書評:テレワークが達人がやっているゆかいな働き方


デイリーポータルZが好きだし、ちょっとしたハウツー本のつもりで読んだら、結構考えさせられる本だった。
題名からもわかるように、テレワークにどう対応したらいいか?という世間の雰囲気に応えた企画だと思うが、中身は失敗と試行錯誤しか書いていない。「こうやるとうまくいく」というネタもいくつかあるが、すべて「こんな失敗があった」という下地がある。

No4:偉い人がミュートで話しはじめると「おい、誰か言えよ」という雰囲気

などのコミュニケーションのあるあるから、

No53:リモートには合わない会議と合う会議がはっきり分かれる


など、実際の試行錯誤の中から出てきたTips、

No110:新幹線の動画を流すと仕事がはかどる


など、テレワークでのライフハック的なものまで、幅広く昨年からの「新しい働く環境」に対して、どう自分たちが対応してきたかを面白おかしく紹介している。
デイリーポータルZのノリは好きなので、なんの引っ掛かりもなく、サラッと読んでしまえる本だが、見方を変えると「オンラインコミュニケーション」を語る上ではこの伝え方が現在の状況においては最善で、いちばんかっこいいのではないか、と思った。

岐阜県知事選のインターネット配信などをお手伝いした縁で、岐阜県で配信などを行っている人達(みんな配信がメインの仕事ではない)と知り合いになり、こういうノウハウをどうしていくのがよいか?という話になった時に、この本を思いついた。

ビデオ会議から、カンファレンス、コンサートに至るまで、さまざまなリアルだったイベントがオンライン化されている。しかし地方ではまだ「配信自体」を専業にしている会社は少ないし、「配信」といってもピンキリなのでおそらく「こうすればいい」というベストソリューションは、状況に依存しすぎる。
「テレビ放送の置換え」的な分野は専門化しやすいが、地方によくあった「地域住民との意見交換」「○○ワークショップ」など、半分パブリックな感じのイベントのオンライン化はいろいろな方法がありそうだ。
そんな中で、商売にする時に「なんでも配信できます!」は言い過ぎだと思うし、「必ず成功するオンラインイベント!」みたいなキャッチコピーでお客さんを集めて、「とにかく成功させて!」と藁をも掴まれても困る。


やりたい事を再考し、適切な構成と規模で、配信する、みたいな流れでいきたい。そういったお客さんを集めるためには、どうしたらいいか?前例がないオンライン開催に対してどう現実的な実行プランを作っていくのか?
そう考えると、失敗談を公開して、経験を語る、共感を得るという方法を最初に持ってくるのは、最善なのではと思った。

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