ぼくの旅路 #16
*** 当時の日記より ***
7/20
サンダンス前夜
サークルの中心に、聖なるシンボルツリーが立ち上げたられた。
強靭な男たちが何十人も集まり、木を立ち上げる様子は圧巻だった。
日も暮れ出し、ついに、セレモニーが始まった。
東のゲートに、ダンサーたちが赤いスカートを身につけ立っていた。それは、まるで、草原に佇む戦士たちの姿に見えた。
あそこに立っている彼らを羨ましく思う自分がいることを、自覚していた…。
ぼくは、グラスホッパーから授かったパイプを、しっかりと握りしめていた。
***
7/21
サンダンス一日目
日の出。
四時近くから儀式が始まった。
バッファローに身を包んだチーフのハリーに続いて、サークルへ向かう。
ダンサーの男たちは、もうそこにいた。
ピアスの式が始まった。
イーグル・ボーンのピアス(串状のもの)がチーフの手によって、男たちの両胸に突き刺されていく。男たちは少しも動じた様子を見せない。
ダンスが始まる。
ぼくも、目一杯サークルの外から歌と踊りを捧げた。この歌と踊りがダンサーたちに力を上げられるはずだ。
とても暑い日差しだった。
何人ものダンサーたちが、すでにひざまずいていた。
ぼくも腰が痛かったが、頑張った。弱いところを見せないように。
*
ダンスが、再び月明かりの下に始まった。
今晩は満月だ。
しかし、曇り空には月の代わりに、稲妻が空に走っていた。
そして、一日のダンスがようやく終わった。
ダンサーたちは、一日中踊り明かした重い足を引きずりながらサークルの線を超え、それぞれのティピへと消えていった。
*
アリゾナのサンダンスから帰ってきたばかりの仲間の話を聞いた。サンダンス中の断食の話で、サポート側の人間が断食によって重傷に到った話だ。
ぼくも、サークルでダンサーたちと一緒に辛い思いをして、祈りを届けたいと思っていた。そのために、ぼくも断食をしていた。しかし、ぼくの役割はダンサーたちをサポートすることだ。いっぱい歌って、踊って、彼らにエネルギーを送ることが、ぼくのできる最高のサポートだ。そのためには、やはり食べなければいけないと納得した。明日も、いっぱい踊って、歌い、ありったけのサポートをするのだ。