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10分で学ぶ転売せどりの歴史と手法

どうも、久保内でございますよ。数か月前PS5まわりで転売屋・せどりの記事を書くさいに、転売屋さんからお話を伺いまして。PS5周りのことは無事記事になったのですが、そこに入らなかったこぼれ話が興味深かったのでメモとして書いておきます。数か月前のことなので最新トレンドとは言えないかもしれませんが、取材メモの供養ということで一つ。

中華製品をamazonに出品するのが鉄板化したワケ

転売・せどりを生業にする人にとっての大きな悩みは、利幅を狙えば一点物になり、単一商品を大量に仕入れると利幅がでないこと。

考えてみれば当然の話で、古本屋での掘り出し物や稀覯本を購入して数倍の価格でうるという「せどり」のもともとの意味と同じ動きをするなら、毎週僻地のBOOK OFFやHARD OFFなんかに何店舗も車で遠征し、基本的に自分の足で、大量のごみの中から利幅を狙える一品を掘り出す作業になる。つまり、仮に一点が仕入値段の10倍の価格で売れたとしても継続的な仕入れは不可能で継続性がない。

逆に利幅を捨てても10個、20個と同一の商品を仕入れることで仕入れのコストを減らし、商品の回転をかけることで利益を出そうとすると、これはただ単に卸売と契約できない規模の小売みたいなものなので、そもそも小売店に利幅でも仕入れのスムーズさでも負けるということになる。

なので、彼らの狙う主戦場は、ある程度まとまった数の入荷ができるか、その方策があり、小売店にはできないムーブができる場所ということになる。

その一例として話題に上りやすいのが、卸との関係性で値段を吊り上げることができないPS5だったり、需要に対して価格が一定なコンサートチケットであったりする。これらは、個人で業界内のお約束や、罰則がほぼ機能していないものなので、当然問題化しやすい。

転売屋も、叩かれて喜ぶために転売をしているわけではなく、商品を捌いて利益を上げたい方々なので、「まとまった数の入荷が可能」で、「日本に需要はありそうだが広まっていない利幅が狙えるもの」で、業界内のお約束が固まってない場所で法令にも違反してないものがあればそれが最高なワケだ。

それが、ここ数年でメジャーになってきた。中華転売といわれるもの。その手法はおおむね、ネットで検索して仕入れできるアリババなどの中華商品卸売・販売サイトで、日本での市場価格と比べて割安の商品を見つけ出してチェック。これを日本のamazonや各種オークションサイトなどに出品することで利幅をとるということになる。

この動きは、ぶっちゃけ中小の輸入代理店業なんかと同じで、ここにきて日本のせどり転売屋は、中華商品を扱うことでなんちゃって小売業から卸へと販売チャンネルを一つ上流に進めることができるということだ。

なんていうか、戦後間もない闇市からメーカーが生まれてきたみたいなダイナミズムを感じますね……。

クラウドワークスなどを使って商品リサーチまで外注! トンデモ発注方法とは

ネット検索だけで数百万点の中華製品を小ロットから仕入れられるアリババ。自分の足で現地で商材を探し回っていたころに比べて圧倒的に便利で効率的なシステムだけど、それでも膨大なデータベースから利幅の狙える商材を見つけるのは一苦労。

苦労は売ってでも人にさせろ! というワケで、クラウドワークスなどにあふれているのがアリババなどの商品リサーチのお仕事。調べてみるとものすごくムシのいい条件の仕事が虫でもしない低価格でばらまかれています。

こんな感じ。「パソコンを使った商品リサーチのお仕事です! 当方が指定したジャンルの商品の中から、日本での類似商品の商品と比べて利幅が50%以上あるものをエクセルにリストアップしていってください。そのリスト1件100円で、50件以上から!」「提案していただいた商品で月間30万円以上の利益が出た場合インセンティブとして500円追加します!」

……インセンティブの話しない方がいいんじゃ……。ぶっちゃけこのムシが良すぎる依頼方法をみれば、どうやって依頼者が利益を出しているか全部わかるので、自分でやったほうが早いし儲かる感じですね。

人気のカテゴリは、ペット商品、キャンプ用品、デジタルガジェットなど。特徴としては、中国の製品工場に求められる技術レベルが低くても大丈夫(仕入れ価格が安い)、生活必需品やコモディティ商品ではないこと(大手の合理化されたシステムに金額で勝てない)、趣味の領域でコスト感覚よりも気に入るかどうかが重要な分野であることだ。ちゃんと考えてるなあ!

これにより、安定した生産背景は中国に、商品リサーチは一件100円で外注、受注発想はamazonをつかった、オートメーションワールドワイド卸稼業が実現する。ここまで行ったらなかなか立派なもので、雑居ビルに入っている輸入商社とやってることは変わんなくなってきて、さらに効率的だったりする。

応用編・クラウドファンディングに流入しまくっている転売屋・せどりのメカニズム

で、卸売・輸入代理店化した転売屋が次に狙うのは…そう、輸入代理店ムーブの延長なら業者向け卸売りを自分に一元化させる日本総代理店化と、商品販売チャネルで卸売りよりさらに上流に当たる製造メーカー化の2つだ。日本総代理店化戦略として幅を利かせているのが、クラウドファンディングサイトを使ってのマネタイズだ。

そこで転売屋が目を付けたのがクラウドファンディング。「海外で大人気のこの商品をぜひ日本でも売りたい! 日本展開するためにクラウドファンディングを実施します!」っていう謳い文句はみたことあるのではないか。

クラウドファンディングを使い、広報のコストを削減し、支援者の数で見込みの販売数を手に入れる。まとまった商品の発注を前提にすれば、海外の中小製造メーカーと商品単位で代理店契約を結ぶことはそんなに難しいことではない。さらに、クラウドファンディングのサイトカラーでamazonなどで見つかる類似品より特別感・高級感・意識高い感じを演出。価格競争から脱して高利率で販売することも可能になる。これまでの代理店たちの目を縫って海外ブランド品を売っていた個人業者が、代理店にステップアップして有利に価格決定などの権利も握ることができるようになる。

もちろん、クラウドファンディングの支援ページのデザインや文章や写真は、クラウドワークスなどで外注だ! 販促文なんて5000円も出せばいいでしょ……。

応用編2・ロゴをつければ転売屋が一気にメーカーにランクアップ!

で、クラウドファンディングでの日本総代理店化の他に、転売屋からメーカーあがりできる魔法の方法が、製造メーカー化だ。具体的に言うと自分で品番などを決め、自社のオリジナルブランドとして中華製品を売り出すということ。

これだけ聞くと悪辣に聞こえるかもしれないが、デジタル系のガジェットメーカーや、衣料でも普通に行われることで、OEM製品と言えば飲み込みやすいのではないだろうか。たとえプリンターで商品ロゴを追加印刷してもらうだけでもOEM商品だ!!

このシステムは、小ロットでも自分のオリジナル商品ラインアップを持てるということで、転売屋だけでなくYoutuberやインフルエンサーの「オリジナルブランド」「オリジナル商品」としてもかなり採用されている方法だ。

美容系Youtuberのあいも、自身のブランドとして販売したコスメグッズが中華製品のパクリで、ロゴを入れただけと炎上したがまあそういうこと。

しかし、インフルエンサーがTシャツやマグカップを一枚からプリント発注できるサイトでグッズとして売り出したとして炎上するだろうか。これらのカンタンオリジナルグッズよりもかなり高度な手間暇をかけて商品を選定して、ええと、プリントポチっとつけていることは間違いない。なによりTシャツは平面だけど、コスメ商品の表面は曲面なのだ! 印刷の難易度は大違いだ。

まとめ

なんかわかんないけど、40万円の有料級の転売手法を無造作に公開した気持ちがしなくもないだから俺は300円の投げ銭記事としてこれを公開することにする。

個人的には、この記事を読んでいただいたら分かるように転売ヤーやせどりの人々に個人的には「よおやるなあ」という感慨がある程度で、敵意はない。古物商許可証は取得して、税務署に説明できる商売してほしいですね。といった具合。

むしろ、彼らのせどり・転売手法の近年の発展をみるにつけ、古本屋を巡って稀覯本をあさるという一種の「狩猟時代」から、大資本が入り込まないスキマジャンルで利益を狙い、新たなジャンルが見つかるとPS5などに群がる「焼き畑農業の発展」、アリババなどを使って付加価値の高い商品を探す「大航海時代」と、なんだか人類の産業革命への歴史を早回しで体感できるケースとして、これからも定期的にチェックをしていきたいと感じている。

いやー、個人で稼げる時代って凄いですね。あとクラウドワークスはほんともうちょっと何とかならんのか。

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