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ぼくの旅路 #25

【大学生活に戻り】

当時のわたし:20〜21歳 / 大学生 in TOKYO


 大学を一年休学しての旅の計画は、はじめて手にとって読んだ旅の本「深夜特急」に影響されたのが大きかったのだろうか「ユーラシア大陸を横断しよう」というのが大きな目標だった。いや、何よりも、大陸を横断していていくというイメージは、LONDONのヒースロー空港で出会ったあの女の子の旅の話から来ている。「バックパッカー」という言葉をはじめて聞いたのも彼女の口からだったし、彼女の話のインスピレーションを受けて、「ぼくも旅をしたいと」思ったのだから。その子の旅の話では、留学先の中国で出会った日本人の旅人と恋に堕ち、そのまま彼について大陸を西へ西へと旅したと話してくれた。

 旅の計画を立てていく。ぼくは、旅をしていくのにもう少し英語を勉強して自信をつけたかったこともあり、まずはじめは飛行機に乗ってLONDONへ戻り、そこで数ヶ月英語を勉強して、そこから東へ東へと大陸を横断して日本を目指すということをしたいと思った。一年という期間も決まっていたので、なんだか、陸路で日本へ帰国(正確には、航路の船だけど)という明確なゴールが欲しかったのかも。一年後の自分を想像した時、友人たちに「日本からLONDOへ行ったと」と語るより、「LONDONからここまで帰ってきた」と言う方がなんだかしっくりくる感じがしたのだ。前回のLONDON滞在でできた友人や、あの充実した時間を恋しく思っていたこともあるのだろう。そんなこんなの気持ちで、旅のスタートをあのLONDONの地に戻ることから始めたかった。

 ぼくは、池袋・サンシャインビルのHISのオフィスへ行き、LONDONへの格安航空券を買った。フライトの日付を見ると、ぼくの大好きな桜の季節の数字が並んでいる。そして、すぐ上の階のCITY BANKのオフィスにてワールド・キャッシュカードをつくった。旅の準備が着々と進んでいく。

 大学、アルバイトに通いながらの旅の準備の日々では、旅の本を意識的に読み漁った(映画も見たであろうが、あまり、「あの時にあの作品が役立った」と言った記憶はない)。本の中から旅の予習をした。はじめに周るであろうヨーロッパでは、さまざまな街・都市へ行ってみたいと思っていた。ファッションやデザインが大好きだった20過ぎのぼくは、雑誌で目にするヨーロッパの都市に憧れていた。TOTO出版が出していた「ヨーロッパ建築MAP」を1〜3巻まで買い求め、ヨーロッパの建築をあれやこれや見て周りたいと思い描いた(なかなかに重厚な装丁の本であったが、ヨーロッパの旅では計画通りにこの3冊全てをずしりとバックパックに入れ、建築巡礼をして廻った)。このように、ヨーロッパの旅の資料は、「旅」と言うよりも「観光情報」を収集していたと言った感じか。そう思うと、ぼくが思い描いていた「旅」と言う空気が漂う本の中の舞台は、東が舞台だった。自身にとって未知の国々である。中でもインドが大きな存在感を放っていた。そこには「ヒッピー」「精神世界」「瞑想」「ヨガ」などというキーワードが並んでいた。本の中のその言葉の質感に、ぼくのこころは確かに反応をしていた。ぼくはその世界を肌で感じてみたい。本の中で、新しい世界を覗いていた。東の国々は神秘に満ちていた。「旅でやりたいことリスト」には、さまざまな世界遺産の場所の名前や、砂漠の星を眺める、スカイダイビングをする、スキューバダイビングをする、などのさまざまな項目が含まれていた。外国人の女の子と恋をしたいとの淡い思いは、リストに書き出すには恥ずかしく胸の内にしまっておいた。



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