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ぼくの旅路 #2


【 はじめての海外一人旅:LONDON 編 】

当時のわたし:20歳/大学生 in TOKYO



 
 そんな、四方塞がりな、憂鬱な大学生活に、ピューっと吹き抜ける、風穴をあけてくれたのが、あのロンドンでの二ヶ月の生活でした。
 
「わたしは、カナダに留学してくる」。冬の長い西日に照らされ、高校の同級生から聞かされた、あの言葉。その言葉は、ぼくのこころのなかで、その後も、ずっと鳴り響いていました。そして、「さあ、自分は、どうするんだ」と問う声が、大きく木霊していました。
 
 それから数日後、ぼくは、父へ胸の内を語りました。「せっかく、春休みが2ヶ月もあるから、海外へ英語を勉強しに行きたいと思っているのだけど・・・。」父はすんなりと、こころよく、賛成してくました。「英語を話せるようになるのは、これから必要なことだと思うよ。時間のあるうちに、存分にやってこい」と。そして、金銭面でのサポートを二つ返事で承諾してくれたのです。その父の言葉に、大学生活で陰鬱だったぼくのこころに、パッと光りが射し込んで来たような、晴れやかな気持ちになりました。こんなに、こころがワクワクとしたのは、いつぶりのことでしょう。それと同時に、未知へのほどよい緊張感も、そこに内在しているのを感じました。
 
 語学留学の渡航先は、ロンドンに決めました。なぜ、ロンドンだったかというと、二十歳のぼくが興味あったものは、サッカー、ファッション、デザイン、音楽(特にテクノ)、都会、そして建築、だったからです。英語が勉強できて、さらに、それらすべて満たされているのが、ロンドンという街だったのだです。(この理由を当時、親が知っていたら「本当に英語を勉強しにいくのかな?」と心配をしたかもしれませんね。いや、いや、父に母は、そんなことはすべてお見通しだったかもしれません。そんなことも含めて、「いまできることを、やってきなさい」と、行かせてくれたのでしょう)。

 旅立ちの前日の晩。夜が更けても、なかなかに旅支度は終わりません。親から借りた、古めかしいマスタード色の大きなスーツケースに、あれやこれやと、荷物を詰め込んでいきます。いま振り返ってみると、よくもまあ、あんなに衣装を持って行っていたものだなー、と感心します。当時のぼくは、ファッションに夢中でしたからね。ロンドンという響きに、気合が入っていたのかもしれません。

 数時間だけ寝た翌朝の出発。スーツケースの上に一冊のノートが置かれてあるのを見つけました。ノートを開いてみると、表紙の裏にメモ紙が貼り付けてあります。

【これからの2ヶ月は、大切な時間になるだろうね。いっぱい学んで来いよ!たくやは、昔から引っ込み思案なところがあるから、"Hi My name is TAKUYA from JAPAN, How are you ?"って言って、自分からどんどん話しかけてみなよ。世界中のお友達ができるよ。そして、旅で、見たこと、聞いたこと、思ったことを、このノートに、日記を綴っていきなよ。人生の宝になるよ。よい、旅をしてきてね! ー 竜太郎より】

兄からの、メモでした。

「ぼくが寝たのは深夜過ぎだったのに、お兄ちゃんは、いつ、このノートをここに置いてくれたのだろう」と、ありがたい気持ちと、旅への引き締まる気持ちも一緒に、ノートをカバンに仕舞い込み、空港へと旅立ちました。


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