Merry Christmas Dr. …

この記事は 教育のためのTOC Advent Calendar 2023 25日目の記事でもある!

 2011年、我輩は世を忍ぶ仮の姿の仕事で工事の工程管理をすることになり、いろいろと本を探していたところ、ひょんなことからTOCfEに行きついた。

 そこには箱と矢印と楕円という少種の構成要素からなる論理図があり、それはとても直感的に作成でき、それでいて作成すると論理的に自分の頭が整理されたように我輩には感じられたのである。

 難易度と量がどんどん高く、大きくなっていっていた世を忍ぶ仮の姿の仕事へ立ち向かうことに困っていた我輩にはこのツールがとても魅力的に思えた。そして我輩の目的である「世界を変えること」を限りなく近づけてくれると確信したのである。

 使いこなせるようになるために必死に学べる場所、機会を探し、たどり着いたものが、「2012年のTOCfEの国際認定プログラム」と「TOC/TOCfE関西分科会」であった。

 そこで数多くのともに学び、実践する仲間と出会い、学習する機会を得たのだが、その充実した時間は長くは続かなかったでのある。翌2013年に、仕事により根城を関西から北陸の南端に移動するこになり、学習する機会への参加に支障をきたした。

 「参加できる機会がなければ、自分で作るしかねえな」と思った我輩は、さっそく自分が参加できる休日に関西での勉強会イベント立ち上げた。多くの仲間にも支えられ、気が付けば関西と北陸の両方でイベントを開催し、またほぼ毎月勉強会を開催しておった。

 仕事でも、資料の作成、会議やイベントの構成を考えたりと様々なところで大活躍してくれたTOCfEのツールだったのだが、一点気になっていたことがあった。

 それは、「自分はこれが役に立っているが、仕事で組織としては使ってへんな・・・というか、どないしたら広まるんかいな?」という疑問である。

 いつしか職場でTOCfEやTOC思考プロセスのツールをみんなで使う日を夢見ておったのだが、どうも近づいてるようには思えんかった。勉強会に誘ってみたり、それとなく会議の流れをそれっぽく(ワークっぽく)してみたりしたが、全く持って広まらんかった。というか、内心「広まるわけねぇだろ」と思っておったが、その通りだった。人間なんぞ「勉強なんてまっぴらだ」「仕事なんてやりたくない」って奴が大半だからな。

 つまりはこうだ。「おいしいたこ焼きが欲しい人たちに、おいしいたこ焼きの「作り方」を教えようとしていた。」ということだ。まずは、自分がおいしいたこ焼きを作り、おすそ分けできるようになること。こうでもしないとありがたみなんてわかっちゃくれねえからな。でもしかしだ、そのおいしいたこ焼きを作れば作るほど、みんな我輩の作ったたこ焼きを食うばかりでいっこうに自分で作るようになってくれねえ。

 そんなこんなしているうちに、あのコロナって奴が来て、大海原どころか外にも満足に出れず、さすがの我輩も2年ほどはおとなしくしていた。その間、あらためてTOCやTOCfEをはじめ、いろいろな本や動画を拝見した。すると同じものを見てもまるで違って見えた。そのなかで、あらためてTOCを作ったあの博士の言葉が目に留まった。

 TOCの根幹は「集中」それは、やるべきことをやることと、やらないことをやらないこと。と師はいう。そしてそのほかのものは些細な枝葉に過ぎないと。

 そして、改めてTOCfEの認定プログラムのテキストを読み返すと、これまた様々な発見があった。なんでこったい。まるで後から効く冷酒と親父の小言みてえじゃねえか。まあ、我輩はラム酒しか飲まねえけどな!

 今はTOCfEは「知識や技術を(詰め込むように)教えること」をやめ、「材料を提供し、問うこと」に集中することで、限られた時間内で相手が考える力を付けながら知識や技術を習得するという目的を達成するものと、我輩は理解している。だって、ブランチ、クラウド、ATTというツールですら「些細な枝葉」なのであるから。

 なるほど。そして、そうなると、やるべきこととやらないこと見極めるには目的が重要となる。それを「人は、なんのために考えるのか?」、職場において言うと「仕事の目的を達するため」。論理的「ちゃんと」考えることは手段に過ぎない。

 いまでは、すっかりブランチ、クラウド、ATTのツールを使わずにチームのみんなとコミュニケーションとれるようになった。「今日は何する?」「それしたらどうなる」「うまくいきそう?」「理由を教えてよ」そして時々「なぜならば?」。それで実感するのはTOCfEのツールは教師のものだってこと。テキストにも、「教師がどのように使うか」という視点で書かれている。そういえば、ドイツの偉い哲学者が日本の弓道の師匠から教わった経験をまとめているが、案外あんな感覚なのかもな。
https://www.youtube.com/watch?v=U_H6rnJG1h0

 おかげで、今何が起こっているか、何を何に変えるべきか、どうやって変えるべきかを必死に考えているうちに、世を忍ぶ仮の姿の仕事の目的ばかりか、我輩の本業の目的までハッキリしてきた。

 そう、我輩の祖先たち、すなわち「大海賊(グレート・パイレーツ)」はこの地球の資源や知識がとても不均一に分散していることに気づき、こうした距離を船を使って離れて存在する様々な資源と知識を寄せ集め、補い合えば莫大な利益をもたらす価値ある道具やサーヴィスや消耗品を作り出せると理解した。だからこそ大海賊は、自分たちに協力的の陸上の支配者を支援し、世界の手綱を引いてきた。それらの結果が歴史として世界が認識しているものである。

 しかし、あの大戦争あたりの技術の進歩から取り残されちまったばかりに、いまやすっかり世界に波間を漂うばかりとなった。制御不能となった数多の難解な技術をうまくやっていくには、新たな前提で挑まなきゃいけない。そのヒントをTOCはくれてるのかもな。つながりとバラツキに満ち溢れた「宇宙船地球号」の操縦者たる「包括的な予測能力を持つデザイン科学者」ってのがわんさかでてくるのも夢じゃないかもしれん。

 コロナの前、仲間たちと子供たちにTOCfEのツールを教える機会があった。ATTで夢の達成計画を作ろう、という趣旨だった。親子連れでATTを作ったが、子供は楽しげにワイワイやっていたが、どうしたことか半数の大人がなかなか書けない。ある母親が「私にはもう夢がないから・・」 我輩は愕然とした。また一方で、世を忍ぶ仮の仕事の職場でも新入さんは元気よく挨拶するが、徐々にあいさつしなくなる。こどもは純粋で考えられるけど、案外大人が夢を失い、自由に考えられないのかもな。そうして「社会」という大人たちの世界に溶け込ませることでそれを塗りつぶしているだとしたら、それは由々しきことかもしれん。

 TOCの根幹は「集中」それは、やるべきことをやることと、やらないことをやらないこと。 それを決めるためには、「目的」が必要となるが、TOCが周囲に広まらないのは、彼ら、彼女らに「人生の目的」がないから、あるいは、心のどこかに忘れたか押し殺しているのかもしれない。だとしたら、我輩や、TOCを使っている人の生きざまやともに目的を達成する機会を通じて、より多くの人の心の内なる部分で待っているその人の「本当の目的」が日の目を見ることがあればこれほど良いことはないだろう。

 とはいえ、現実には我々の見たくない問題が山積みである。そんな日常のマネジメントにもTOCの思考プロセスのツールは役立っているようである。そして、そのツールは、クラウド、ネガティブブランチ、中間目的マップとTOCfEのツールとよく似ている。しかし、その違いなども些細な問題かもしれない。重要なのは、「人生の究極の目的」を明確にし、毎日「やるべきことやることと、やらないことをやらないこと」を実践することと我輩は理解している。一万円札にのってる偉い人も言ってたしな「今日も人生の一日である」って。

 2600年ほど前のイランで、この世には天国にアフラ・マズダー率いる善の神々の軍団がおり、地獄にはアンラ・マンユ率いる悪の神々の軍団がおり、その両者が戦う戦場が我々の住む世界である、という考えが生まれた。我々の住む世界の現実は過酷かもしれない。我々の些細な日常、すなわち家庭、学校、職場などあらゆる場所でも過酷な現実があるだろう。それでも、すべての戦場にクリスマスは訪れる。

 すべての戦場で闘う海賊たちへ メリークリスマス。 And, Merry Christmas Dr. …

■参考文献

1)Eliyahu M. Goldratt ; Chapter1 Introduction to TOC—My Perspective, Theory of Constraints Handbook, pp.3-9,McGraw Hill LLC,2010.
2)ラミ・ゴールドラット/岸良裕司 監修:エリヤフ・ゴールドラット 何が、会社の目的を妨げるのか-日本企業が捨ててしまった大事なもの, ダイヤモンド社, 2013.
3)キャシースエルケン 著 飛田 基 訳:TOCによる学習のつながり 学習内容の分析・解釈・応用に使う「クリティカルシンキング」ツール 2019年6月18日改訂版, 特定非営利活動法人 教育のためのTOC日本支部, 2019.
4)Kathy Suerken ; Chapter 26 TOC for Education "... To Make the Wish Come True", Theory of Constraints Handbook, pp.787-812,McGraw Hill LLC,2010.
5)アバタロー:【名著】弓と禅|ヘリゲル 意欲を捨てれば、うまくいく。伝統武道に学ぶ「無心」の奥義とは?[動画], Youtube, https://www.youtube.com/watch?v=U_H6rnJG1h0 , 2023年8月. (アクセス日 2023年12月25日)
6)Oded Cohen ; Chapter 24 Daily Management with TOC, Theory of Constraints Handbook, pp.671-727,McGraw Hill LLC,2010.
7)バックミンスター・フラー 著 芹沢高志 訳;宇宙船地球号操縦マニュアル, pp.7-55, 株式会社 筑摩書房, 2000.
8)高橋和夫:改訂版 国際理解のために, pp.51-63, 一般財団法人 放送大学教育振興会, 2019.

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