救われた話①

誰しも人生において苦しい時期があるはずだ。
そんな時に誰かの何気ない言葉や仕草に救われた経験はあるだろうか。
以下は私が誰かに救われた経験を忘れないように記した記憶の羅列である。

コロナ禍のダルビッシュ

2020年、新型コロナウイルスが世界中に蔓延し人々の生活は大きな制約を受けた。
当時大学3回生だった私は、緊急事態宣言により学校の授業もアルバイトもできず、一日中家の中にいる生活を強いられた。
そんな時、メジャーリーガーのダルビッシュ有がプロスピAの動画配信を始めた。ダルビッシュ有のプロスピ配信は他とは一味違う。なぜなら、登場する選手とリアル世界で一緒にプレイしていたり、対戦した経験を話してくれるからだ。
そして何より圧倒的な財力から、なりふり構わず課金をし、希望の選手が獲得できるまでガチャを回し続ける。そんなダルビッシュのプロスピ配信はコロナ禍の暗い毎日において、少しの楽しみとなっていた。

ある日、ダルビッシュとプロスピAの制作会社のコナミがコラボをすることとなった。
ダルビッシュのオンライン対戦の結果に応じて全てのユーザに景品が贈られるというものである。
「ダルビッシュ勝ってくれー!」
そんなコメントで溢れていた。
いよいよ景品を賭けた大勝負の一部始終が配信された。ダルビッシュもかなり気合が入っている様子が伺える。
初回、後攻のダルビッシュは相手の攻撃を無失点に抑える。「よし!よし!」かなりテンションが上がる。
そして、ダルビッシュ攻撃が始まると、何やらガサゴソと音が鳴り、所属球団のシカゴカブスのヘルメットを取り出した。
ダルビッシュは攻撃の時は決まってそのヘルメットを被ってスマホ画面に集中しているのだ。
私はこの瞬間、何故だかとても安心感を覚えた。
ダルビッシュも同じ人間で、私たちと同じように取り乱したふりをして、みんなを笑顔にする仕掛けを考えていたのである。
あのダルビッシュが、パンデミック禍の暇つぶしと言う理由だけでプロスピの配信をしていたわけではない。きっと、沈んだ世の中に少しでも笑顔を届けられような、そんな選択をしていたのかと今なって思うのであった。

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?