秋宮もねの呪いの話

雫の過去編で、秋宮もねが呪いと表現した雫を縛り続ける考え
→クラスメイトに言われた、アイドルに憧れる自分を否定する言葉について
その呪いを解いてあげる、と秋宮もねは言った

ファンがアイドルを応援するように、アイドルもファンへ、ステージの上からエールを送っていて
雫のことを傷つけようとする昔のクラスメイトではなく、雫のことを大切に思う自分や両親や、雫が今まで応援してきたアイドル達の言葉に耳を傾けようと

それでも雫はまだその呪いから解放されることは無く
まさに運命のいたずらと言って申し分ない、星見プロのマネージャーの説得や新たな仲間との出会いを経て雫の呪いは徐々にほどかれて行き

本ストーリーの最後は
中学時代の話を友達にしたこと
そして「これからは私が、お姉ちゃんの分まで頑張る」と言った雫に対して

もねは「呪いは解けたみたいだね」と安心したような様子を見せる、従姉妹の一連の会話で終わる

雫の呪いを解いたのは、サニーピースの仲間であり星見プロの仲間であり、今まで応援してきたたくさんのアイドル達であり
当然一番は、秋宮もね自身であると言って間違いない


さて、兵藤雫が抱いてきた葛藤やプライドについて色濃く描かれたこのストーリーだが
私はそこにもう一人分の葛藤やプライドが描かれていると感じた

それは秋宮もね

秋宮もねは、雫から見ればいつも明るく優しいお姉ちゃんで、ひとたびステージに立てば言語化できないほどに大好きなアイドルに見えているわけだが

当然秋宮もねもまた、たくさんの困難を抱えてその人生を歩んできたのだろう


雫がクラスメイトの心無い言葉に呪いをかけられていた傍ら
秋宮もねもまた、呪いに囚われていたように思える

雫のことを小さいころから見ていた秋宮もねは、雫が自分や他のアイドルのライブに行き始めてすぐに、アイドルへの憧れ
→自分もアイドルになりたいという憧れを抱いたことに気が付いた

そして卒業文集に将来の夢を書くという話題のときに、雫が隠したその夢の話を持ち出した

もねの説得あって雫は自分の夢を文集に書いたわけだが
その結果、雫はクラスメイトのいじめの対象となった

過去編は断片的なストーリー運びで分かりにくいが、学校に通わなくなってからもねが、「雫が大変な時にそばにいてあげられなくてごめん」と言っていることから、雫が中学に上がって以降は、もねはあまり雫と会えていなかったと思われる

「おばさんに話を聞いた」といって、雫を心配しに、元気づけに秋宮もねは来たわけだが

一体おばさん→雫の母親からその話を聞かされた秋宮もねはどんな気持ちだっただろうか?

自分が、文集に夢を書くべきだと言ってしまったばっかりに
雫がクラスでいじめの対象となってしまった
自分が雫のいじめの原因を作ってしまったという事実に、秋宮もねはどれほど肝を冷やしたことだろうか

アイドルとはファンを応援する存在であり、自分や他のアイドルに憧れを抱いた幼い雫の夢を、アイドルとして従姉妹として応援した
その結果雫を傷つけた

雫が隠そうとしたその種に、水を与え発芽させてしまった責任を秋宮もねは負った

その責任は、秋宮もねにとっては呪いではないだろうか


雫を応援し続けるという思いは、アイドルになる前から変わらないけれど
秋宮もねは、雫を傷つけてしまった贖罪として
自分が雫に呪いをかけてしまったという、懺悔の呪いを解くためにも
兵藤雫のことを応援し続けたのではないか

また同様に、純粋に雫のことを応援せずに
自分の罪悪感を拭う意味もそこに込めてしまうことへのさらなる自己嫌悪もあったかもしれない
これはかなり飛躍した想像の話だが

ともかく、秋宮もねもまた、呪われていたのではないか?


さて、運命のいたずらに遊ばれて、兵藤雫はアイドルになった
NVGPを優勝して、I-UNITYを優勝して、BIG4になった(Shizuku's Memoriesがどの時間軸での話かは分からないけれど)

自分の引退を伝えたときに、愛する従妹は泣いた
また自分は彼女のことを泣かせてしまった

けれど夜呼び出されて会ってみたら、彼女は自分の記憶の中よりも立派に成長していて


アイドルになってよかったと言った
中学時代の話をできる仲間を見つけたらしい

「呪いは解けたみたいだね」と秋宮もねは言った
クラスメイトの言葉がこびりつき、アイドルになれないと自分をふさぎ込んでいた兵藤雫の呪いは解けた

同時に
雫が隠そうとしたその種に、水を与え発芽させてしまった
発芽させてしまったが故に強い風に当たらせてしまった

秋宮もねの呪いもまた、同時に解けたのではないか?

兵藤雫の呪いを解いたのは、サニーピースの仲間であり星見プロの仲間であり、今まで応援してきたたくさんのアイドル達であり
何より一番は秋宮もねであるという話はさっきしたが

秋宮もねの呪いを解いたのは、他でもない兵藤雫だったのではないか?


それは、強く美しく兵藤雫が咲いていたから
秋宮もねの呪いを解いた兵藤雫はもうアイドルの兵藤雫であり

アイドルの兵藤雫は、秋宮もねにエールを送っていたのではないか?


秋宮もねは引退する
アイドルであるが故に、エールを送ったが故にかけられてしまった呪いが解け
そして今、次の世代へと憧れとエールのバトンをつないで

秋宮もねのアイドルとしての人生は
秋宮もねの青春は、終わろうとしているのかもしれない

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