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料理の楽しみ方も教養の一つなんだなと刺身が教えてくれた

 美味しいものはどう美味しいのかを口にするようにしている。もちろん、聞いてくれる人がいないと成立しないから難しい。結構うざがられたりそんなの聞きたくないよみたいな態度を取られたりする。楽しみ方が違うのであれば仕方がないが、尊重が偏ることに蟠りは無くはない。
 もちろん「美味しいね!」って感想を共有することは大事。というか楽しいし嬉しい。人に連れてってもらった所であれば、その人を立てる必要もあるからごちゃごちゃ言うべきではない。時と場合を選びつつ、自分の感想や感性は錆びつかせないようにしたい。
 料理も知識とコミュニケーションによって大きく変わる。素材の産地や希少性、季節性の知識があるだけで食べるのが楽しくなるし、調理法のこだわりやそれによる味の変化を知ることも楽しい。どんな文脈を舌で転がすのか。その上で「僕に食べられる為に生まれてきた」と勝手に感謝すれば最高の体験になる。
 合わせて何を飲むのかでも変わる。ビールなのか日本酒なのかウイスキーなのか焼酎なのかワインなのかなど。そんなに詳しいわけじゃないけど、わかりやすいコンボを知ってるのも楽しみになる。一辺倒にならないようにだけ気をつける。

 昨日食べた「スマガツオ」がとても美味しかった。まず運ばれてきたら香りがはっきりしていた。さっぱりしていて味が詰まっているような香り。スマガツオはカツオの仲間なんだけど脂が乗ってて身が柔らかいとのこと。最初は生姜をつけていただいた。醤油を少しつけて口に運んだ途端、口の中にカツオの香りが広がって、そこに普通のカツオとは全く異なる食感がやってくる。生姜がカツオの香りを引き立てる。美味い。
 カツオの味なのに食感がカツオじゃないから脳が何を食べているのか認識できてないフワフワした感じになった。これがスマガツオなんだと。脂も乗ってはいるがしつこくなくさっぱりしていた。それでいて味ははっきりしていて後味も残っている。これは美味い。
 お次はわさびでいただく。わさびだとまた異なっていた。わさびがカツオの香りをマイルドにして、身の柔らかさの噛み応えを目立たせる。赤身の魚特有の味の深みがやってくる。生姜の時と異なってカツオ感が薄まり、メジマグロのようにも感じる。すっきりしているが、食べ応え十分。美味い。

 生姜とわさびでこんなに違うのか!と驚いた。調べた所スマガツオは九州の方がメインらしい。こっちではあまり見ないそうだ。そう思うと尚更美味しい。一切れ一切れで生姜とわさびを迷い悩みながら食べる。迷いや悩みは贅沢だと思うので存分に満喫する。
 生姜とわさびでこんなに味が違うなら、きっと合うお酒も異なるのだろう。今日はそこまで辿り着かなかった(そもそもお酒に弱いのだ)が、飲み物も合わせて味の違いを楽しみたい。味は意識すればするほど感じられる。
 料理を食べるって、ただ単に食えればいいわけではないし、美味しければいいってわけじゃない。どんな場所で、どんな雰囲気で、どんな人とどんなものをどんな時にどういう風に食べるのかという体験全体のストーリーをサービスとしてどのくらい提供するかで全く変わってくる。楽しみ方の一つとして味を表現するならば、それは一つの教養にあたるんじゃないかとカツオに教えてもらった。
 この考え、塾には足りないと思うんだよなー。多分今度そんなことを書く。

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