋トレと筋トレをダッシュでつなぐ、鬼メニューを試合後のグラウンドでひとりやらされる。


「絶対、オレは手をあげる資格あったやろ!試合前と、オレの活躍関係ないやんけ!なんなアイツ!アホ!」とキャプテンに対しての怒りを丑の刻参りの木槌よろしく腕立てに込める。


坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとはよく言ったものだが、ぼくは自分自身のこの経験から、教員になり子どもと接するときに「それまでの行いがどれほど悪くても、評価するところは評価しよう」と思うようになった。

消えない怒りは、形を変えて未来へとつながった。


互いにいい大人になったことだし、地元に帰って道でバッタリ会ったときには「あのとき大活躍だったんで、やっぱりぼくは手をあげてもよかったと思うんです」と言ってやりたい。


真面目で誠実な人柄のまま、警察になった彼に言える自信はないけれど。



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