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チーム竹島の見果てぬ夢 第6章 夢の残がい

チーム竹島の見果てぬ夢 ・・・これは30年程前に出版された本を加筆訂正し、再録しています。1990年代から始まる日本人選手の世界進出と大躍進のきっかけをつくった「チーム竹島」を助監督として追いかけた遠藤智が書くノンフィクションです。全7章、全7回でアップします。第1章「竹島将の死」 第2章「大きすぎる夢」 第3章「ヨーロッパに」 第4章「レースの興奮と空しさ」 第5章「嘘と憎しみ合いと」 第6章「夢の残がい」 第7章「クレイになれなかった男」。第1章はチームオーナーの死というちょっと重苦しい空気の中で始まりますが、第2章はチームが活動を開始、第3章ではいよいよヨーロッパラウンドへと旅立っていきます。そして第4章では、スペインのヘレスで、いよいよヨーロッパラウンドがスタート。第5章はスペインGPからイタリアGPへ。第6章ではイタリアGPの敗因を巡り、チーム内に不協和音が響きます。

「ライダーに嘘をつかなければならなかった」

そろそろ空港に向かわなければいけない時間になっていた。
「ボローニャって、来る途中にあったあの大きい街だよね」
「そうじゃない」と妻が言う。
今日、竹島さんと森詠さんが乗った飛行機がボローニャに着くのだ。
森さんは、鈴鹿の日本GPであっている。竹島さんの先輩で、やはり作家である。
週刊プレイボーイの取材で来るのだ。

ぼくは地図を見ていた。
「あったあった、本当だ。ADORIATICOって書いてあるよ。
TICOって海って意味かな」
「そんなこと言ってないで早く行きなさいよ。遅れるよ」
「分かってるって」
妻に急かされて出発したぼくは、サンマリノの山を転がり落ちるように快調にクルマをリミニに向かって走らせた。

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