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不思議な家に生まれつきまして候

 思い返せば、不思議な家だった。

割烹料理屋を営む祖母の家には、神様がたくさんいた。

お稲荷様。龍神様。だるま様。弘法大師様。

天照大御神様と氏神様に加え、神棚はたいそう混雑だったろう。

収まり切れなかった神様が、床の間にまで進出する始末である。



 床の間には、龍神様の掛け軸が掛けてあった。

この龍神様と私には、ひとかたならぬ縁がある。

 産後、母が私と床についていると、

ぴちゃ、ぴちゃ  ぴちゃ、ぴちゃ

頭上から音がする。

犬や猫が舌で水をすくい飲む音に聞こえ、母はぎょっとした。

料理人だった祖父が、常日頃から動物を家宅に入れないよう心掛けていたからだ。

生まれ育った実家で、こんな音を聞いたことは一度もない。

眠っているうちに、猫でも入り込んだのかしら。

不審な音に耳をそばだてながら、母は通りすがりの弟を捕まえ、音の正体を尋ねた。

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