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上着がぬげない

ある一定の限度を超えて肥えると、色々できない体勢がでてくる。

靴下が履けないとかは有名な所だろう。腹肉が邪魔である。

靴下などは毎日履くので、明確に「昨日までできていたのにできなくなった日」が分かるわけで、

毎日体重計に乗るような人間であれば、何kgからできなくなった、などとデータが取れたのだろうけど、そんな人間だったらここまで肥えないだろう。永遠の謎となってしまった。

でも実際「あれ!?履けない!」となった日は覚えている。と言うか「もしやヤバいくらい太っているのでは?」とやっと気付いたきっかけである。

正直、遅いと思う。もうちょっと早い段階で教えてほしい。

もうひとつ、上着が脱げなかったのも気付きのひとつだった。

まぁ普通にすれば脱げるけども、お分かり頂けるだろうか、後ろに腕を回して右手で左手の袖をちょっと引っ張って脱ぐ、という動作ができなくなったのである。

腹肉に続き、背肉まで邪魔をし始めた。

これには青ざめた。こんな話、聞いたことがなかったからだ。

もしやと思って背中を掻こうとしてみた。

あっ無理ぃ。

絶対に掻けない場所がある。孫の手の必要性を感じたが、また子供は7歳だ。早すぎる。

その日以来、かなり意識して無理してわざと後ろ手で服を脱ぐように努めている。

始めは壁に肩を押し付けて補助にしていたが、だんだん届くようになってきた。

危ない所だった。

肥えるのも命がけである。

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