某国で、医療コーディネーターを名乗り、私から400万円を騙し取っていった美女のお話
◆洗脳の手口
あるヨーロッパの国で美女に400万円を騙しとられたことがある。
その時の回想録をここにあげる。
私はプロフィールにあるように難病を持っている。
この病気は特定疾患なので日本でも保険に入ることができない類のものだ。
当時、会社の用意している海外で生活しているための保険に入れず、妻帯は難しいと、
途方に暮れていた。
そこで、自費で普通の海外旅行保険に入ることと、
何かあっても会社は責任を取らないという条件で渡航を決行した。
なぜそこまで・・・その時の私は子供たちにとって父親という存在は絶対に必要で家族を一緒にいるべきだ!という固定観念があったからだ。
駐在員の生活を支える会社が入ってくれる保険は実に素晴らしいもので、
・医療を受診してもタダ。
・待ち時間なしの優先診療。
・入院しても個室確約、食事、その他付き添い人のベッドや食事まですべてタダ。
・日本では保険適用外になる歯の歯列矯正なども保険内でフリー
という医療パスポートのようなものだ。
そのため、あええて駐在中に矯正をやる人も多かった。
もちろん、これは最高ランクの保険で、会社によって入っている保険が違う。
・〇割負担のところ
・〇万円までは自己負担でそれを超えたら全部無料のところ
など、いろいろな種類があり、駐在員の保険は全てこうであるとは一概には言えない。だが、総じて
駐在員の保険はプラチナチケットであると考えてもらって構わないだろう。
かたや、自費で入った私の保険は、私がいた国では
受診できる病院のランクが限られており、
後から来た上のランクの保険を持った患者さんの診察が終わるのを
待たなければならないようなあからさまな違いがあった。
※国によって医療制度も違いますので、世界共通ではない。
プラチナチケットである会社の保険は、
日本語で受診の手引きがあり、
診療にたどり着くまでの明確な手順が示されていたし、
必要な通訳も全て無料でついているが、
私の保険はそのようなものがほぼない。
したがって、私は医療をどのようにして受けたらいいのか?
全くわからなかった。
周囲の人に聞こうと思っても、赴任当時は知り合いは会社の関係のご家族ばかり。
彼らはみな同じ会社が加入している保険に入っているので、当然それ以外の事はわからない。
そんななか、私の前に現れたのが、医療コーディネーターを名乗る、
黒髪のすらっとした美女だった。
その人は、会社の知り合いの知り合いの知り合い・・・
という細くはかないツテをたどり、
彼女はその会社に入り込んでいた。
会社の人たちの飲み会に毎回参加するくらいに。
彼女は日本では医者だったといい、
現地で結婚し子供を成していた。
普段は医療コーディネーターとしていくつかの病院と提携してフリーで生活しているとのことで、
健康に不安を持つ中高年の駐在員のおじさまたちからは
絶大な信頼を受けていた。
そのスラリと伸びた手足に、日本人離れした身長・体型。
理知的な瞳、美貌、話術。
どれをとっても一流の美女であり、できる女という印象だった。
彼女はそこから私の事を聞いたようだ。
私の主人にコンタクトを取り、助けになれると申し出たのだそうだ。
彼女はまず、私の難病を持って海外へ来てしまった不安な気持ちをよく理解してくれた。
駐在員として派遣され、バリバリ働く男たちには決して理解できないであろう女の気持ちをわかってもらえた安堵感から私は次第に育児に対する不安や、主人に対する不満までをその人に話すようになっていった。
当時、私の10か月の赤ちゃんは卵、牛乳、バナナ、小麦、大豆にアレルギーが出ており、
離乳食に豆腐も、バナナも。
味噌もパンも使えず。
牛乳もだめ・・・
ミルクと小麦の国で。
私は途方に暮れていた。
そのため、不安な気持ちをわかってくれた上に、
現地の生活(例えば市場での食品の買い方や電車の乗り方など)
を教えてくれて、しかも医療の知識まであるという彼女はとても心強い信頼できるであった。
そして、彼女の罠が動き出す。
彼女はまず手始めにさも親切そうにこんな事を言った。
近くに日本人の先生がやっているクリニックがあったのだが、
「そこの日本人医師の〇〇はこの国のドクターからすごく毛嫌いされている。」
「彼女の診察のやり方は古い。
処方する薬も時代遅れもいいところだし、
すぐに抗生物質を出したがる。
この国のドクターたちは抗生物質なんて使わない。
日本だとすぐに抗生物質を出されるけれど、抗生物質は一度飲んだだけでも身体のよい菌まで全て殺してしまって、一回でも飲んでしまったら身体がボロボロになる。
それをわかっているはずなのに日本のドクターたちはお金儲け第一主義だから抗生物質の処方をやめようとしないのよ。
あんな病院よりも、もっと先進的な医療を受けられるこの国のドクターにかかった方がいいわよ。」
「あそこの先生は本当に人格がヤバいの。あそこの先生に診察されて誤診で手遅れになった人がたくさんいるのよ。ほんっといい加減な人」
などである。
また、他の日本人通訳の人が提携している病院もあるのだが、
そういうところもまた、その日本人通訳さんたちの事を徹底的に否定していた。
「通訳してる〇〇さんはね、すごく地元で有名な人でね、子供がほんっと言う事きかなくて、学校でもみんな迷惑しているの。
それに、あの人、本当は〇〇語をあんまり理解していないのよ。
よくそんなんで通訳やろうと思ったわね。
いい加減な人間性なのよ。
あんな人に通訳頼んだら、適当に通訳されて、大変な事になるから気を付けてくださいね。」
「〇〇クリニックと提携している通訳さんはね、約束の時間をすっぽかして患者さんが受診できなかったとクレームがたくさん来てるそうよ。
クリニックの看護師がそういってたから間違いないわ。
予約していっても通訳がこなくて受診ができなくなるなんて事、
よくあるらしいわよ。
だから〇〇クリニックは利用しちゃいけないクリニックだわね。」
次第に私の中では、要注意のクリニックと要注意の通訳さんたちとしてインプットされる。あきらかに囲い込みであり、私が外部と繋がって正しい情報が入ってくるのを阻害しているのだが、当時の私は、
『良い事を教えてもらったわ。トラブルや医療ミスを避けることができてありがたい。』と彼女に感謝の気持ちを募らせていく。
そして自然と私が罹ることができるクリニックは彼女と提携しているという街中のクリニックになっていく。
駐在員が住んでいる場所というのはある程度の塊をもって点在しています。
なので、日本人が多い地域にある日本人向けの医療機関に普通は罹るので、
そんな街中にあるクリニックに通っている日本人は私の他に誰もいない。
病院内での会話はすべて〇〇語で私には理解できない。
自然と頼るのは彼女1人になっていく。
お医者さんが何と言ったかなどまるでわからず、
診察の結果、薬の処方、さらに食べ物や生活面のアドバイスもすべて彼女が日本語で教えてくれていた。
回を重ねるごとに段々と、
日本のこの食事は本当は身体に悪いから、
現地のこれを食べたほうがいいとか、
処方薬も抗生物質よりも、強力なカモミールティーでうがいをしたり、
アロマオイルで風邪は治せるとなっていく。
それはそれで今でも良いと思うが、問題はそこではない。
次第に、そのオイルは、ここのオイルがいいとか、
銘柄の指定や購入するお店も指定するようになり、
生活全般をいつの間にか彼女の指定するものに支配されるような状態になっていっていた。
さらに彼女は電話相談もやっているのだといい、通話1分につき1000円いう超高額な設定で電話相談をやっていた。
1時間話をしたら60000円である。
電話相談というのは普通はこちらから相談があるときにかけて、
相談するものなはずだが、
彼女は毎回、自分からかけてきて、調子どうですか?
から始まり、
自分がずっとしゃべり続けて、こちらが切ろうとすると
違う話を振ってきたりして、延々と電話を切れない状態が続く。
それなのに請求はしっかり来るという事が毎日のように続いた。
ひと月の電話相談だけの料金が30万を超えたこともある。
普通だったら・・・
いくらなんでも気づくだろうと思うのだが・・・。
当時の私は、海外の医療費はこれくらいかかるのだろうとかで納得し、
彼女の口車にのって、他の医療機関にかかるのが怖いとさえ思っていたため、必要経費であると考えていた次第である。
さらに、
健康な駐妻さんたちと同じような生活を私がしては、身体が持たなくなるとか。
舞衣さんに何かあったら、子供たちはこんな異国でどうなるの?
などと吹き込まれており、
周りの駐妻さんたちと自分は違う。。
自分が言う事を他の駐妻さんたちには理解をしてもらえない。
ということを強く意識させられていた。
自然なママ友との会話の中で、
ママ友が〇〇クリニックも通訳の〇〇さんもいい人だよ?
と言っていても、
「あぁ、健康な彼女たちには良いところなんだな~。でも、私には悪いところでしかないんだよな~」
と完全に遠い世界の話になっていた。
「完全に洗脳されていた」・・・んだと思う。
◆洗脳が解けた出来事
それは、大きく2つの出来事である。
1つ目は、一時帰国だ。
夏休みに日本に帰ったときのこと。
日本の友達と久しぶりに会って、医療コーディネーターの彼女の話しをしたところ
「それって絶対おかしいよ!騙されてるんじゃない?」
ってはっきり言ってもらえた事である。
友人の言葉はさらに続く。
「そんな舞衣の意思を無視して、自分の意見や、やり方を押し付けようとしてくるような人って絶対にいい人じゃないよ!」
「だって、舞衣、困って悩んで弱っている相手に対して。いくら舞衣がいいと思っている事でも1から10まで押し付ける?電話相談て。。。こっちから電話して相手にお金がかかるのに、そんな長い時間電話する?しかもあり得ないでしょ。そんな高額で。せいぜい5分くらいじゃない? 自分に置き換えて考えてみて。舞衣だったら絶対しないでしょ?」
その言葉に、しばし沈黙してしまう私。
その時の私の感情は・・・
情けないこともまだ半分彼女を信じていた。
80%。
80%は・・・信頼の方である。
これだけはっきりと否定の言葉を吐いてくれた旧来の友達の言葉でも、
まだ、私の洗脳は8割続いていたのだ。
洗脳は恐ろしい。
でも、友人の言葉は、私に確実に楔を打ち込んでくれた。
2割の疑い。
彼女に対する疑念が2割というほんの足先くらいの疑念でも、
それは、すごい楔であった。
100%が崩れた瞬間なのである。
その後、赴任先に戻った直後。
1歳の子供にアナフィラキシーにも似た症状が出た。
必ず医者にかかる時には医療コーディネーターの彼女に電話をするように言われていた私は、
その時も彼女に電話をした。 そこしかないから。
しかし、、、
そんなこちらの緊急事態にも関わらず、
いつも親切だった彼女が、
「今、マルタにバカンスに来てるんです。 ちょっと今レストランで食事の最中なので、あとで電話かけます」
と言い、さっさと電話を切ってしまった。
元ドクターなら、アナフィラキシーがどんなに大変な症状で命の危険があるかわかっているはず。
それなのに、いつもしょうもない事で長々と電話を切らない彼女が、
バカンスでレストランにいるからという理由で、
命の瀬戸際にあるクライエントの電話を切るなんてあり得ない!
とさすがにこの時になって初めて私は彼女に対して憤慨した。
そこで、先日友人が打ち込んでくれた楔がより深く、強固に私の胸に突き刺さってきた。
ここまで来て、ようやくである。
ようやく、彼女と決別する気になったのである。
そして、彼女に絶対に行かない方がいいと言われていた近所の日本人医師のクリニックに電話をしたところ、
すぐに来てください!と言われ、適切な処置をしていただき、
しっかりと説明をしていただき、尊敬できる先生だったことを初めて知ったのである。
その後マルタから電話をしてきた彼女に
「〇〇先生が処置してくれて助かりました。
今後は〇〇先生のところに罹ります。」
と告げたのである。
すると、全てを悟ったのか、
「そうですか。わかりました。」
と電話が切れ、
その後、一切の接触を彼女がしてくることはなく、
某商社の飲み会に彼女が現れることはなくなった。
◆その後
おそらく、訴えられるのを避けるために、さっさとターゲットを変えて、
消えたのであろう。
彼女に取られた金額(普通に医療機関にかかれば払わなくてよかった金額)は400万にものぼる。
本当にバカだったと思うが、
同時にそのような経験があってから詐欺的な思惑を持っている人がすぐにわかるようになった。
これらの事から、人とは違う何かを抱えている人。
人間関係が苦手であり、人と極力関わらない人。
自分に自信がない人。
は、特にターゲットになりやすい。
できる対策としては、広く、多方面から情報を仕入れることであろう。
そして多方面というのは単にたくさんの人という意味ではない。
同一の属性を持つコミュニティーの構成員の中でたくさんの人に聞いてもあまり意味をもたない。
なぜなら、同じコミュニティーに属している限り、知らず知らずに同じ価値観に単一化されているからである。
学校内
習い事
会社
趣味サークル
さまざまなコミュニティーがあるであろう。
できる限り、ちがったコミュニティーの人々から、幅広く意見を聞くと良いであろう。
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