幻の本を探して【あんぱん】
ごきげんよう、ついにオタクを極めてしまい、某弱虫自転車のせいで20万の自転車を買おうか真剣に悩んでいる、あんぱんです。皆さん、影響されるのはいいけど買い物は慎重にね。
影響されるものによって、自分の趣味って決まるよね。
私はオカルトが割とすきで、おじさんの影響で小さい頃から絵本の代わりに有名なオカルト雑誌「月刊ムー」を読んでいた。
月刊ムーの何がすごいって、何年も「ネッシーは存在した!?」「火星人が〜」「地球滅亡の大予言」を繰り返し特集してるんですよ。すごくないですか??毎回同じような記事なんだけど、ちょっとずつ進歩してるように読めてしまう。これをロマンの塊と言わずしてなんというか。
最近、買ってないな。
そういえば集大成みたいな特別号が発売されてたっけ、本屋いこう。
本を買って読む習慣すら失われつつあった私だったので、久しぶりに駅前の本屋さんへ行くことにした。いつも行っていた駅前の本屋さんにはムーが売ってるのを知っている。これは買いだ!散財だ!! しかしそれはすぐに崩れ去った。
「なんだって」
あろう事か本屋がない、本どころか店が無い。嘘だろ。。。
私が行っていなかった少しの間に本屋さんは潰れてケータイショップになっていた。
砂漠のオアシスかと思ったら蜃気楼だったみたいな、そんな感覚に呆然とした。
「でもどうしても今日ムーが読みたい」
買うと決めたら我慢ができない私は、もうひとつのあまり行ったことがない本屋へ行くことにした。
割と広くて色々なジャンルの本を取り扱っている、ここなら絶対あるな。確信した。
「趣味のコーナー」
雑誌のジャンルで別れている、女性誌、歴史、音楽美術
私はムーが置いてありそうな趣味の棚へ真っ先に駆け寄った。置いてある雑誌を一つ一つ見て行ったけど、無かった。あの胡散臭い表紙、背表紙もあればすぐに分かるのに。
もしかしたら違うコーナーかもしれない。
それから全部の雑誌の棚を探した。
やっぱり無い。見落としてるのかもしれない。
普通ならば店員さんに聞く?いや、自称ブックマスターのこの私が店員さんに聞いたら敗北じゃないか?そもそもこのナリで「月刊ムーって置いてありますか?」なんて聞いたら店員さんに1発で覚えられてしまい、次本屋に行ったら「あ、月刊ムーの人だwww」ってあだ名つけられて呼ばれてたりしない?
私の頭の中では陰キャの特殊能力である「ネガティブ妄想」がヒートアップしていた。
「もう諦めよう」
そう思った時目の前に
書籍検索機があった。
店内に置いてある本の在庫や、場所、取り扱い情報まで検索すると表示してくれる。
まさに文明が生み出した代物だ。
すがる思いでそいつに手をかけた。
「月刊ムー」
類似書籍と共に表示された。
「在庫状況 〇」
やった!!!!やっぱり私が見つけられないだけだった!!!!
しかもこの本屋さんのどこの棚にあるかまで場所を表示してくれている。更にレシートのように書籍情報と場所まで印刷してくれた。
こいつ。。やるな。。。
宝のありかを見つけたかのような気持ちだった。私はワクワクしながらレシートに印刷されている地図の星が示す棚へ向かった。
「え。。」
無いじゃナァイ?!?!?!
場所は確かに合ってる。
雑誌コーナーの横のエッセイやスピリチュアルの棚だ。こうなったら意地だ。意地でも自分で見つけてやる。
端から順番に見て行った、やっぱりない。
詰んだ。
もう一度あの機械で検索してみたけど、確かにヒットしてるし在庫も場所もある。
なのに示された場所に本がない。。。
誰かが別の場所に置いたかもしれない。この膨大な本の中から探すのはさすがに無理に近い。機械のバグかもしれない。
もしかしたら、もしかしたらだけど、なんか呪文とか唱えたら別の本棚が出てきて、それを知ってる人じゃないと買えないシステムとかる??オカルト雑誌なだけに??
私は頭の中でハリーポッターの9と4分の3番ホームのようなものを想像していた。
「選ばれし者にしか買えないというのか。。」
私はこの本屋では、選ばれし者になれなかったらしい。
幻の本だったのかもしれない。私にはまだ修行が足りないのかもしれない。
仕方がない、久しぶりに本屋さんに来たので漫画コーナーを覗いた。
K滅の刃が全面に押されている。なんなら漫画コーナーのBGMまであのオープニングだ。みんな本当に大好きなんだな。。。
本屋に務めている友達が言っていたが、本屋の売り上げほとんどが今、K滅の刃でもっているという。まじかよ。強すぎだろ。
そりゃあマニア向けの本なんか置くスペースないよな。黙って中野行けって言われるよなぁ。電子書籍でいいだろって、通販で買えって言われるよなぁ。
なんとも言えない気持ちになってしまった。
だけれど、せっかくだ。
元々、本屋さんの雰囲気そのものが好きな私は、一通り物色したあと好きだった小説家の新作が出ているのを見つけて嬉しくなってしまい、結局1冊買って満足し、その場を後にした。(ここの本屋さんが悪いとは言っていないし苦情でもなんでもないです。)
後日何となくその月刊ムー特大号を調べたらAmazonに売っていたので注文したのだが、
ポストに届いたあれだけ欲しかった月刊ムーを見て、なんだろう。ワクワクしなかった。
そこで私は思った。
やっぱり本屋さんで見つけて買う特別感っていうのがあるから本が好きなんだな、と。
近年ネット通販は昔よりも発達して、欲しい商品を調べるとピンポイントですぐ買える。
一方本屋さんは、自分の手で本を探して、見つけて、また別の新しい物に出会える感覚があるから好きだった。
今は紙ではなく電子書籍で読めるようになった。スマホの中に何冊も入れておけるし、場所も取らない、いつでもどこでも読むことが出来る。「便利」だ。
私もその「便利」を、気付かぬうちに自然と使っていたみたいだ。
でも、本をめくる感触、残りのページを見る度、どこまで自分が読んだか、自分の中で消化出来たかが分かる本その物が好きだった私にとっては、今の環境は一見便利なはずなのに、どこかとても寂しく感じてしまうのだ。
好きなページに線を引いたり付箋を貼ったり
部屋の片隅に置いておくだけで自分の世界が広がったような気がする「本」自体、そのものが。
そういう感覚が、もっと未来になったら無くなってしまうのだろうか。
私はなるべくならこの先、本屋さんで本を買いたい。と思った。
買うつもりじゃなかったけど、他の本にも目移りして読んでみよっかな なんて思って買ったり。そこでまた見つけることも、新しい出会いも、きっと沢山ある。
好きな小説とか、好きな漫画のシーンとか、この手でペラペラとページをめくって
またこの先も読み返したい。
捨てられない本が家に沢山あるのはその小さなわがままが理由だ。
月刊ムーの内容にこう書いてあった
「近い未来、火星に移住できるかもしれない」
私の想像をはるかに超える未来がきっとあるんだろう
そんな未来でも、まだ「本」があればいいな。
おわり。
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